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異なる空の下で  作者: ネムノキ
チュートリアルな一週目

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10/49

9

「ゴブリンの群れ、ですか?」

「はい」

 狩猟ギルドで手に入れたゴブリンの角五本を売りながら、受付のお姉さんに尋ねる。

「数はどのくらいですか?」

「五匹です」

「……なるほど。なら大丈夫ですよ」

「大丈夫、ですか?」

 私はそう受付の人に聞き返す。

「はい。『湧いた』 ばかりのゴブリンは一匹で行動していますが、しばらく経つとだいたい六匹程度で群れますよ」

「なるほど」

 ということは、別に珍しいことでもなかったのか。

「では、ゴブリンの角五本で百ゴールドになります」

 移動も含めて、一時間半程度の稼ぎとしては妥当なところかな。

「そして、こちらの剣ですが、鍛冶ギルドで売ることをお勧めします」

受付の人は、ボロボロの剣をこちらに返しながら言った。

「鍛冶ギルド、ですか?」

 MAPには載っているが、昨日街を歩いてみたけれどいまいち場所が分からなかったのだ。

「はい。西の大通りを少し北側に入ったところにあります。少し分かりにくい所にありますが、音をたどればすぐに見つかると思いますよ」

「分かりました。ありがとうございます」

 そう礼を言ってから狩猟ギルドを後にし、西の大通りの方へ行く。空は既に色付いて着ている。急がねば。

「鍛冶ギルド、と言うだけあって鍛冶の音がするのかな?」

 実際、少し北のほうからカーンカーンと音がする。その音に従って進むと、狩猟ギルドよりも大きな石造りの建物も前に着いた。一箇所だけ木造のドアには、槌が交差する紋章が描かれている。

「ここかな? 失礼します」

 そう言いながらドアを引く。するとそこには、モジャモジャの髭を蓄え、背の低く筋肉質なおっさんたちがたむろしていた。

「なんじゃ、嬢ちゃん。ここには個人向けの商品なぞ売ってないぞ」

 そうおっさんの一人が言う。髭を三つ編みにしているのがシュールだ。

「い、いえ。こちらならこれを買い取ってもらえると聞きまして」

 噴き出しそうになるのをこらえながら、リュックからボロボロの剣を取り出す。

「ほう……。ちいと見せてみ」

 そう頭のはげたおっさんが言ったので、素直に渡す。

「……嬢ちゃん、これをどこで手に入れたんじゃ?」

「ゴブリンからです」

 そう言うと、おっさん達はざわめきだす。

「この造りはドワーフのもんじゃぞ。しかも、オーダーメイドのようじゃ。ほら、重心がちとちがう」

「ワシらが認めるような人物がゴブリンなんぞに負けるものか!」

「この銘は……少なくともこの街のものじゃないな。東の炭鉱街のエイスのものじゃないか?」

「いや、それにしては添加物が良くない。むしろ南のシーザーのものじゃないのか?」

「いやいやそれとも……」

 何の話をしているのかさっぱり分からない。分からないけれど、何気に重要な情報が出てきた気がする。ベータテストではこの街から出られなかったので他の街の情報がなく、しかも街道は北と西にしかない。なのに東と南の町の名前が出てきたということは、森や草原を踏破すればたどり着く可能性がある。

「あのー……」

「お、ああ。すまない。とりあえず、これ自体には価値はない。せいぜい鋳潰すくらいじゃろう。じゃが、研究には使えるので買い取ろう。百ゴールドでどうじゃ」

 そう言われても、私にはその価値が分からないので、何ともいえない。

「よく分からないので、お任せします」

「おお、そうか。ありがとな」

 私は、おっさんからゴールドを受け取り、礼を言う。

「ありがとうございます」

 そう言って鍛冶ギルドを後にしようとすると、声をかけられた。

「おお、ちょっと待て、そのナイフを見せろ」

「え、はい」

 私は振り返ってナイフを鞘ごと三つ編みのおっさんに渡すと、おっさん共はナイフを抜いて観察しだす。

「おお。量産品じゃが、この剣と造りが似ておる」

「銘は……入っておらんな」

「嬢ちゃん、これをどこで買った?」

 そうはげたおっさんが尋ねてくる。ちょっと怖い。

「え、ええ。確か、南のガンフォート商店だったと思います」

「……あのいけ好かない野郎のところか」

「これはあいつが作ったものだろうが、この剣とは微妙に違っとるのう。師弟関係ではありそうじゃがの」

「……確か、あいつはシーザー出身じゃなかったか?」

「と、いうことは、シーザーで決定じゃろう」

 良く分からないが、結論が出たのか、おっさんたちはしきりにうなずいている。

「あのー、もう良いですか?」

「お、ああ。構わんぞ」

 そう言ってはげたおっさんからナイフを受け取る。

「では、失礼します」

「おお。また何かあったら来い」

 私は礼をして鍛冶ギルドを出る。すると、三日月が昇ってくるところだったので、慌てていつもの宿のある南側に走っていき、ベッドに飛び込んでログアウトした。なんだか、短いけれどものすごく疲れた一日だった。


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