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異なる空の下で  作者: ネムノキ
チュートリアルな一週目
3/49

2

11/2文章に抜けがあったのと分かりにくいところがあったので修正

 周囲で歓声を上げて通り過ぎる人々に踏まれないよう立ち上がり、涙を手の甲でぬぐいながら歩き出す。

「あ、まだ 『ステータス』 の確認してない」

 そう思い、ステータスと心の中で念じると、視界に白く光るプレートが現れる

―――――


ステータス

・所持金:10000ゴールド

・種族:エント:レベル1

・種族スキル

【光合成lv1】【簡易鑑定】

・先天性スキル

【知力強化lv1】【魔力感知lv1】【魔力操作lv1】

【結界術lv1】【付与術lv1】【採取lv1】

・後天性スキル

なし


―――――


「おお」

 感動の声をあげると同時に、疑問が生まれる。種族を外見で決めた自分には関係ないことだが、種族、というのは筋力値や知力値といった表示されないステータスの部分に違いをつけるためのもので、種族スキルなんてものは少なくともベータテストのときは無かったし、キャラクターメイキングの時にも表示されなかった。それに光合成なんてスキルは初めて聞いたせいで、どんな効果か分からない。簡易鑑定は多分物の名前が分かったりするのだろう。

「何か分からないけど、儲けもの、ってことで」

 まあ、問題はないだろう。そう思い、次は 『ヘルプ』 と念じる。すると、プレートが切り替わる。


―――――


ヘルプ

・装備

・MAP

・フレンド

・プレゼントBOX

・設定

・ログアウト


―――――


「ふむふむ」

 メニューではなく、ヘルプなのには開発班にこだわりがあるからとか何とか。どうでも良いことを思い出す。その中から、私は 『設定』 に意識を集中して、設定を変更する。

「レベルアップ、スキルレベルアップの通知オフ、っと」

 何でも、そうしたほうがリアリティが増すらしいのだ。本当ならスキル獲得の通知も切りたいところだけど、それをすると自分のスキルが把握できなくなるかもしれないのでやめた。まあ、ベータテストも後半では自分のスキルが把握できなくなるプレイヤーが続出したらしいので、無駄だろうけれど。

 次に 『装備』 に集中して、自分の装備を確認する。


―――――


装備

・頭:

・肩:

・胴体:麻の服

・腕:

・指:

・脚部:麻のズボン

・足:皮のブーツ

・武器:

・装飾:


―――――


 うん、ザ・初期装備って感じだ。良い装備が欲しいならば、自分で買え、ってことだろう。まあ、一万ゴールド、の価値がどれくらいか分からないけれど、それほどのものでもなければ多分買えるだろう。

「ま、でも肝心なのは、次、よね」

 そうつぶやいてMAPを開き、目的の施設を探す。

「お、あったあった、って」

 今まで歩いていた方と逆方向にあったので慌てて戻る。人の波にもまれながらしばらく歩くと広場につき、そこでは時々光っては人が出現していた。多分プレイヤーだろう。無視してしばらく進むと、目的の建物にたどり着いた。

「ここだ、『魔術師ギルド』」

 そう、目的地は 『魔術師ギルド』 だ。大通りに面しているのに周囲に誰も寄り付いていない古びた屋敷にいかにも、な塔のある、おどろおどろしい雰囲気を醸し出している建物だが、間違いないだろう。ドアノブをつかんで外に開く。思いのほか重たい。

 中は閑散としていて、おまけに怪しいお香のようなものが焚かれていて臭いが、気にせず正面のカウンターに歩いていく。背後で扉が音を立てて閉じる。

「如何用か?」

 黒いローブで顔を隠した人物は、わざとらしいしわがれ声でそう言った。身長は私と同じくらいだから、百七十くらいだろう。そして、その雰囲気に飲まれて、ついこう言ってしまった。

「我、冥府魔道を志す者なり」

 魔術師ギルドの空気が凍りついた気がする。目の前の人物としばらく見詰め合うと、どちらからか吹き出した。

「いひひひひひ、さ、流石に冥府魔道はないじゃろ」

「あははははは、さ、流石に言い過ぎました」

 そう言って見詰め合った後、また吹き出す。ひとしきり笑った後、目の前の人物はフードを取った。綺麗な白髪の老人だ。だけれど、オリーブ色の目には強い光がある。

「ここに今日来たのは貴様がひとり目じゃ。して、何の用じゃ?」

「実はですね、【シュート】 が出来る程度まで魔力操作と魔力感知を鍛えたいと思いまして、鍛錬場をお借りしたいんですよ」

「ふむふむ」

 そう言って老人は私を観察する。

「そのダサい格好のくせにその力……、おぬし、異邦人じゃな?」

 異邦人、と言うのはこのFLO世界で言うプレイヤーのことだ。力、と言うのは何かわからないけれど。

「はい、そうです」

 そう言うと、老人はため息をついて、こう言った。

「まずはその格好をどうにかしろ、と言いたいが最近珍しいエントじゃから、特別に許してやろう。じゃが、その葉っぱを一枚もらっても良いか?」

「ん? 呪術に使わないなら良いですよ」

そう言って側頭部にある葉っぱを痛みを我慢して一枚抜く。呪術を使うと人を呪えるらしいので、釘はさしておく。

「いやいや、そんな珍しい素材を呪術なんぞに使えるか。錬金術の素材にするんじゃ」

「なるほど。それなら良いです」

 そう言って葉っぱを手渡す。

「ふーむ、これならあれに使えるじゃろう。ありがとう」

「いえいえ、こちらも鍛錬場を貸してもらうのですから、当然ですよ」

「そうじゃな、では、着いて来い」

 そう言ってカウンターから出て歩き出した老人についていく。長い廊下をしばらく歩くと、ひとつの扉の前で止まった。

「ここじゃ」

 そう言って扉を開くと、明らかにこの建物より広い石造りの部屋が広がっていた。

「これは……魔法ですよね?」

「なんじゃ、あまり驚かなかったのう……。そうじゃ、ワシがかけた 『空間拡張』 の魔法じゃ。まあ、おぬしならこの程度すぐに出来るようになるじゃろう」

「それは……、ありがとうございます」

 そう頭を下げると、老人は手を振りながら帰るところだった。

「さて、と」

 鍛錬場にはいり、後ろ手にドアを閉めて、部屋の中心辺りまで行くと、胡坐をかいて自分の身体の内側に意識を向ける。

「すうー……、はあー」

 意識して腹式呼吸を行い、意識を落ち着かせる。すると、おへその下の辺りに『何か』が渦巻いているのを感じる。それを体全身に回すよう意識し、さらに集中する。

 この『本来あるはずの無いモノ』の感覚を設定するときは大変苦労したけれど、その時の経験のお陰でスムーズに行える。この調子なら、すぐに 【シュート】 が使えるようになるまで魔力操作と魔力感知のレベルを上げることが出来るだろう。


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