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異なる空の下で  作者: ネムノキ
激変の二週目

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 ホットドッグを食べながら平原を進む。看護師さんが今朝 「食べ歩きは楽しい」 と言っていたので、試しているのだ。言葉の響きから、食べながら歩くことだと思ったのだけれど、良く喉に詰まるしそれを流し込もうとリンゴジュースを飲むのも一苦労だ。せっかくのジューシーでカリッとしたソーセージとシャキシャキのレタス。ピリッとしたマスタードに旨味のケチャップと小麦のハーモニーが楽しめない。

「全然楽しくない……」

 半分ほど食べ進んだところで、やっぱり座って食べようと腰を下ろすと、ムニュッという感触が尻を包んだ。

「ひゃいっ!?」

 驚いて思わず食べかけのホットドッグを落として立ち上がる。するとそこには、緑色をしたスライムがいた。

「昨日はこの辺りいなかったの……ああっ!?」

 スライムは、落としてしまったホットドッグにのしかかる。すると、ホットドッグは端の方から溶け出した。

「わ、私のホットドッグ……」

 私は絶望に思わず膝をついた。これから素晴らしいハーモニーを楽しむつもりだったのに……。

「……許さない」

 私は、怒りのまま六発のシュートを叩き込もうとする。

『草原スライムのテイミングに成功しました』

 するとアナウンスが鳴り、

「え、ちょ」

 そのままスライムを消し飛ばした。消し飛ばされたスライムは、蒸発するように消えるのではなく、光となって消えた。

「……どういうこと?」

 訳が分からない。とりあえず落ち着こうとリンゴジュースを一口飲み、残りを無限収納に仕舞う。一応ちゃんと入ったかアイテムボックスを確認すると、見慣れないアイテムがあった。

「『草原スライムのジェム』?」

 良く分からないので、タッチして取り出そうとすると、『再召喚まであと11:58:47』 と表示された。

「良く分からないけれど、多分 【テイム】 スキルが生えて、スライムのテイミングに成功したってこと?」

 全然嬉しくない。というか、スライムなんていてもどうすれば良い?

「……ま、いっか」

 過ぎてしまったことは考えない。病院で一度顔を合わせたおじいちゃんが長生きの秘訣だと言っていた。

「よし、やるぞー」

 気分を切り替えて進む。

「さて、本当に出来るのか……」

 スライムの群れが現れた辺りで、覚えたての魔術を発動する。

「【ファイア・ボール】、【ウィンド・カッター】、【アクア・ボール】、【ロック・バレット】、【ライト・ボール】、そして【シャドウ・ボール】。って多すぎ!」

 一度にやろうとするのがそもそもの間違いな気がする。それぞれ別のスライムを狙った一撃は、ちゃんとスライムを蒸発させていた。続いて頭の中でイメージして発動してみるも、無事成功。そのときの感触から、同じ魔術を同時に発動するのはまだ無理そうと判断する。

「ここまでは予想通り」

 そして、本題に入る。いつものごとくシュートを発動しようとする。ただし、丁寧にやるために、一発だけだ。

(シュート!)

 放った魔術は、スライムに大穴をあけ、スライムは湯気を出し始めた。

「よし!」

 私はガッツポーズをする。やったことは、ただ単純にシュートを圧縮して放っただけだ。

「じゃあ、次」

 圧縮したシュートを次々と放って、効果を確認する。同時に放てるのは圧縮していないときの二倍の十二発で、MP消費量は一発辺り圧縮する前の半分。射程は目視する限り五百メートル以上。

「予想以上、かな?」

 昨日魔導書を読んでいる時に思いついたことだけれど、予想以上だった。

「ま、本番はここからだけれど、ね」

 そう言って六発のそれぞれ異なる圧縮シュートを発射する。それはスライムに大穴を明けるに留まらず、スライムを消し飛ばした。

「よし、ちゃんと出来た!」

 やったことは、シュートにそれぞれの属性の魔力を乗せただけだ。体感ではMPの消費量も変わらない。これはベータテスト後半に付与術が使える魔術師プレイヤーが編み出した技でもあるけれど、やってみた感じそんなに難しくなかった。

「どんどんいこー」

 今度は、シュートにとりあえず風と火の二属性を同時に乗せてみる。すると、シュートは発動せずに爆発した。

「痛っ!」

 衝撃にしりもちをつく。結構大きな音だったので耳がガンガンする。

「どういうこと?」

 少なくとも、魔導書にはこういった現象は書かれていなかった。警戒しながら、今度は水と土の魔力を乗せる。するとスライムには当たったものの、べちゃっと言った感じでスライムに張り付いた。

「…………」

 何ともいえない空気が漂う。スライムはこちらに迫って来ようとするものの、遅すぎて止まっているように見える。私は間抜けな顔のまま、普通のシュートでスライムを蒸発させた。

「うーん……」

 どういうことか良く分からない。今度は慎重にシュートに水と土の魔力を乗せる。すると、シュートが発射される直前、水と土の魔力が混ざった。

「……なるほど」

 シュートの張り付いたスライムに普通のシュートを叩き込みながら、結果を考える。恐らく、魔力が混ざったことで魔力どうしが特殊な反応をしたのだろう。

「これは……」

 使える。爆発を警戒しながら、色々と試してみる。感覚的なものではあるけれど、水と風は霧散し、火と水も霧散したものの熱く感じた。その他にも様々な反応が見られて楽しい。

 そして散々遊んでから、あることを思いついた。

「魔力をただ乗せると混ざってしまうなら、混ざらないよう想像しながらするとどうなるんだろう?」

 早速試してみる。とりあえず水と土を合わせてみると、魔力が混ざったときと違って、変な反応は起こらず、普通にスライムを貫いたのち、その後ろにいるスライムも爆散させた。

「MPの消費量はただ圧縮させたものと同じくらいなのに、威力が上がった……?」

 うんうんうなりながら、今まで遊んだことと魔導書の情報から推測する。

「そもそもの魔力の性質から違いがある?」

 水は押し出し、土は固くなり、火は熱し、風は加速する。そして光は増幅、闇は減衰、というところかな。良く分からないけれど、多分そんな感じだと思う。

「で、どれだけ合わせられるんだろ?」

 重要なのはそこだ。混ぜずに合わせるのは難しいけれど、もしも全部の属性を合わせることが出来れば、威力はもの凄いことになるだろう。

「やってみるか」

 どんどん合わせる量を増やしていく。どんどん難易度は上がっていくけれど、不可能な感じはしない。三種類を超えたあたりから地面に穴が空き始める。冷や汗をかきながらも実験を続ける。

「……よし、出来た」

 最終的に、六属性全てを合わせることが出来た。その威力はすさまじく、まるで隕石でも落ちたかのような大穴が空き、吹き飛ばされた土砂が頭にかかる。

「急に威力上がりすぎじゃない?」

 髪の毛に絡まった土砂を手櫛で落とした後、クリーンの生活魔法で綺麗にする。こうなるなら、櫛も買っておけば良かった。これ以上土砂が髪に絡まないようにさっき買った深緑のオーバーコートを、今着ている装備の上に羽織ってフードを被る。確かに蒸れず意外と風通しが良くて快適だけれど、こんなにすぐに着ることになるとは思っていなかった。

「ま、いっか」

 色々試したところ、進行方向の先頭から闇、土、火、水、風、光の順に並べたものが一番威力が強かった。闇で空気抵抗を減衰し、土で貫いて火と水で熱をばら撒き、風で加速してそれを光が増幅している、というところだろう。ひとつのシュートの中に同じ属性を二つ以上入れられないのが残念だ。

「ここまで来たら、シュート、と言うより 『魔弾』 と言った感じかな?」

 むしろ大砲みたいだけれど、それじゃあいかつすぎるので、この組み合わせをとりあえず 『魔弾』 と言うことにする。

「じゃあ、どれだけ同時に発射出来るかな?」

 なんやかんや言って六属性を一発の魔弾に乗せるのは大変なので、圧縮して二倍になった一度に放てる数は、元通りの六発になった。その代わり一発あたりのMP消費量は普通に撃ったシュートの半分なのだから、詐欺も良いところだ。

「……でも、スライム相手にはオーバーキルかな?」

 自分のしでかした光景に引きながらフードをとる。私の目の前には、まるで戦場の跡のような、でこぼこの月面のような光景が広がっていた。

「……ま、まあ必殺技ってことで良いか」

 使う機会が来るまでは (そんな機会来て欲しくないのだけれど)、ただの圧縮シュートで良いか。というか、圧縮シュートが私にとってのシュート、ということにしておく。

「何発も飛んでくる大砲の弾とか、良く考えたら悪夢じゃないかな……?」

 その光景を想像して冷や汗をかくけれど、無視だ無視。

「もう良い時間だし、帰ろうか」

 いつの間にか空もオレンジ色になっていたので、街に向かって歩き出した。デコボコの足元が歩きにくい。この日の稼ぎは、遊んでいた割には多いものだった。


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