遊星VS大和
遊星は敵の魔術師に何らかの魔術により飛ばされ、美少女と一緒に歩いていた。
やはりと言うべきか、海田の女らしく助けに参上するためにココまで来たのだとか。
残念ながら海田は敵と戦っている筈なのでこんな所でうだうだしている場合じゃないぞと忠告したのだが……。
「じゃあ、京が知らない所で全部解決して……私の株も……うふふ」
こんな魂胆らしく遊星は二人で階段を上がったり下ったり、廊下を通ったりドアに押し潰されかけたりしながら着いたのだった。
「ここが……」
遊星がごくりと唾を飲み、ドアのネームプレートを読む。
『敵、歓迎』
一体なんの目的があるのか馬鹿みたいなカッコのつけ方をしたネームプレートだった。
しかし、遊星は化け物でもなければ天才でもない。
壱や海田とは程遠い位置に存在する凡人なのだ。
「さあ、入るわよ!」
がたん、とドアを勢いよく蹴り破り入って行った女の子。
俺の覚悟完了してないんだけどー! 的な言葉にならない声を上げるが、そんな気持ちを現実は一蹴する。
まず始めに聞こえたのが、ポンプでも押すかのような駆動音。
鉄と鉄が歪に擦れ合う音が聞こえた。
「ちっ!!」
女の子がドアの中へと勢いよく転がる。
鈍い音が聞こえた。
視界に圧倒的な虐殺性を秘めた機械の拳が映った。
動けない。
足元が払われた。
「え?」
身体が傾ぎ、さっきまで身体があった所に拳が貫いた。
ドアはネームプレートごと拳に飛ばされる。
何だアレは……?
鈍色の拳は明らかに鉄ではない金属で使われていた。
ゆるやかな丸みを帯びた拳は見る者に『死』を思わせるほどに重厚だ。
一撃でも喰らえば、死ぬ。
「流石はSクラスの生徒と言った所か……今のを避けるとはな」
少ししわがれた声――聞いたことのある声だった。
数度テレビで見かけた程度の人物。
しかしながら、世界でもっとも有名な人物。
大和製鉄会社が社長――大和和也!!
拳がゆるやかに戻っていく。
そして、現れる全体像。
部屋の中現れた機械兵はあまりにも巨大で、圧巻だった。
まるでゴーレムのような姿をしているが素材は土でなくメタリックな金属。
兜のような頭が小さく動くと共にギシギシと金属が擦れる重厚な音が聞こえる。
まるで死を振り撒く楽曲だ。
倒れた身体をゆっくりと起こしていく。
「大丈夫だったみたいね……このゴーレム、ちょっと厄介そうね」
少女は遊星に一言言う。
おそらくはさっき助けてくれたのが彼女なのだ。
「二対一か……それでもいいだろう。ゴーレムから出て、ここまで来るがいい!」
ゴーレムが吼える。
ギシギシと鳴る死の楽曲。
それだけで、遊星の身体が震えてしまう。
(こんな時、アイツなら……壱なら倒せるんだろうな。海田ならビビッタリしないんだろうな)
「アナタは先に行ってアイツを助けてきて!」
少女はゴーレムへと向かっていく。
速度は目で追えるほど――しかし自分でもとても到達できない速度だった。
遊星はいつだって無力だ。
遊星は走る。
少女より遅く――ゴーレムを横切る。
ゴーレムは、ゴーレムだけではなかったのだ。
「違う……ッ!!」
遊星が叫ぶ。
しかし、少女には届かない。
部屋が盛り上がる。
正確に言えば少女の周辺の床――それがまるで檻のように少女を囲み、押し潰した。
「あ……」
「ぎゃ、ああああああああああああああああ!!?」
少女が痛みに吼える。
「この部屋自体が、ゴーレムッ!!」




