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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ツンデレ少女とのほほん少年(ときどき獣)

作者: 雨月

嫌悪感受信時即退避推奨小説です。

タイトル詐欺だ!嫌だ! と思われた方も即退避でお願いいたします。

要自己防衛。自己責任。

下ネタ注意(爆)


黒い髪は艶を帯び

鋭い眼差しは涼やかで

すらりとした身体はしなやかな獣を思い出す。

性別と年齢から少女と言われるはずのレイヤはため息をついた。


「あの・・・ずっと前から、好きだったんです。」


子兎のようにぷるぷると震えながら自分に告白してくる少女。

確か一学年下で、前に転びそうになったのを助けたな と思い出しながら口を開く。


「断る。」

「っ、でも、あの、私・・・」

「聞こえなかったのか?耳は大丈夫?」

「っ・・・!!」


目に涙を潤ませ走り去る少女に、レイヤはまたため息をついた。


 周りは私を一体何だと思っているのか。

 全く馬鹿ばっかりだ。


同性から告白されても家の跡を継がなくてはならない自分が受け入れられるはずがないというのに。

それに同性と恋愛する趣味もない。

最後は耳の異常に気づいたのか走り去っていったのを思い出し、少女の容態を心配した。


歩きながらすれ違う学生達と自分の違いを確認する。

確かに自分は同学年の少女たちよりかは頭一つ身長が高い。

だがこれは血筋なのだと母から言われている。


先ほどすれ違った少女のスカートがひらりと風に揺れた。

服装も自分はズボンだが、他の少女たちはスカート姿だ。

これも両親が動きやすい服を許してくれている為だ。

他の少女たちは許されていないらしい。なんて可哀想なんだ。


三つ編みの髪が木に引っかかり、困っている少女がいたので助けた。

髪の毛も長い少女もいるが短い少女もいる。

自分ほど短い髪の少女もなかなか見ないが、男にも髪の長いやつも短いやつもいるのでこれは多分関係ない。


助けた三つ編みの少女が、木の棘が刺さって出来た傷を治療しようとしたが遠慮した。

この程度のかすり傷など心配するほどのものではない。

自分とは違い、少女の手は白く柔らかかった。

だが、これも剣を習う身と魔法を主に習う者では違っていて当たり前だ。

実際に魔法薬学専攻の者は手荒れに悩むものも多く、実験に失敗すると痕が残る者もいるという。

剣だこの出来てぼこぼこの手はよく鍛錬している者の証である。

鍛錬を欠かさない自分とは違っていて当たり前だ。


いくつか考えたが、やはりおかしい点などない。

全く、周りは一体私のことを何だと思っているのか。

待たせていた馬車に乗り込み家路へと急いだ。




「レイヤちゃん、お帰りなさい!」

「只今帰りました母上。」

「うふふ!今日もかっこいいわねぇ。」

「ありがとうございます。」


玄関で出迎えてくれた母はふんわりと柔らかな髪を揺らして私を褒める。


「あっ、そうだ。夕御飯の後にお父様の書斎でお話があるから忘れちゃダメよ?」

「・・・お話?」

「そうなの!ちょぉっと、困ったさんなの。でも、レイヤちゃんが嫌なら断っていいからね!!」

「・・・はぁ。」


母の『困ったさん』は、気合を入れて立ち向かわなければいけないことと同意義である。

夕御飯の後が憂鬱だと思いながら天を仰いだ。




「私に縁談?」


夕飯後、父の書斎にて聞いた話は、格上の家格からの縁談話だった。

しかも、断ると仕事に影響が出るかどうか微妙な家からの縁談らしい。


「お相手は少し・・・いや、かなり、かなり癖があるお方で、悪い方ではないのだが、悪い方ではないというそれだけのお方でもある。」

「父上、かなりを二回も言わないでください。癖があろうとなかろうと、家の為なら嫁いでもみせますが、この家の後継はどうなさるおつもりで?」

「それは、嫁ぎ先で子を二人産み、二人目にこの家を継いでもらえばどうにかなる。どうにかなるのだが、それを理由に断ってもいい。」

「そうですか。ですが、私のことを他の者たちと同様に勘違いする輩とは結婚したくはありません。」

「そうか。では、断ろう。」

「父上、まだ会ってもおりません。それとも、この話は私の口からお断りしたほうが角が立たないのですか?」

「いや、そういう訳ではないのだが・・・」


口を濁す父に首をかしげながら、結局はその人物と会うことになった。




「うっわぁぁぁ!!すごいねぇ。本当に男の子に見える!女の子らしさ皆無!!」


会った瞬間、その少年から青年へと移り変わろうとする頃合の少年、いや、無礼者は私の目の前でそう言った。

無礼者の背後から、無礼者の父親らしき人が思い切り無礼者の頭を殴り、隣に立っていた母親らしき人は、はらはらと泣き出してしまった。

癖がある、ではすまない惨状だ。

どうするんだこの修羅場。


「いったいなぁ、父様。たんこぶ出来たよ、たんこぶ。」

「馬鹿者!!リヨト、お前は少しは考えてから口に出せと何回言ったらわかるんだ!!」

「いやぁ、嬉しさのあまり。」

「喜びの言葉でも人を傷つけることがあるということを何故考えなかった!!」

「申し訳ございません。私達わたくしたちの愚息が本当に失礼なことを、申し訳ございません。」


怒りのあまり説教をしだす無礼者の父と、涙ながらに謝る無礼者の母。

この無礼者のご両親は、とてもまともそうなのに、どうしてこんな奴が生まれてしまったのだろうか。


「ごめんなさい。傷ついた?僕は君のそういう個性を気に入って言ったんだけど・・・。」

「個性?」

「男の子みたいな格好をして男の子みたいな言動をしているし、周りにはツンツンしてるし、何か家の事情かと思ったけど、別にそうではないから、個性じゃないの?」


そうか。個性的というのか。私は、『個性的なだけの普通の少女』でしかなかったのか。

やはり、周りは私の個性を理解していない馬鹿ばかりだったのだな。


「僕の個性はね。男の人しか好きになれないんだ。でも、家を継ぐにはやっぱり子供が必要でしょ?だから両親に『どこからどうみても男の子にしか見えない女の子がいたら後継も出来るかもしれない』って言ったんだ。絶対いないと思ったんだけど、世界は広いねぇ。というか、すぐ近くにいすぎてびっくりしちゃった。」


失礼なことを言われている気がする。

同じ学院だなんて、本当に驚いたよぉ と笑う無礼者きっぱりと言った。


「私はどこからどう見てもただの少女だろ。」

「・・・もしかして、レイヤちゃんって天然?」

「馬鹿か貴様。」

「あれ、ツンデレ?あ、でもデレてくれてないから、ツンツン?」

「きちんと考えてから話をしろと先程も言われていただろう。」

「うん。そうだね。レイヤちゃん。僕に身も心もゆだねて僕と子作りしよう?」

「考えた末でその発言か。」

「あっ、ごめん。これはあんまり考えてないかなぁ。」

「やはり馬鹿か。馬鹿なのか。考えて言えと言っただろう。」

「そうだね。あ、この家の二階に僕の寝室があるんだ。話の続きはそこでしよう。」

「何故場所を移さなければならない。」

「きちんと考えて発言するためにはどうしたらいいか、教えてもらおうと思って。その為には一番最適な場所なんだ。」

「何がどう最適なんだ。戯れも大概にしろ。」

「最適かどうかは行って話してみないとわからないでしょ?それとも本当に最適じゃないかって試したことあるの?」

「それはないが・・・。よし、お前がそこまで言うなら行ってやらんこともな」

「レイヤちゃん、レイヤちゃん、それはだ――――――――めっ!」


行ってやらんこともない と言い切る前に母に止められた。

一体何だというのか。

母は困った顔をし、無礼者は惜しかったなぁ とのほほんと笑い、父も無礼者の父親も卒倒しそうな顔をしている。大丈夫か?

無礼者の母親はおろおろと意味もなく手を動かしている。


「レイヤちゃんって、可愛いね。僕、もし後継ができるならレイヤちゃんと結婚したいなぁ。」

「後継が出来るかどうかは時の運と神の御心によるものだと聞いているが?」

「僕にはもう一つ問題があるからレイヤちゃんと一緒に僕の部屋に行って試してみたかったんだけど・・・。」


ちらり と、無礼者・・・リヨトが両親たちを眺める。

ぷるぷると拳を震わせ、怒りを爆発させようとしている父親にふにゃりと微笑んだ。


「父様が憤死しそうだから、寝室で試すのはやめておくよ。」

「当たり前だこの大馬鹿者が!!」


怒鳴る父親に、まぁまぁ と抑えつつ少し真面目な顔でリヨトは話しだした。


「父様、でもね。これは大事な話だと思わない?

 もしレイヤちゃんと結婚して、いざという時に子作りできません ってなったらどうするの?やっぱり男の人じゃなきゃ愛せない ってなったら、レイヤちゃん傷ついちゃうでしょ?

 他の女の子でもそう。僕はこう言う性分だから、失礼とはわかりつつもここははっきりしておかなきゃ。失礼どころの話じゃなくなるよ?」

「う、ぐ、いや、はっきりするべきかもしれないが、その後の評判に関わるような真似は慎んで、他の方法を選ぶべきだろう!!」

「ばれたかっ☆」

「リヨトぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」


何かよくわからないが私の名誉に関わることをリヨトが企てていた、ということは理解した。


「つまり、リヨトはどうしたいんだ?」

「レイヤちゃんと一緒に子作りできるか試したいなぁ。」

「それは結婚後にすることではないのか?」

「結婚前でも出来るよ?」

「結婚後でなくてはいけないのではないのか?」

「倫理的に問題はあるかもしれないけど、男だったらいつでも出来るよ。」

「男が万年発情期みたいな知識を娘に植え付けるな!!」


ずっと黙っていた・・・というよりも、口を挟めなかった父上がリヨトに噛み付かんばかりに叫んだ。


「いやぁ、あながち間違ってないと思うんですけどぉ。」

「あながち間違ってはいないが、私まで同じように思われたくはない!!」

「あながち間違ってはいないんですか父上。」


これには驚きである。


「いや、違う!!私だけは!!違う!!」

「私も違う!!一部の男だけなので、勘違いしないように!!」


すかさず主張したリヨト父に驚きつつも頷いた。


「リヨト含む一部の男性は万年発情期で結婚前でも子作りが出来る、と。」

「・・・レイヤちゃんの教育、すこぉし、方針を変えたほうがいいかしら。」

「あの、少しではなくかなり方針を変えたほうがいいかと思います。」


何故か母二人が仲良く話しだしている。しかも話題は私の教育方針について。何故だ。

父二人も頭を付き合わせて何かを話している。このままでいいのか、いや狼に襲われる可能性も、とか話しているが、狼ごときに遅れを取る私ではありません。父上。


「リヨト含む一部の男性は結婚前でも子作りができることは理解したが、それは倫理的に問題があるということも理解した。そして、倫理的に問題があることを、お前が私に強要しようとしていることも理解した。」

「あっ、そこまで理解しちゃうのかぁ。」


でもレイヤちゃんって強要しようとする前に去勢しそうだよね と、あははははと笑うこの男は去勢したほうがいいのだろうか。よしやろう。去勢の仕方は動物と同じでいいな?


「きゃー!!レイヤちゃんどこから剣を出したのっ!」

「すまない!!愚息の無礼は詫びる!!こんなでも跡取りなんだ去勢だけは!!」

「これも世の為人の為っ!跡取りは養子という手もあります!!」

「それは最終手段として、せめて最後の希望にすがらせていただけないかっ!!」


最後の希望とまで言われては流石に去勢もできず、剣を収める。

ほっと息をつく両親たちの隙をつき


「だが、せめて一発!!」


小さく振り抜いた拳は不意を付くには最適な一撃のはずだった。


「うわぁ、レイヤちゃん怖い!!」


半歩引いて拳を避け、そのまま私を背後から抱き締めて動きを封じたリヨトの流れるような動作に、目を見開いた。

これはもしかして強要されても抗えないかもしれない。

そんな考えがふわりと浮き、声に出ていた。


「私と子作りできるかどうかは、寝室ではないと試せないのか?」

「えっ、初めてを寝室以外って、なかなかだいた、げふぅ。」


何が大胆だ。勘違いするな。

顎を引き、反動をつけて思い切り後頭部を背後にいるリヨトに当たるように繰り出した。頭突きは見事に当たった。してやったり。


「子作りをする前の段階でわかるかどうかを聞いたんだ。」

「うーん。どうだろう。あっ、レイヤちゃんの髪からいい匂いがするー。僕、こういう香り好きだよ。しかも結構筋肉付いてるねぇ。」

「匂いを嗅ぐな。身体をまさぐるな。」

「レイヤ、今、父が助けてやるからな。」

「あらぁ、あなたったらレイヤちゃんといい、何処から剣を出してきたのぉ?」

「奥方、不思議がっている場合ではありません!!止めてください!!」

「リヨト!!こら!!手を離しなさい!!お母さんはそんな子に育てた覚えはありませんよ!!」


「あ、出来そう。」


「「「「「 は? 」」」」」


空気が、凍った。


「レイヤ、動くと危ないからな・・・観念しろ。」

「リヨト本当か!?」

「り、リヨトそんなあけすけなものの言い方はどうかと思いますよ。」

「あら、まぁ。」

「いやまず、父上を誰か止めてくれないか。」


このままでは私まで一緒に斬られそうだ。

腰に何かが当たる感覚など、命の危険の前には瑣末なことである。・・・瑣末なことである。瑣末な事なんだ気にするな自分。

というか擦り付けるな変態!!!!!!


「うわぁ、女の子に反応するなんて嬉しいなぁ。これで問題はなくなったね。」

「今まさに問題が起きようとしている現実から目をそらすな。」





ツンデレ少女がデレるのは、まだまだ先のこと。




「さっさと!!この手を!!離せ!!」

「えー。だって、レイヤちゃんの身体気持ちいいんだもん。」

「レイヤ、大丈夫だ。父の剣の腕前を信じなさい。」

「父上もさっさと正気にお戻りください!!」




まだまだ・・・当分・・・先のこと。






「ツンデレ少女とのほほん少年(ときどき獣)」というのが読んでみたいと某所で呟いて、そのまま書いてみよう! と軽く考えたらこうなりました。何故だ。


素直になれないツンツン女子が好きな男の子に時々見せるデレ = ツンデレ


ではなく、


周りにツンツン。好きな人にはデレデレ なツンデレを書きたいとか思ったのが間違いだったんでしょうか。

読了ありがとうございました。

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