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善と悪

 亜門はレガシーを用済みだというように捨てた。

 二人は目の前の敵だけを見据える。

「テメエの復讐ために大勢を巻き込みやがって!!」

 海田は重力魔術で速度及び威力を上乗せする。

 それは壱に敗れてから自分で編み出した魔術使用法。

 但し、身体にはそれなりの負担がかかってしまう。

 亜門はその全ての攻撃をかわし、いなし、衝撃魔術で海田を追い詰める。

 海田は見えざる攻撃を己の魔力感知能力だけでかわしていく。

 そんな所業が出来る人間は世界広しと言えど、数十人ほどしか居ないだろう。

 天才。

 まさしく、天才だ。

 亜門は、血反吐を吐く努力で組織のトップへと登りつめた。

 しかし、海田は違う。

 生まれた瞬間に才能があり、息を吸うように力を手に入れ続けてきた。

 確かに、喧嘩や荒事に巻き込まれるなどして実力を手に入れた部分はあったのだろう。

 けれども、その最初の一回の喧嘩に勝てたのはなぜだ?

「才能と偽善……ッ!」

 吐き捨てるように言う。

 まさしく唾棄するべき対象だとでも言うように。

「右手の魔力を……集中!!」

 海田は右手の魔力を集中させている。

 莫大なほどの魔力。

 さっきまで魔力を吸い続けられていたの言うのにこの輝き。

 天才。

 ヒーロー。

 右手を振るう。

 亜門が放つ衝撃を貫き、亜門の腹部へと一直線に輝きと共に海田の体重と重力の乗った一撃が放たれる。

 しかし。

 ポン、と小さな爆発音。

 けれどもそれは大きな威力を生む。

「う、ぎゃあああああああ!!」

 ヒロインの声に――レガシーの声に海田の手が、止まった。

「本当に、吐き気がするっ!!」

 海田の鳩尾へと拳を一閃する。

「が、はっ!?」

 海田は身体を折り、唾液を撒き散らした。

 そして、身体から空気を爆発させたかのような爆音がなった。

「あ……っ!?」

 音の発信源は海田の鳩尾。

 コレが、亜門の衝撃魔術。

 触れた場所全てに好きなタイミングで衝撃を与えることの出来る魔術。

 頭を触れる。

 腕を触れる。

 肩を触れる。

 海田は思い切り、何か危険を察したのか後ろへと飛んだ。

 しかし、もう遅い。

 逃れられない。

 爆音が続けざまに鳴る。

「京ぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 レガシーが叫ぶ。

 さきほどの衝撃でどれほどのダメージを受けたかわからないのに、ただ海田の心配だけをして叫ぶ。

 その時、周囲が轟音で震えた。

 衝撃魔術を周囲に無差別に放ったのだ。

「きゃあああああああああああ!!?」

「が、あああああああああああ!!」

 二人が、そして意識を失い天井へと突き刺さっていた夜見までもが転げ、甚大なダメージを受ける。

「苛立って、仕方がねえんだ……表の世界はよぉ。何が善だ? 何が正義だ? ふざけるんじゃねえ。俺は全てを壊す!」

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