仲直りのキッカケ
3話目となります、薔薇乙女です。
今回はまぁ日常編、といいますか。
少しエッチな感じになってしまいました。
お楽しみください。
「グゥェッッッ!!!!」
──ダァンッ!
「この変態!! 死ねェェェーー!!!」
6月23日。早朝から俺は千春に蹴り飛ばされ、盛大に椅子を巻き込んで倒れ込んでいた。
「す、すまん! 千春! 俺が悪かったッ!」
「死んで詫びろォォ!!」
───5分前のこと
『うぐぅぅ! 悠真ァ、早く教材を出してくれい!』
「うるさいなぁ、 お前バッグなんだから黙って耐えろよ」
『そんなこと言わんでくれい! バッグにだって休みたい時もあるんじゃい!』
「お前いっつも言ってんじゃねぇか!!!」
俺はいつものごとく、教室へ向かう廊下を歩いている。話しているのは今年で2年目の付き合いとなる学生用バッグだ。ちなみに深月はまだ機嫌を直していないらしく、今日は別々の登校となった。
「ったく本当にお前は…」
『お、おい悠真ァ! 前、見て歩けェ!』
「…えっ?」
「キャッ!!」
──ドスンッッ
俺は何かにぶつかり、前にそのまま倒れてしまう。
──ふにゅん……ふにゅん……
「んんん?」
両の手のひらをマシュマロのような、柔らかくてほどよい弾力がある感触が包み込む。
「んぁあんっ!」
「……へ?千春?」
俺は恐る恐る自分の両手を見る。すると嫌な予感は的中していて、その両手は千春の控えめな胸をしっかりと鷲掴みにしていた。しかもそれだけでなく、俺に巻き込まれたことによって千春のスカートは捲れて、中からセクシーな黒いショーツが顔を見せた。加えて俺も体勢を崩していたので、そこに腰を当てるような形になってしまう。
「はぁんっ!………この…悠真ァ!」
「千春、落ち着け。話せばわかる」
「わかるかァァ!!死ねェェ!!!」
「スマァァァァァン!!!!」
こうして今に繋がる。俺は全身をズタボロにされながらも必死に千春に謝り続けるが…
「変態は成敗ッ! 引き裂いてやる!!!」
「ひ、引き裂くってどこをだよ!!」
「そこだァァァァァ!!!」
千春が俺の股間目がけて鋭い蹴りを放つ。千春のキックは強烈で、当たれば確実に俺の局部を砕くだろう。俺は紙一重でそれを避けるが、その威力を証明するかのように、千春の蹴りは俺の後ろにあった机をバラバラにする。
「逃げるな性犯罪者!!!」
「当たったら確実に死ぬじゃねぇか!」
結局、千春による怒濤の攻撃は先生が来るまで終わらず、先生は教室に来てその惨状を見るなり、俺と千春に居残り掃除を言い渡した。
※ ※ ※
「なんで私まで掃除しなきゃいけないのよ…」
「な、なんかすまん…」
「まぁ物を壊したのは私だし。別にいいけど」
ポツポツと会話をしながら、俺と千春は掃除を順調にこなしていく。この調子だと後5分で終わるだろう。暫くすると千春は唐突に俺に問いかけてきた。
「あんた、深月ちゃんと喧嘩したでしょ」
「な、なんでわかった」
「あのブラコン妹が放課後にあんたを迎えに来ないっていうのが理由の1つ。そして2つ目の理由は、私の家はあんたの家の隣。だから昨日の深月の怒鳴り声が丸聞こえだったってわけ」
「あ~なるほど、昨日はうるさくして悪かったな」
「私、別にあんたに謝って欲しいわけじゃないんだけど。両親は海外に出張で、あの子の面倒見れるのはあんただけなんでしょ? だったらさっさと解決しなさいよ。1人の兄の前に、1人の男なら、ね」
「ああ、そうだな。近いうちに解決しとくよ」
「あっそ。私が言いたいのはそんだけだから。じゃあ掃除終わったから帰るわね」
「おう」
確かに千春の言う通り、俺と深月はほとんど2人で今まで仲良くやってきた。今回ほど大きな喧嘩はしたことがないので、お互いに落とし所がわからなくなっている節もある。そう考えながら帰る支度をしていると、どういうわけか千春が教室に戻ってきて。
「そうそう、言い忘れてた。今日ママが深月ちゃんと悠真で晩ご飯うちに来いって言ってたから。よろしくね」
「わかった。深月も必ず連れてお邪魔するよ」
「うん。それじゃあ私見たいテレビあるから先行くわね」
そして千春はそれだけ言い残して、颯爽と教室を後にした。本当に嵐のようなやつだ。
※ ※ ※
「お~い、深月~~」
九条家二階。俺は千春のお母さんにご馳走になる旨を伝えるため、深月の部屋の前で呼び掛ける。
「お~~い、出てきてくれ~! 深月…っうぉっと!」
「……なに」
10分ほど呼び続けていたら、いきなり深月が部屋から出てきた。なんだかんだで俺のことを無視できない、優しい子なのだ。
「今日千春のお母さんに晩飯のお誘いを受けたんだ。2人で行くことになってるから、とりあえず6時までに準備しとけよ?」
「うん…わかった」
深月は返事をしながらも、絶対に俺と視線を合わせようとしない。やはりまだ機嫌は直ってないようだ。
「まずはなんで深月があんなに怒ったのか、それを理解しないと始まらないよなぁ…」
※ ※ ※
「お邪魔しまーす!」
「お邪魔します…」
俺と深月は約束通り、夜ご飯を食べにミストルティン家を訪れる。と言ってもお隣なんだけど。
「あら、いらっしゃい悠真君、深月ちゃん。今日はおばさん腕を振るっちゃったから、ジャンジャン食べちゃって!」
俺たちを明るく迎えてくれたこの人はフリージア・ミストルティン。千春の母だ。
昔から俺らの両親が海外にいることを知っていて、たまに面倒を見てくれる。ついでに、なぜ苗字が日本人の夫を持ちながらミストルティンのままなのかというと、千春の父のほうが婿養子という形で結婚したからである。なんでも、千春のおばあちゃん、つまりフリージアさんのお母さんがミストルティンの名前を途絶えさせたくなかったらしい。(詳しくは知らないが)
「おお、久しぶりだな2人とも」
少し間をあけてから、今度は千春のお父さんが顔を出した。名前は透・ミストルティン。こっちも面倒見が良くて、昔気質な人だ。
「もうご飯の準備出来たよーー!」
暫くしてダイニングの方から千春の声がする。どうやらミストルティン夫婦と話し込んでいる間に料理が出来たらしい。
「それじゃ、いただきます!」
「いただきます…」
しかしせっかくのお誘いだというのに、深月のテンションは常に低く、一言も話さない。それにフリージアさんも透さんも気付いたようで……
「深月ちゃん、ちょっとこっちに来てくれる?」
「悠真、お前はこっちだ」
食事が終わったあと、俺たちは揃って連れ出された。深月はフリージアさんの部屋、俺はベランダに連れ出される。
そしてベランダにつくと、透さんが口を開いた。
「連れ出した理由はわかるな?」
「…はい」
「深月と喧嘩なんて珍しいじゃないか。しかも深月の方は相当へこんでいるようだしな」
「……実は──」
俺は部活のことなど、深月が怒る直前の出来事を事細かに全て透さんに話した。すると、透さんは妙に納得したような顔をする。
「うん、大体の事情はわかった。で、どうして深月が怒っているのかわからないと言ったな?」
「透さんは、わかったんですか?」
「ああわかったぞ? ただ、こればっかりは俺の口から教えることはできないな」
「えっ?! えーー…」
「まぁ人生色々あるってことだ。平坦な人生よりも、デコボコで険しい人生のほうが面白い! 今はそれしか言えないな。…それじゃそろそろ戻るか?」
「は、はぁ」
※ ※ ※
「で? 深月ちゃん、お兄ちゃんとなにかあったの?」
その頃、深月はフリージアさんの部屋に連れ込まれ、悠真と同様に詳しく事情を打ち明けていた。それをフリージアさんは頷きながら真剣に聞く。
「なるほど、ね。深月ちゃんが元気がない理由は大体わかったわ。でもね? 今回は悠真君だけが悪いわけではないわよ?」
「えっっ?」
深月は少し驚く。きっとフリージアさんなら優しく慰めてくれると思ってたからだ。少なくとも今まではそうだった。そしてフリージアさんは深月により核心に迫った質問をした。
「深月ちゃんは悠真君を、お兄ちゃんとして好きなの? それとも男の人として好きなの?」
「私は……たぶん、お兄ちゃんのこと──男の人として好きなんだと思います」
「……やっぱりね、つまりはそういうこと。あなたはお兄ちゃんが異性として好きだけど、悠真君はそれを知らないわけでしょ? だから今回みたいなことになってしまった、それだけの話」
「でも私…一体どうすれば……。お兄ちゃんに告白なんてできないし」
「なんで?」
「だって! 兄を異性として見てるなんて普通じゃない!!」
「でも好きなんでしょう?」
「それは……」
フリージアさんは深月の肩に優しく手を乗せ、悟すように話を続ける。
「深月ちゃん、自分に正直になりなさい。大丈夫、別におかしくなんてないわよ。両親がずっといなくて、優しいお兄ちゃんがずっと守ってくれてたら惚れるのもわかるわ。それがあんなイケメンだったらなおさら、ね!」
その言葉に深月は救われたような気がした。そしてまずやらなければならないことを思い出す。
「フリージアさん…ありがとうございます……! 私まずはお兄ちゃんに謝らないと!!」
深月は重い足枷が外れたかのように、軽い足取りで兄の元へ向かう。
「ふふ、若いって良いわね……でも」
そんな深月の後ろ姿を見て、フリージアさんは1人悲しげに笑うのであった。
「悠真君は、うちの子がもらうわ。深月ちゃんには悪いけど」
※ ※ ※
ミストルティン家での食事も終わり、俺と深月は自宅に帰った。家についてから妙に深月がソワソワしているのが気になるが、俺は風呂に入って早く寝ようと思い、風呂場に向かう。
「はぁ〜、今日も疲れた〜」
俺は浴槽に浸かりながら、じっくりと肩をほぐす。
今日は千春に追い回されたり、深月に気を使ったり、色々なことがあったからなぁ。そんなことを考えていると─
──ガチャッ
「お、お兄ちゃん……私も一緒に入って……いい?」
「深月っっ?!」
急に深月が風呂場に入ってきた。俺は慌ててタオルで陰部を隠した。
「なにしてんだよ?!は、早く出ろって!」
「昔はよく入ってたから良いじゃん。それに今日は言いたいことがあるの」
「言いたいこと、ってなんだよ?」
──ピチャ……ピチャ……
深月はゆっくりと俺の方に向かって歩みを進める。そして俺の静止を押し切って、そのまま俺が入っている浴槽に生まれたままの姿で入ってきた。
「お兄ちゃん……」
深月は自分の身体を隠そうともせず、むしろ俺に見せつけるかのように胸を張る。それによって、深月のたわわに実ったおっぱいとツンと張り詰めたピンク色のつぼみが俺の視界を埋め尽くす。深月のおっぱいは吸いつきたくなるくらいに綺麗で、俺の理性を溶かしていった。そして深月は俺の胸板に自らの胸をむにゅんっと押し付け、更に顔を近づけて話始めた。
「お兄ちゃん……昨日はごめんなさい」
「深月……?」
俺は驚いて深月の顔を見る。まさか深月から謝ってくるなんて思ってもいなかった。
「私……お兄ちゃんが離れていっちゃうと思って…それであんなこと言っちゃったの。ごめんなさい」
「俺が深月を放ったらかしにするわけないだろ?」
「うん……そうだよね、ごめんなさい!」
「いや、俺の方こそお前のこと考えれてなかったよ。部活のことも前もってお前に伝えとくべきだった。ごめん」
「……お兄ちゃーーん!!」
深月が泣きながら抱きついてくる。俺は深月の身体の感触にドキドキしつつも、そっと抱きしめ返した。
こうして、悠真と深月の過去最大の喧嘩事件は幕を下ろしたのであった。もちろん深月には、抱きしめながらチラッチラッと深月の体を見ていたことは内緒である。
※ ※ ※
「イヒッ…イヒヒヒヒッ!」
悠真と深月が風呂場で仲直りをしていたのと同時刻。真夜中にも関わらず九十九学園の廊下には不気味な笑い声が響いていた。
「神ハ、オマエ達ヲ見テイル……イヒッ」
──ガシャン…ビリッ…メギィッ……
「贖罪ノ時ダ、奉仕探偵部ノ異能者タチヨ──」
さぁ、最後の終わらせ方は意味深にしておきました。
「あれ?もう終わりそうなの?」
と思う方もいるでしょうが、全然終わりません。
次の事件を仄めかしたので、はて、次は何が起こるのかなぁ〜なぁんて気にしてもらえたら嬉しいです。
ちょっと怖いのが、僕自身妹キャラが好き過ぎて深月のためのストーリーになってしまわないか、というところですかね。それではここまで読んで下さった方々、ありがとうございました!




