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「ここで良し、と」
途中の露店でホットドッグとオレンジジュースを買って東の城門を出る。そこで久しぶりに衛兵のロンに会い、少し話をしてから東の草原に着いた。森が目と鼻の先だけれど、まあ良いだろう。
「出て来い」
そう言って手にした『草原スライムのジェム』を地面に落とすと、光って緑色のぷよぷよしたスライムが現れた。
「本当になつくのかな?」
ひんやりするスライムに手をあてながら魔力を流すと、スライムは喜んでいるのか体を震わせた。かわいい。
「じゃあ、次」
無限収納からゴミを取り出すと、スライムの上に落とす。すると、シュワシュワと音を立てて溶けた。
「おお」
その音に驚くけれど、溶けるスピード自体は遅い。私はそれを眺めながらホットドッグを食べる。うん、今日も良いハーモニーだ。ただ、飲み物のオレンジジュースの酸味との相性は良くない。どちらかというと、昼頃飲んだリンゴジュースの方が合ってる気がする。
半分ほど食べたところで、あることを思いつく。
「こいつはテイムしたときにホットドッグを食べたんだから、今あげたら喜ぶんじゃ……」
思いついたら即実行だ。私は食べかけのホットドッグを包み紙ごとスライムの上に乗せる。すると、スライムはものすごい勢いでホットドッグを包み込んで溶かした。
「おお!」
あっと言う間にホットドッグが無くなったのが面白くて、残っていたオレンジジュースをかけると、砂漠に水をかけたときみたいに面白いほど吸い込んで、嬉しそうに震えた。
「そっか、おいしかったか」
そう言ってスライムを抱える。大きさは、私の頭の二倍くらいか。大きさの割に軽く感じる。
「じゃあ、次だね」
そう言って私は警戒しながら森に入る。せっかくだから、こいつがどれくらい戦えるのか、知りたくなったのだ。
しばらく歩くと、鼻が曲がりそうな強烈な匂いがする。
「相変わらずくさいな」
その場で待っていると、案の定ゴブリンが一匹でやってきた。スライムは不安そうに震える。かわいい。
「大丈夫、すぐ終わるから」
私は、そのゴブリンの額をシュートで撃ち抜く。するとゴブリンは蒸発したかのように消滅した。よく見ると、後ろの木もえぐれている。
「……じゃあ次いこー」
気を取り直して進む。匂いで鼻が曲がってしまったので、音に集中して進むと、右手の方からガサゴソと音がする。
「一体……、にしては音が大きい?」
しばらく待っていると、音の原因が見えた。
「来た……」
そこにいたのは、六匹のゴブリン。戦闘の一体は木の盾と棍棒を持ち、残りのゴブリンはボロボロの剣を持ったのが二匹。残りは棍棒とも言えない木の棒を持っていた。全員真新しい感じの茶色の毛皮の腰ミノをはいていることが違和感を発していた。
「いけっ!」
私はすぐさま五匹の頭をシュートで吹き飛ばした。スライムは驚いているのか、嬉しいのかフルフル震えている。
「じゃあ、行こっか」
そうスライムに声をかけると、スライムは震えるのをやめた。
「何? 怖い? 大丈夫、最悪私が助けるから」
そう言ってスライムを威嚇するかのように木の棒をふるうゴブリンの顔に投げつけた。
「GO!」
肩が痛いけれど、スライムは無事べチャッと音を立ててゴブリンの顔に張り付いた。
「ゴボッゲブッ」
ゴブリンは苦しそうな音をあげながらスライムをはがそうと顔をかきむしるも、はがせずにむしろ自ら顔を傷つけることになっている。そのまましばらく待つと、ゴブリンは痙攣しながら霧のように消えた。
「……これは…………」
倒した、というより殺した、という感じが強くて精神的にくるものがある。その場でうずくまり、何度も深呼吸する。きつい。しばらくそうしていいると、スライムが私のところまでやってきて、慰めるように靴をなでた。
「……ありがと」
スライムを抱えてその場に寝転がる。この冷たさがありがたい。
「ここまでリアルにしなくても……」
そう嘆くも、やってしまったことは取り返しがつかない。とりあえず、
「この方法は封印かな」
やるとしても、追い詰められたときだけにしよう。そう心に固く決める。
続いていつの間にか寄ってきていたゴブリンの足元にスライムを転がすと、ゴブリンはスライムに足を取られて、どういう訳か顔からスライムに顔から突っ込み、また先ほど見た光景が繰り返された。
「……もう、やめよう」
こんなことは。精神的に疲れきった私は、森から去ることを決める。
「おいで」
そう言ってスライムが私の元にやってくるのを待つ。ゆっくりゆっくりこちらに来るのがかわいい。
「ああ……」
癒しはここにあったんだ。私はスライムに頬ずりする。原因はこいつな気がしないでもないけれど、そうなる原因を作ったのだから私が悪い。しばらくひんやりするスライムに癒されてから森を出た。
「あ、そうだ」
いつまでもスライムでは分かりにくい。どんな名前をつけようか?
「……お前はこれから 『ショゴス』、だ」
名前の元ネタくらい強くなれば、先ほどのようなことは起こらないだろう。そう口にすると、ショゴスはプルプルと震えながら黒っぽく変色した。
「……ま、いっか」
良く分からないけれど、まあ良いだろう。私は、渇いた笑い声を上げて街に向かった。空は、ほんのりと色付いてきていた。




