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フレアと本

「よう」

「こんにちは」

 フレアのテーブルへつき、挨拶を交わす。

 壱は特に表情は変化させずに、クレアは満面の笑みだ。

「私達は敵な筈だけど」

 フレアは氷のような冷たさで言う。

「まあ、そうなんだけどさ」

 友達が居ないのか? と思うが壱だって独りで食堂で飯を食べるくらいある。

 だけど相手は女の子だ。

 女の子と言えば、周りの目を男子以上に気にする生き物だと、山内から聞いたのだが、そんなモノでもないのだろうか? まあフレアがそういうタイプでないだけかもしれないが。

「女子友達はキツイです」とたまに愚痴ってきた川内を思い出す。

 川内さんは独り飯を許してくれないと嘆いていたが、その集団が異質だっただけなのだろうか?

「で? 何の用?」

 フレアはまたしてもぶすっとした態度で一言。

「いやー何で独りで食ってんのかなあーと」

 あくまで気軽な感じで聞いてみる。

 すると、フレアはカレーパンを齧り表情を変えずに言った。

「私は友達居ないって聞いてないの?」

「ああ、そうなんだ」

 と、壱は頷く。

 頷くが、正直どうしようもない。

 そもそも、気になって声をかけただけで、特にその後の展開は考えていなかったのだ。

「ああ。そうだカレーパンって好き?」

 フレアはカレーパンを齧りながら横目で壱を見る。

「ん? まあ好きだけど」

 質問の意図が分からないままにそう答える。

「じゃあ上げる」

 ぽいっと食べかけのカレーパンを渡された。

 どうしろと?


ЖЖЖЖЖ


「ふへへへへへ……」

 フレアは自宅で微かな喜びに浸っていた。

 部屋の本棚には『友達の作り方百選』だとか『知人以上になるには』だとかが二割――つまり二十三冊――埋まっていた。

 ベッドで枕に顔を沈めたりしてみる。

 本でよく書かれている特に気負いのしないプレゼント(カレーパン)も上げた。

 これはもしかしたらもしかしちゃうのだろうか?

 フレアがこの学校に来たのが、二ヶ月ほど前――つまりはグループがもう固まりつつある頃であった。

 固まりつつある、ということは皆、それの継続に力を注ぎ込んでいるということであり、そして自分自身の対人関係の悪さにより(コレが大半の理由だと思う)友達は皆無。

 更にはクラス内でトップの魔術の資質と成績をとってしまったので『才能ある嫌な女』で定着してしまった。

 因みに遅れた理由は、慣れない日本の気候にずっとダウンしてたからだ。

 しかし!

 転校生が来てくれた。

 これはまたとないチャンスだ。

 向こうから声をかけてくれたのだし、多少なりとも友達になってくれる気はあるはずだ……多分。

 だけど、何を喋ろう?

 本を開けて読み、趣味を訊くのを忘れたことを思い出す。

 だけど、外国文学を読むのが趣味の自分と合う人ではなかったと思う。

 というか、そんな高校生は存在するのだろうか?

「それ以外に趣味ってないし……」

 本を視線で貫通させるくらいに真剣に読む。

 だってもうこれが最後のチャンスなのだ。

 会った瞬間、頭が真っ白になって喋れなくなるのはもう二度と避けたい。

 というか、これのせいで友達が出来なかったことは明白なのだ。

『「ねえねえ○○さんの趣味って何?」

「ボクの趣味は読書かなー」

「好きな作者とかは?」

「伊坂幸太郎かなあ」

「あ、私もその人の本を読もうかと思ってるんです」

「へーじゃあ今度本を持ってきてあげるよ」』

 こんなに上手く行く訳ないでしょ、とそう思うが多少距離は縮むかもしれない。

 でも、明日は決闘だ。

「私が勝って趣味を聞くの? あ、別にその時でなくてもいいのか……」

 あれ? 倉敷は辻や鞍馬などが居て話しかけられない。

 じゃあ、やっぱり放課後?

 グルグルと思考の渦に囚われ、思考が熱を帯びてくる。

「倉敷の隣に女子が居たけど制服じゃなかったし……明日はこないだろうな……」

 今日は眠れない夜になりそうだった。

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