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暗闇の中で

 倉敷壱は飛ばされた時の体勢のまま――つまりは寝転んだまま周りを見渡そうとするが、暗闇らしく視界は黒で覆われていた。

「くっそー、魔力も回復しきってねえし……誰が、魔力手に入れたかしんねーけどかなりヤベェな」

 地面に手をつき、立ち上がろうとする。

 ふにょり、変な感覚が右手を捕まえた。

「あー」

 分かる。

 麗那や、綾瀬と同じ柔らかさ――もとい、少し固めではあるがしかし間違いなくこれは。

「いつまで、私の胸を触ってるつもり?」

「ごめん、なさい……ぶらばああああああ!!?」

 何か思いっきり衝撃が腹へと駆け抜けた。

 自動防御が働かない。

「まさか、これは何かの罠か……っ!?」

 もしくは壱の能力を無効化させて勝とうという魂胆なのか。

「京にだって触らせたことないのに!!」

「あーまだ、毒牙にかかってなかったのか」

「そうよ」

 女の子が頷く。

「あー。とりあえず、どうする? 別行動か、共同で行動するか。ぶっちゃけ、どっちでも危険だと思うんだけどな。俺は狙われてるし。かと言って君が狙われない根拠もない。もしかしたら、延々この中で放し飼いする可能性だってある」

 とりあえず、今考えたことを考えなしに言い放ってみる。

 おそらくは間違ったことを言っていない筈だ。

 というか、ぶっちゃけこの女の子にはぜひともついて来てほしい。

 でないと、心配で仕方がなくなるだろう。

 二人っきりじゃなく、京が居れば放って置いてすぐさま飛んでいくのだが……

「一緒に行くわよ。その代わり、変なことしないでよね」

「誰がするんだよ……仲間に殺される上に、京に何されるか……はあ」

 壱は女の子の手を握って歩き出す。

「ちょ、ちょっといきなり何手え、握ってんのよ!?」

「いや、周り暗闇だし……魔力に反応して吸収する空間でもあるみたいだからな。俺の能力を暗闇光らせることにも使えねえし……我慢って奴だ我慢できる女の子が好きだって海田も言ってたしなあ」

 びくりと、女の子の肩が激しく揺れた気がした。

「本当でしょうね?」

 乗ってきた!? 余りにも扱いやすい女の子に壱は驚愕と苦笑の狭間で溺れかける。

「お、おう。言ってた言ってた。男の子っていうのはいつだって昭和チックな女の子像を追いかけてるおんなんだよ。具体的に言うとフネさんチックな!」

「ババアじゃない!?」

「うるせえな。人間誰しもジジイかババアになるんだよ。外見なんざ、役にたたねえんだよ。だったら最初から機能で選んだほうがいいに決まってんだろ……って海田さんが言ってましたぁ」

「はっ、だから私たちの誰も選ばないの……っ!? もしくはハーレム作ろうとしないの!? どうやったら落とせるの!?」

「あーうんそうだねー。君たちが家事できて、気配りできて一歩引く感じの女の子になればいけるかもねー」

 適当に答えておく。

 うん、多分いけるんじゃない?

 海田も、ここは俺に感謝の意を示すのではないだろうか。

 そして、この女の子はエンディングしだいでは俺に感謝の意を――もしくは殺意を示すであろう。

 大人しくついて来て貰うための代償がでかすぎた気がするが、気のせいだろう。

「うん、気のせい気のせい」

「ちょっと……手が汗ばんできてるんだけど?」

「あ、すみません……」

 凄まじく不安な感じで暗闇を突き進んでいく。

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