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次の日のログイン。
「さて、今日は何をしようかな?」
大通りを南に進みながらつぶやく。街に溢れているプレイヤーらしき人達は、流石に装備の更新が出来たのか、ダサい格好の人は少なくなってきている。
「にしても、どこで稼いでいるのだろ?」
昨日東の森に行った感じでは、あまりゴブリン狩りでは儲けられない感じがした。なのに装備の更新が出来ているということはどこか稼げる場所があるのだろう。街周辺の草原を抜けた先は、東と北は森で西と南は草原だ。草原のウサギはほとんど狩りつくされているし、森の主な獲物のゴブリンはあんな調子であまり儲けられない。
「となると、怪しいのは……どこだ?」
城門を出ても思考を続けるけれど、何か良い答えは出てこなかった。
「とりあえず、ウサギを狩りたくないし、【動物除けの結界】」
万が一のでもウサギを狩ってしまいたくないので、【動物除けの結界】 の魔術を発動する。MPバーがものすごい勢いで減っているが、気にしない。
「というか、【結界術】 のレベル上げが全然出来ていないなー。いや、それを言うなら【付与術】も、か」
確か、付与術で今の段階で使える魔法は、【エンチャント・マジック】 と言った武器に魔力を乗せて攻撃力を増加させるものだったはずだ。
「とりあえず、やってみるか」
そう言ってナイフを抜く。
「【エンチャント・マジック】」
そう言ってナイフに魔術をかける。
「んー、何か雑な感じがする」
かけては見たものの、ナイフに乗った魔力にはムラがあるように感じた。
「これを均一にする感じで、っと」
出来るだけナイフに乗る魔力が均一になるよう魔力を少しずつ注ぎながらいじくりまわす。
「っと、出来た」
MPバーがほぼ枯渇する頃、なんとかイメージ通りに魔力を乗せることに成功する。結界を解除しようとすると、足元にやわらかい感触を感じた。
「え?」
足をどけると、そこには緑色のテカテカ光る何かがいた。
「あ、もしかして草原スライム?」
確か、草原に湧くモンスターだったはず。距離を取りながらスライムについての情報を思い出す。
「確か、物理攻撃に強くて魔術に弱いんだよね。で、攻撃手段はのしかかりだけ」
ベータテストでは、ただの雑魚だと思って攻撃したら言うほどダメージを与えられずに逆に武器を溶かされるプレイヤーが続出したとか。
「じゃ、やりますか、っと」
腕を突き出し、シュートを撃とうとして、突き出した右手に持ったナイフが目に入る。ナイフは、ちょうど良い感じで魔力にコーティングされていた。
「もしかして、これなら大丈夫なんじゃ……」
追いすがろうとのろのろと動くスライムをしゃがんで待ち、近付いてきたところをナイフで滅多刺しにする。すると、スライムは湯気をあげながらあっさりと消滅した。
「あれ? 弱いな」
というか、ここまで来るとただの雑魚だ。なんだか笑える。スライムを踏んでしまった靴が無事なのを確認してから立ち上がり、目をこらしてスライムを探しながら歩く。一歩踏み出した途端スライムが目に入り噴き出しそうになる。
「え、こんなにいるの?」
良く見ると、あちこちにスライムがいる。腕を突き出してシュートを撃ち、一体ずつ処理していくが、キリがない。MPバーが枯渇した辺りでしゃがんで大きく息をすってMPを回復させながら、ふと思った。
(あれ? 別にシュート撃つのに腕突き出す必要ないんじゃ……)
わざわざ腕を突き出していたのは、そうするようベータテストの攻略掲示板に書かれていたからだ。でも、実際に撃ってみて魔力の流れを感じると、別に腕を突き出す必要はないように感じられた。
「やってみるか」
二十分ほど休憩してMPバーが全回復した辺りで立ち上がる。今度は腕を突き出さずに、一体のスライムに狙いをつけて、頭の中で念じる。
(シュート!)
すると、シュートは確かに空中から放たれたけれど、見当違いの青空へと飛んでいった。その後、何発か撃ってみるがどれも見当違いの方向に飛んでいく。
「これは……、難しい」
何回も撃って理解したところ、シュートは魔力の力場だ。それを無理やり方向性をつけて飛ばしているのが、シュートの正体のようだ。その方向性をつけるのが、難しい。
何度もMPバーが枯渇するまで撃っては黙想してMPバーを回復させるのを繰り返す。何体かたまたまスライムに当たっては湯気を上げているが気にせず続ける。太陽がもうすぐ天上へと昇る頃、ようやく思った通りの所へとシュートを飛ばせるようになった。
「じゃあ、次は何発か同時に撃てるようやってみるか」
そう目標を変えてやってみる。同時に撃てるのは今のところ三発までのようで、それ以上はそもそも力場が形成されなかった。同じ目標に当てるまでは簡単だったけれど、違う目標に当てようとするとまた変な方向に飛んでいっては不幸なスライムを蒸発させた。
「やっぱり難しい。でも、不可能って感じはしないかな?」
しばらく撃ちまくっているとスライムがいなくなったので、場所を変えてスライムがいる所を見つけては練習する。そうして空が色付いてくる頃には、なんとか複数の目標に当てられるようになった。当てられる、とは言っても本当に当てられるだけで、そいつの細かいところを区別して当てるのはまだ無理だけれど、この調子なら明日にでも出来るようになるだろう。
「とりあえず、今日はここまで」
私は練習の成果に喜びながら町に戻った。




