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出合い

「っ………」



左の焼けただれた手首を右手で自分の前に持ってきて自分の手首を噛み砕くように噛んだ。



とたんにザクロが散るがごとく血が飛び出る。



だが、その血は地面につく前に鉄色の鎖になって地面にはジャラジャラ、と鉄が擦れる音が部屋に響く。



ふぅと、紅壱は一息つく。



「ありがとう。十分にデータは取れた。鎖を閉まってくれて構わない。」



一見ただ、練習場かと思えるほど素朴な作りのコンクリートの部屋。



だが、二階から研究者か何かは知らない奴等が話ながらこちらを見たりしている。ものすごい不愉快だ。



自身が実験動物のように撫で回されるように見られるのがかんに触る。



だが、それはここが能力研究治療実験棟第四棟と知らなければの話だ。これがここでは正常なのだろう。



「兄さんは人気者だね~これでは正妻としての座をあそあの白服どもに奪われちゃうかも。」



「いや、お前は俺の妻じゃないだろ。それにあそこにいるのは見たところ全員男だ、まるで俺が変な性癖持ちみたいになるだろ。」



妹は茶化すように笑いながら楽しそうに宙を舞う。俺は出しておく必要のなくなった鉄色の鎖を自身の中に引っ込める。ズズズと云う音に続いてその大量の鉄はからだの中に入っていい一部は血へと一部は霧となって宙に霧散する。普通の人間ではない。と云うのを証明しているようなことでもある。



「加宮くん、ロビーに先に行っててくれ。君の能力の解析がすんだら専用の能力封印手枷を持っていく。それまで短く見積もってあと12時間かかるからロビーにいるはずの間宮の指示を聞いてくれ。」



能力封印手錠、簡単に言ってしまえば生活に困らないほどに能力を制限する為にその個人用に作られた特殊手枷だ。間宮程信頼が厚くなると恐らく着けてなくても大丈夫だと、判断されるのだろう。



俺は指示に従い部屋から出た。



「そういえばなんで能力全部使わなかったの?」



「別に…この島に来るときにも見せなかったしそれでパスできたから見せなくても大丈夫だと思っただけだ。」



傍目から見れば彼は何を言っているんだ?となるであろう。それもそうだ一人でしゃべっているようにしか見えないからだ。紅壱は歩きながら楓に答える。



「そもそも別に全部の能力を使えとは云われてもいないし、あれは術語を言わなければ発動すらしないだろ。発動しても不安定のままだ。それにあそこのやつら相手に使うのは気がひける。」



「兄さん、屁理屈はすんだ?それにあそこで能力を開示しておけば制御方法とかそういうのが少しは分かるかも知れなかったのに。」



たしかに、屁理屈だ。ただ、使いたくても使えない術語を云っても条件が揃わなければ発動しない。簡単に言えば抜けない王家の宝刀みたいなものなのだ。抜ければ強いかも何かの役に立つかもと云うだけで実際は一回しか使ったことはないし、使ったという記憶はあってもどういう能力かすら分からない。ということだ。



「制御ね…それよりも発動方法の方が俺としては先に見つけておきたいんだがな。そもそも…」



「あー兄さん拗ねちゃった~めんどくさー」



「別に拗ねていない。ただ、制御よりも発動の方が

ドゴォォン!!



突如20メートルくらい離れたところでコンクリート作りの頑丈な壁が砕けた。



その砕け散るコンクリートの破片と砂ぼこりの中から2メートルはゆうに越すであろう上半身裸の男が顔を出す。



だがその目に眼光は宿っておらず、焦点が全くあってない。そして、壁を破壊したであろうその腕はその男の身の丈に似合う大きさとは程遠く肩から手が地面に接している。



「キャァァァ!」



壁を破壊したあれと紅壱の中間にいるように白銀の髪を持つ女から若い悲鳴が聞こえる。



見た限りではあの上半身裸男の走力はそれほどでもない。壁を破壊したあの拳、腕は脅威だがそれと引き換えに下半身は筋肉の付きが普通の人間と同じだ。これなら後退するだけでやり過ごせる、何も無理に戦わなくてもいいのだ。とそう確信した。



「兄さん後退は無理ぽいっよ~」



楓は緊張感を持たない声で注意を促す。



紅壱が振り向こうとした瞬間、後ろの壁が砕け天井もそれに合わせるように頼るべき柱をなくしたのか陥没する。とてもではないがもう後ろを通ることは出来そうにない。



「正面突破しか無さそうだな…」



悪態をつきながら自分のおかれた状況がいかにに酷いかは直ぐに確認できた。



「ギェェェェ!」



だが、壁を壊した半裸の男は待ってくれはしない。焦点が定まらない目で、その巨体をユサユサと動かしながら歩み寄ってくる。



銀髪の女は迫力に負けてかその場に支えの棒を無くしたように倒れる。巨体は水中に放った餌さに寄る魚のようにゆらゆらと女の方へ足を動かす。



あの巨体から繰り出される力は糸も簡単に女を絶命へと誘うだろう。だけど、それは目覚めが悪い。



(かつて命を奪った俺が言えることではないけどな…)



ため息混じりに息を吐く。次の瞬間紅壱は自信の手を噛んだ。血が垂れるようにその朱を主張するように黒くただれた腕から出る。



「鈍く光れ。鉄の鎖!」



紅壱が左腕をその巨体の方を殴るように声を発しながら放つ。左腕は鈍い光を放つ鎖をまるで意思を持つようにうならしながら、対象の巨体に絡み付かせる。



「ギォォォォォォ!」



巨体は鎖を引きちぎろうと必死に体を回すがいっこうにとれはしない。物量からすれば普通ならば鎖を持つ物、または鎖本体が根をあげるが、そんな仕草は全くない。



「鉄を熱くして服のシワをのばす道具をお前は知ってるか?」



紅壱は、簡単な問いをぶつけてみる。だがその問いに答えず、いや答えられず巨体に鎖が食い込む。



「兄さん、あの女なんで助けたの?別に助けなくてもよかったんじゃない?というか、あれはもう話すという機能を無くしてると思うよ」



紅壱は何となく肉塊に対して云った言葉が返されず、楓に苦笑混じりに返されたことに頬を少し赤らめながらやりなげに。



「うるさい、何となくだ!それ



紅壱が答える暇なくしてその体が宙に浮き巨体の方へ吸い寄せられる。まるでさっきまで泣いていた女と入れ違うように飛ばされる。



「チッ! なんだよまだ、踏ん張れたのかよ」



簡単な物量による勝負だ。紅壱があの巨体に引く力で負けただけである。



一見すれば紅壱が負けることは明白だが、彼はその能力の助力ゆえか引く力だけで負けるというのはあまり考えられなかった。ただ少し気を抜いた瞬間に力の押し合いに競り負けた。



だが、負けただけである。



負けたと同時に紅壱は鎖を引き巨体の方へと体を飛ばす。



「Ureeeee !!」



短い叫びの後、巨体は、全身をくねらせ鎖を引きちぎる。



巨体は右腕で鎖を引き、左腕で飛んでくる紅壱にタイミングを合わせるように叩きこもうと腕を構える。



「アビューシング・ナイフ…」



紅壱が短く呪詞を唱える。鉄色の鎖が、紅く黒い意思を持った鉄が刃渡り30センチ程の刀へと姿を変え、まるでなにかを象徴するように刀は鎖の出所、紅壱の腕から延びていた。



そしてさっきまで巨体に引き寄せられていた体は自由を手にしても、同じ速度でその巨椀に当たるように刀をぶつける。



「Ugeeeeeeeeee !!!」



紅壱から延びる黒紅の刀は、その刀身に深紅を帯びて巨体の左手から左肩に、横一文字に一刀両断していた。



紅壱は第一刀が終わると、すぐさま体に力をいれるように小さく、力強く呼吸をし。



「エンドレス・アビューイング」



刀身が紅く、鈍く光り、刀を肉塊の頭のところを一刺し、心臓、肺、背骨、腸を断ち切るように刀を刺し、抜きする。



わずか二秒にも満たない時間だ。



同然《身体高速修復》というcodeを使用してでの腕の速度だ、同然体は耐えられず、体が悲鳴をあげるように血という涙を流す。



だが、それすらも何もなかったように新たな骨、神経、筋肉繊維がそれを修復するように出来上がる。



かつて人間だった巨体の男は、なにも言えぬ肉塊となった。



「兄さん、お疲れ。しかしこれなんだったんだろうね。筋肉の膨らみかたが人間じゃないみたいだよ。」



紅い鮮血をその服に染み込ませて、その場で何かを考えるような素振りをとっている兄に無邪気に妹は単純な疑問を問う。



「人間…だったもの?とかか?どちらにせよこの島は、こういうのがいると確認できた分だけでもまだ、ましだろう」



正直、これに関しては紅壱は何も云えない。ただ、戦って殺しただけであり、そもそも、これがなんなのか知り得ていないからだ。



「あ、あの…助けてくれてありがとう…ございます。」



そういえばさっき悲鳴をあげていた、白銀の女だ。腰が抜けたのか、座りながらこちらを上目遣いで見上げてくる。



だが、女というよりは少女と捉えた方が適切だ。さっきは確認が出来なかったが、長い前髪をおでこの真ん中で別けた白銀の髪の中からは死人を連想させられるような薄く白い目、肌がまるでこの世にいない物を象徴しているかのように見える。



「あ…ぁ…えっ…と。その…」



「怪我は無いか?」



「あり…ません………。その…強いんです…ね。私…恐くて…」



銀髪は消え入るような声で話す。まどろっこしいがそういうのが出来ない人間もやはりいる。仕方の無いことだ。



「とりあえずここから退くぞ、そもそもなんでこんなんと戦わなくちゃいけないんだか…そういや、名前云ってなかったな。俺は加宮紅壱。お前は?」



「私…?私は…雪園風香。能力は…雪」



「いや、能力については聞いてないんだが…まぁ、いいか。雪園、歩けるな?」



なんで能力を自分からさらけ出すのか知らないが雪園は顔を赤らめながらも立ち上がりこっちに歩いてくる。



「風香で…いい。私も…紅壱って呼ぶから」



「分かった。風香とりあえずお前の目的地はどこだ?流石にこの施設内で目的無しは無いだろう。」



こんな設備が揃っている施設だ。検査、治療、なんでも揃っているといっても過言では無いだろう。そこに理由が無くている意味など無いだろう。



「入島…検…査と何か…調べるって…その帰りに…」



「なら、とりあえずロビーまで行くか。あの肉塊の事も気になるしな…そういや、風香は見えているのか?楓の事が」



風香は縦に降ってから首をかしげるように横に振り弱々しい体を動かしながら、風香は俺の横に列び、



「行く………?」



と何事も無かったように取り繕った笑顔で訪ねてくる。



「兄さん、私を忘れてない?若干おいてけぼりの幽霊さんがここに居ますよー」



それが白銀の髪を持つ雪園風香との出会いだった。



「無視しないでーー!」

気が付いたら色んな用事があり遅くなりました。すみません。m(__)m


最初は一ヶ月以内に更新するように使用としてたらそれがフラグのように折り重なって投稿できずじまいでした。


見る方は少ないと思いますが、それでも見てくれたか分かる、表?か謎なのですがこのサイトにある機能を少し見ながら見てもらっている。というが励みにしながら頑張っております。


そつない文ですが読んでくださってありがとうございます。


次は来月の20には出したいと思っております。

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