更生プログラムその5、パンツ見るより部屋の掃除をしろ!
『いいぞ!陽介!その調子だ!自己ベスト更新するぞ〜!』
『陽介君!ファイト〜!』
新緑が美しい5月連休明けの最初の金曜日、僕は校庭を必死走っていた。今日の更生プログラムは長距離を走ることだ。相変わらず、美里ちゃんより遅いがそれでも、着実に自己ベストを更新している。そろそろゴールだ!
『ゼェハァ・・・ど、どうでした?』
『うむ!自己ベスト更新した!ご苦労だった』
流石に4月過ぎるとまだ爽やかな暖かさだが、運動すると汗がすごい・・・
『はい、タオル』
笑顔で美里ちゃんがタオルを渡してくれた。可愛いな。
『ありがとう・・・美里ちゃん』
タオルで汗を拭い、持参した水筒でゴクゴクと水分補給をする。
『どうだ!?パンツより運動に集中したほうが健全でいいだろ?!』
先生・・・もうその言い方はいいです。
『美里も、陽介が頑張ってる姿見て感動したかな?もうパンツなんかに負けないと思ったが・・・』
『まぁ、まだまだですよ。これからも運動して鍛えないと、すぐに女の子のパンツに目が移るかもしれませんよ』
『うむ。そうだな!ここで満足していてはいけないな!パンツの誘惑は絶大だからな!』
君たち、今さっきからパンツ言い過ぎだ!
『明日は休みでゆっくりできるし、出来る限りの力を出しましたよ』
あぁ、僕でも納得できる素晴らしい運動だった・・・と思ったら・・・
『いや?明日も更生プログラムを実行するぞ!』
『え?!土曜日ですけど?!』
ちょ・・・おいおい聞いてないぞ!
『明日は特別更生プログラムだ!遅れずに、先生のアパートに来るように!美里が場所を知っているので聞いてくれ!そして、この事は、校長や他の先生やPTAには内緒な!では、本日の更生プログラムは終了だ!解散!!』
田中先生は有無をいわさず、去っていった。
『陽介君、先生から聞いてなかったの?』
『今初めて知った・・・美里ちゃんは知ってたの?』
『うん。一週間ぐらい前に・・・先生は直接陽介くんに伝えるって言ってたけど・・・おかしいな・・・』
なんだと〜。嫌な予感しかしないんだが・・・田中先生のアパートに行って、重労働させられるような気がしたからだ・・・
翌日。清々しい朝。こんな日は広い公園でピクニックでもしたような気分だ・・・。
・・・嫌な予感は的中していた。
『お!よく来たな。ようこそ、私の部屋へ!』
だらし無い格好で僕と美里ちゃんを迎えてくれた田中先生。部屋は散らかり状態だった。空のペットボトル・空き缶(ビール等)や空き瓶(日本酒等)はそこら中に置いてあり、服は脱いだらそのまま重ねて置いてある状態で、タバコの吸い殻はてんこ盛りで、菓子やらコンビニの小袋やらが散乱していて、お弁当の容器が埋め尽くしていて、キッチンには洗っていない皿やコップが多数置いてある。トイレとお風呂場は見なくても想像ができる・・・。先生は女性だが、普通の親の目の届かない男子学生の一人暮らしてってこんな感じなんだろうか・・・。
『本日の更生プログラムを発表する!女の子のパンツに集中する暇があったら、私の部屋を掃除しろ!以上だ!さっそく取り掛かってくれ!』
キリリとした顔でそう田中先生は答えたが、美里ちゃんは絶句し青ざめ、僕は諦め顔だった。
『この前な、彼氏がどうしても私の部屋に行きたいというから、連れてきたら怒りだしてな!「だったら、お前が私の部屋を掃除しろよ!」って言ったら、それっきり連絡が取れなくなった。このぐらいで私を避けるなんて、どうしようもない男だった』
どうしようもないのは、あなたですよ、田中先生・・・。こりゃぁ、一日で終わるかな・・・。
『よし!陽介は部屋のゴミの処分とトイレと風呂場掃除を頼む!、美里は台所と洗濯と部屋の掃除機かけを頼む!細かい指示は私が出す!』
・・・指示をだすだけで動かない気でいるな・・・どこの工事現場の監督だよ!しかし、文句言ってばかりでは始まらない。
『陽介!これをしてくれ!喘息が発作したら困るからな!』
手渡されたのが、マスクだった。ありがとうございますって言いたかったが、あえて無言で受け取りマスクを着用して大掃除に取り掛かった。数枚手渡された袋は「燃えるゴミ」だけだったんだが・・・
『先生、燃えないゴミの袋か、プラスチック容器とかペットボトル専用の袋ってありますか?』
『ない!』
おぅ、即答かよ・・・。まぁいい、取りあえず燃えるゴミの袋を利用して分別するか・・・。部屋の窓を開けて掃除開始と・・・これは、燃えるゴミで・・・これは、プラスチックのゴミ・・・ペットボトルはこっちにと・・・美里ちゃんも台所で一生懸命皿洗している。あ・・・先生、袋が足りなくなりましたって・・・
田中先生はベランダでプカリプカリとタバコを吸っていた・・・
『何?袋が足りない?しょうがない、コンビニで買ってくる!』
そして、買ってきたのは「燃えないゴミ」の袋20枚入り一式だった・・・いい加減過ぎるよ・・・。
『先生、お皿とコップ洗ったんですが、置く場所が無いんですけど』
今度は、美里ちゃんが大変そうだな・・・
『ん?そうか・・・じゃぁ使わないし、捨てるか』
『もったいないですよ!せめて、リサイクルショップとかに売るとかしないと・・・』
『おー、そうか。そうするか!とりあえず、ダンボールに一時保管するか!スーパーから貰ってくるか!よし行ってくる!』
『あ!それと、新聞紙があると助かります!』
『うむ。新聞紙とダンボールだな!』
ちょっとお転婆だけど、しっかり者だなー美里ちゃんは〜。いいお嫁さんになれるぜ!
『陽介君のほうはどう?はかどってる?』
『何とかなりそうだよ。困ったことがあったら手伝うし、声かけてね』
『ありがとう』
嬉しそうに答える美里ちゃん、可愛いな・・・。田中先生も美里ちゃんみたいになればいいのに・・・。
その後も僕と美里ちゃんで大掃除を進めた。気がつけば、お昼をとっくに過ぎていたが・・・
『もう少しで掃除終わりそうだし、お昼はその後でな!もちろん、私が奢ってあげる!』
てやんでぇい!こんな引っ越し並の重労働させられてなんの報酬もなしで家に帰れるか!・・・僕は、ラスボス級の魔王が住んでいたんじゃないかと思うような妖気を放つトイレとお風呂場をゴシゴシ掃除し、美里ちゃんは洗濯機を回しつつ部屋を掃除機でかけていた。
数時間後・・・
素晴らしい輝きを放つお風呂場とトイレ、キラキラで眩しい。そして、フローラの香りがしそうなキッチン。部屋のサッパリ感がパネェです!達成感が半端ない!よくやったぞ!僕!、美里ちゃんもありがとう!
『うむ。こんなもんだな!』
偉そうな田中先生・・・あなたは何もしてないよね・・・。もっと僕達を褒めてもいいと思うけど・・・
『さて、近所のファミレスに行くか!好きなものを遠慮しながらどんどん頼むといいぞ!』
そう微妙な言い方をした先生と美里ちゃんと僕は、アパート近くのファミレスに向かった・・・。お腹ペコペコです・・・。あぁ、ファミレスが天国のように見えたよ・・・しかし、ここからが本番だった・・・つづく
・・・続くの?!