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異なる空の下で  作者: ネムノキ
イベントな三週目

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連日投稿も一月になりました。でも、もうそろそろストックが切れそうです。

読んでいただきありがとうございます。

 今にもぐずりだしそうな空の元南の平原を一時間ほど進むと、そこには腰くらいの高さの壁があった。

「ここじゃ」

 さらに進むルフとともに壁を乗り越えながら進む。ローブのすそが邪魔になりそうだけれど、どういう訳か邪魔にならない。不思議に思いながらさらに百メートルくらい先でまた壁を乗り越えた。

「わしはここで待っておるから、おぬしは先に進め」

「分かりました」

 私はここでルフと別れ、さらに進む。壁をあと二枚越えた辺りからちらほらと人を見かけるようになった。それは良いのだけれど、

(なんか見られてる)

 どういう訳か、通り過ぎる人にじろじろと見られるのだ。私は何か恥ずかしくなり、フードを深くかぶる。なるほど、だからこのローブを着ている人はフードを深くかぶるのか。

「あ……」

 さらにひとつ壁を乗り越えると、人が急に増えた。意匠が統一されていない皮鎧を着ているのは恐らくプレイヤーか市民兵で、よく見るフルプレートメイルを着ているのは衛兵だ。その中に見知った顔があったので、声をかける。

「どうも、ロンさん」

「おお、ってお前さん誰だ?」

 ロンは私のことが分からないようだった。そりゃこんな胡散臭い黒ローブを着ていたら分からないだろう。

「トーレです、ウサギ騒動の時の」

 そう言ってフードを取ると、ロンは驚いた様子で、

「ああ! トーレか!!」

 と言った。隣の赤毛や茶髪も驚いている。

「にしても、黒の塔に入ったんだな」

「凄いな、嬢ちゃん」

「はい、お陰さまで」

 そう笑顔で答える。

「それで、何の用だ? 魔術師の配置先ならもうひとつ前だぞ」

「そうなんですか? 今来たところで分からないんです」

「今来たって、おいおい……」

 茶髪は少し呆れ気味だ。

「はい、ルフと一緒に、ですけど」

「ルフって、ギルド長のか!?」

「よしきたっ!」

「これでこの戦いは安泰だな」

 そう三人は喜んだ。やはり、ルフは凄い人物らしい。

「でも、本人はどういう訳か後ろの方にいるんですよね」

 私は疑問を口にした。

「それは政治、ってやつのせいだな」

「政治、ですか?」

 ロンの言葉に私は首をかしげる。

「ああ、今回の魔王の討伐自体魔術師がやるから、若手に手柄を譲って有力な魔術師を増やして白の塔に対抗しよう、ってところだろう」

「なるほど」

 白の塔。国家魔術研究機関、だったか。この権力闘争はなかなか面倒くさそうだ。

「それで、人の集まりはどうですか?」

 そう尋ねると、三人は気まずそうな顔をして顔を見合わせ、なにやらうなずいた後、ロンが声を潜めて言った。

「実は、あまり良くない」

「そうなんですか?」

 ここには結構人がいるので、むしろ良いように感じたのだけれど。

「ここに集まっているのは、さっきまで狩猟ギルド長のエイブが演説をしていたからだ。逆に言えば、ここにいるのでほぼ全員だ」

「それは……」

 それだと、遠くから見た壁の長さに全然足りていないような気がする。

「まずいですね」

「ああ、まずい。しかも、今いる異邦人の大多数が十二時には抜けてしまうらしいし、その空いた二千人分の穴をどうするか……」

 ロンは頭をかかえ、残りの二人の表情も暗い。

「あれ、大多数で二千人、って少なくないですか?」

 疑問を口にする。せっかくのイベントにプレイヤーが出ないなんて、少しおかしい気がする。

「残りは夕方からの参加だそうだ。つまりそこまでなんとかもたせれば良い訳だが……」

 それには、少し人数が足りないだろう。

「……大丈夫ですよ」

 私は、三人と自分を勇気付けるように言った。

「こう見えて私、魔法使い候補らしいので、なんとかなります」

 努めて明るく言う。実際のところ、そんな自信はないのに。

「そうなのか!?」

「マジで!?」

「そりゃあ助かる!」

 すると三人は嬉しそうに言った。心が痛むけれど、落ち込んだまま戦われるよりも、その方が生き残る確立が高いだろう。小説からの知識だけど。

「ええ、任せてください」

 そう笑顔で言う。それから少し話し込んだ後、三人がいい加減配置につかないとまずいと言い出したので、フードをかぶって礼を言って前へ行く。低い壁のところまで行くと、その上に魔術師と見られる杖を持った人々が立っていた。

「どこ行こう……」

 遅れて来たのでどこに行けば分からない。

「まだ魔術師はいませんかー?」

 声が左の方から聞こえてきたので、私はそちらの方に走っていく。

「遅くなりました」

 声をあげていた若い金髪の男性に声をかける。

「まだ黒の塔の面子がいたのか? 助かった。もう少し先にいってくれ」

「分かりました」

 言われた通りに進むと、人と人との間隔がどんどん開いていく。一番端に行き、そこで壁に上って座る。しばらくすると、さらに人がやってきて壁に登っていく。赤や緑などのカラフルなローブがうらやましい。

(今度、買おう)

 内心そう決める。この戦いが終われば、素材も沢山手に入るだろうし、もしかしたら報奨金も出るかもしれない。それでローブを買おう。こんなダサいのではなく、綺麗なやつが良い。

「あ、お昼買ってない」

 そういえば、お昼ご飯を買っていなかった。そう思って思い出すけれど、大通りの店は全部閉まっていたので、どのみち買うのは無理だっただろう。

「あれ、聞いてないんですか?」

 右隣の紺色のローブを着た黒髪の男性が言った。

「お昼は支給されるって話ですよ?」

「そうですか。ありがとうございます」

 それなら安心だ。私はひと安心して、目の前の平原をにらんだ。

 しばらく待っていると、地鳴りとともにそれはやってきた。


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