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異なる空の下で  作者: ネムノキ
イベントな三週目

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「どうも、こんにちは」

「ああ、どうも」

「この度は大変お忙しい中取材に応じていただきありがとうございます」

「いえいえこちらこそ」

「しかし、何といいますか、想像以上に広いですね」

「ええ、これでも一応百カ国に展開している企業ですから、そのー、何といいますか、見栄、みたいなものを張る必要がありまして」

「なるほど」

「個人的には、もっとこじんまりとしていても良いんですけどねえ」

「なるほど。それでは早速ですが」

「ええ」

「取材に入らせていただきます」

「分かりました。何でも聞いてください」

「ええ。では、今回は、『Fantasic Lives Online』 の特集と言うことで、それに関する質問なのですが」

「ええ」

「まず、このゲームの企画の始まりは、といいますか、由来? というのはどんなところから来たのでしょうか?」

「はい。まず、弊社『ネクストフューチャーテクノロジー』 は、元々医療用の様々な機械を生産する会社が集まって出来たものでして、VR部門ももともとはそんな会社のひとつだったんですね。で、医療に携わっていると、普通に生活していては見れないような現場に出くわすことも多くてですね。その中でも特に多かったのが、病気や事故で思うように体を動かせなくなった人たちとの出会いなんですよ」

「はい」

「それで、そんな人の中には、義肢や人工臓器を用いてもどうにもならなかったり、買えなかったりする人が多いわけでして。そんな人たちに、もう一度自分の足で立つ興奮や、自分の口で食べる感動を味わってもらいたい。なのに、そんな商品は採算とかの理由から未だ作られていない。ならば、私たちがやってやろうじゃないかと。それがスタート地点でした」

「なるほど。そういったある種社会奉仕的なところがスタート地点だったんですね」

「社会奉仕なんて、そんな大業なものではないです。もっと、こう、何と言いますか……。自己満足的な感情ですかね」

「自己満足、ですか?」

「はい。だって、実際にVRの技術を用いれば、そんなことは簡単に出来ると、そう言われてきたのに、採算だとか技術だとかそんな理由で作られない。確かに利益を出すことは大切だけれど、それだけが企業の役割じゃないだろうと。正直、そんな風に見られるのが嫌だったんです」

「確かに、それは自己満足的ですね」

「はい」

「それで、実際のところ利益はどのくらい出ているのですか?」

「それはまた (苦笑)。FLO単体で見ると、はっきり言って赤字です」

「赤字、ですか?」

「意外ですか? でも、事実です。その代わり、FLOの開発過程で出会った人たちや得た技術のお陰で、弊社は今後百年間VR業界を牽引することが可能になりました」

「そんなに、ですか?」

「はい。VR適合者や在野に埋もれていたプログラミングの天才、そう言った人材はお金では買えませんし、得た技術は今後開発するVRのテンプレートとして利用できるものです。それに、たとえ赤字でも実際にこれだけのものを稼動させるとどうなるのかの実験だと思うと、安いものです」

「確かに、VR関連の実験はもの凄くお金がかかりますからね」

「その通りです。もしFLOが開発されていなかったら、VR業界は十年後には成長限界に達していたでしょうしね」

「それは……、なかなか笑えない話ですね」

「でしょう」

「では、次の質問ですが、FLOでは実際にどこまでのことが出来るのでしょうか?」

「簡潔に申しますと、現実に出来ること全てです」

「全て、とは?」

「文字通り全てです。どんな運動オンチでもスキルの力を借りればありとあらゆる武術を極めることが可能ですし、料理が下手でも三ツ星シェフ並みの料理が作れるようになりますし、地震や台風、隕石落下のシュミレーションも、果ては爆弾の実験まで、現実のままに可能です」

「それは、大きく出ましたね」

「まあ、実際は魔力という現実には無いファクターを加えているので、本当にそういうことがしたいならひと手間かける必要があるのですが」

「逆に言えば、ひと手間かければ可能、だと」

「はい。このことに関しては国際統一機構のお墨付きももらっています」

「その認証を受けるのは大変だったでしょう」

「まあ、大変でしたが、やりがいのあるものでした」

「その話も面白そうなのですが、次の質問に行っても構わないですか?」

「はい、どうぞ」

「では、次に。FLOは多彩なスキルがあるそうなのですが、実際にはどのくらいあるのですか?」

「それはですね、実は把握出来ておりません」

「はい?」

「というのも、開始時点では八千近くあったことは確かなのですが、その後プレイヤーがスキルに無い行動を取るたびマザーコンピューターが追加していっていまして、今では誰も把握出来ていないんですよ」

「それは、何というか……、すさまじいですね。それで、その全てが習得可能なのですか?」

「それは不可能です。というのも、一部のスキルは特定のスキルを習得していると習得出来なくなるようになっていますので」

「なるほど」

「他にも様々な条件がありますので、どれだけ習得しても二、三千くらいになるはずだったのですが、今では把握できないですね (苦笑)」

「それは、データが大きくなりすぎて貴社としては困りませんか?」

「いえ、全然。最新の半有機量子コンピューターを並列で利用していますので、最低でもあと五十年は何の問題もなく稼動させ続けることが出来ます」

「それなら安心ですね。では、次に、イベントについてなのですが、どんなイベントを用意していく予定ですか?」

「これもですね、分かりません。いや、予定が無いとかそういった訳ではなく、ゲームシステムの管理自体マザーコンピューターに任せているので、もし仮にイベントが発生するなら、それはプレイヤーの行動が原因になるでしょう」

「それは無責任にも聞こえますが、大丈夫なのですか?」

「そうでもありませんよ? 要するに、プレイヤーがやった行動が全てプレイヤーに返っていくだけなのですから、そもそも責任の取りようがありませんし、ちゃんとFLOの中で情報収集をしていれば回避出来ます。そのための掲示板ですし」

「何というか、冷たくないですか?」

「そうですか? 一応アメリカで大ヒットしたDreaming Worldの方式を試験的に取り込んでみたのですが、まずかったですかね?」

「それは今後のプレイヤーが判断するでしょう。そして、先ほどアメリカでヒットしたDWの話が少し出ましたが、今後FLOを海外展開していくことはありますか?」

「それは、現状では不可能です」

「というと?」

「まず、元となる世界観自体がその国、地域の慣習や文化ごとに配慮したものでないといけません。次に、通信技術の限界で一定以上サーバーから離れると利用出来なくなるので、別のサーバーを用意することになります。流石にこれ以上赤字のコンテンツを抱えるのはまずいので、今のところ日本国内だけの予定です」

「もし、赤字でなくなれば、海外展開もありえますか?」

「それはその時考えることになるでしょうから、今は何とも言えません」

「分かりました。では、次の質問ですが……」



** *



・例のエントだけど、何か質問ある?part14


253名無しのヒューマンさん

今週のVR通信読んだ?


254名無しの人狼さん

読んだ


255名無しの鬼人さん

読んだ読んだ


256名無しのエルフさん

俺も読んだ


257名無しの虎人さん

だいたいスレ主さんの言うことと一致してたよな


258名無しのダンピールさん

だなー


259名無しのドワーフさん

本当に関係者だったようだな


260名無しのヒューマンさん

何か、疑ってスマンかった

でも、少し冷たくなかったか?


261名無しの虎人さん

確かに


262名無しの鬼人さん

自分たちで調べろとか、キツすぎ


262名無しの人狼さん

それだが、解析班が面白いこと言ってたな

[スライム]イベント攻略板part52[滅ぶべし]


** *



「作戦は予想以上に上手く行ったよ」

「本当!?」

 私は、父の言葉に歓喜した。

「ああ。にしても、掲示板とインタビューで関わった部分の言うことをだいたい一致させて関係者と分からせるとか、良く思いついたな」

「そうでもないよ」

 昔読んだ小説の受け売りなので、褒められてもあまり嬉しくない。とにかく、私の正体が良く分からないから問題だったのだ。そこで、私をただの社員の娘からFLO開発の関係者と分からせることと、裏付けの取れる正確な情報を提供することで、私の発言に信憑性を持たせた。それでも、私を愛人だとか恋人だとか言おうとしても、与えられた情報が一致しすぎているせいでお父さんの恋人ではなく、インタビューに答えた社長の恋人ということになる。そして、勘ぐる人にとっては残念なことに、社長は有名な熟女好きなので、それはありえないということが分かってもらえる。

 巻き込まれた社長には悪いかもしれないけれど、むしろ社長は嬉々として作戦を許可してくれた。少しノリが軽くて不安になったくらいだ。

「とりあえず、これで当面の危機は去った訳だ」

「でも、ほとんどお父さんのせいなんだから、反省してよね」

「……済まなかった」

 父は、神妙に頭を下げた。それが何かツボにはまって、私は噴き出した。


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