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異なる空の下で  作者: ネムノキ
温泉な四週目

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 二十一回目のログイン。少し遅くなったけれど、ちゃんと朝食は出た。

 朝食は、白ご飯と出汁巻き卵と味噌汁にひじきの煮物ときゅうりの浅漬けだった。朝の味噌汁は体に染み渡った。出し巻き卵は、甘すぎず辛すぎない絶妙な薄味の出汁にフワフワの卵のコンビネーションが最高だった。そのインパクトが強すぎたせいか、ひじきもおいしかったけれどあまり印象には残っていない。

「ふうー……」

 どういう訳か、ここの従業員は本当に良いタイミングで食器を下げてくれる。それはそれで満足だけれど、お陰で何もすることがない。イグサの匂いを胸いっぱいに吸いながらゴロゴロする。

「うーん」

 今日は、何をしようか。朝から温泉という気分でもないし、かといってしたいこともない。

「というか、この村には何があるのかな?」

 ほとんど通り過ぎただけなので、何があるのか聞いていないし、当然知らない。

「とりあえず、それを聞いてから決めようか」

 オリーブ色のローブを羽織り、一階のカウンターまで行って尋ねる。

「この村の特産品、ですか?」

「はい」

 カウンターの泣き黒子の女性に聞く。

「あとは、見所、ですかね」

「特産品と見所、ですか……」

 女性は顎に手をあてて考えた後、こう言った。

「ここは漁師町なので、様々な魚介を楽しむことが出来ます。特に、流れの速いカシヤ海峡が近いため、鯛が特産になっております」

 確かに、昨日食べた鯛は絶品だった。おっとよだれが。

「あとは、この村の入り口に当たる所から見下ろす風景は絶景で、歌にも歌われるくらいなのですよ」

「そうですか」

 確かに、絶景だったから、歌われるのも納得だし、女性も話したそうにしているけれど残念ながら歌には興味が無い。

「他には、何かありますか?」

「他に、ですか……。すみません、他には思い当たりません」

「そうですか……」

 それは残念だ。どっちも既に堪能してしまっている。

「ありがとうございました」

「いえ、お役に立てず申し訳ございません」

 女性は申し訳なさそうにしているけれど、別に女性が悪い訳ではないだろう。後ろに誰かが立ったので、会釈して譲る。

「うーん……」

 流石に見所が二つだけ、というのは少なすぎる気がするけれど、そんなこともあるのだろうか。まあ、あるのかもしれない。

「ま、自分の目で確かめてみないとね」

 とにかく、カウンターの女性が言ったことが本当なのか、確かめよう。そう思って宿を出る。今日も良い天気だ。

 昨日は登るので精一杯でよく分からなかったのだけれど、村への道はそこそこ広くて、曲がりくねっている。おまけに結構急だ。

「おお……」

 ようやく見えるようになった村は、砂浜のすぐそばの南北に走る小高い丘があり、その丘の辺りに建物が集中している。西側は山に続いていて、山まで行くと青々とした棚田があるけれど、そこまでは細々とした畑が少しあるだけで、他には特に何も無い。

「潮風とか、大丈夫なのかな?」

 植物は塩に弱いので、少し心配になる。実際植物系の種族である自分も不快に感じるし。でも、あれだけ青々としているということは塩に強い品種なのだろう。結構気になる。そういえば、昨日食べたお米はおいしかったのだけれど、この村で作ったものを使っているのかな? 現実にある耐塩性のお米は味が悪いらしいので、だとすると夢みたいなお米だ。

 注目すべきは、東側の海岸だろう。海に突き出した山の間にそこそこ広い砂浜があり、そこにいくつも底の平べったい船が並んでいる。中にはまだ海に浮かんでいるのか、隙間がちょくちょくあって、古い櫛を連想させた。海は本当に綺麗で、波が太陽に照らされてキラキラしている。泳いだら気持ち良さそうだけれど、種族特性のせいでそうもいかないだろう。

「おのれ種族特性」

 呪詛を吐いて石造りの階段を下りる。膝に結構くる。

「もう年かな?」

 冗談を言ってクスクス笑っていると階段の終わりが見えた。ここら辺は木々がトンネルみたいになっていて、木漏れ日が良い雰囲気を醸し出していた。

「よし、と」

 ようやく階段を降りきって一息つき、村に向かう。足元で砂利がカラカシャと音を立てる。時々ジャリッと言う音が混じるのは、砂利に混じる砂のせいだろう。なんだか面白い。右手に見える船は、底が平らなせいでタンスの引き出しを連想させるけれど、山の上から見て思ったよりもけっこう大きい。

「昨日も見たはずなんだけどなあ」

 それだけ温泉が恋しかったということだろう。船をさわってみると、けっこうしっかりして頼もしく感じる。材質は杉っぽく感じるけれど、なんか微妙に違う。そこまで大きな違いには感じないので、多分品種とかとれる場所の違いだと思う。

「すごいなあ……」

 昔乗った船は鋼鉄で出来ていることもあり、どこか無慈悲に感じたけれど、これは暖かく感じる。

 そうやって船を撫で回していると、なんとなく悪いことをしている気になって慌てて船から離れる。

「あ……」

 丁度船が帰ってこようとしているのか、この小さな港に入ってきた。だけれど、なんか様子がおかしい。にわかに村のほうも騒がしくなってきた。

「何?」

 つぶやいた途端、ドーンという音と共に船が水柱に飲まれた。


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