自己暗示
「ほーらな。こうなったろ? コイツらはこうだからなー。プレイって言っても差し支えねえよこんなの」
「相変わらず品がありませんね」
「なー? 俺、アンタの味方になりそうだよ」
「いや、君より壱の方が嬉しんだけどね」
「……お、おう。その通りだけど微妙に心が……」
「ちょっと、速く退いてよ!」
「あ、ちょっと待て……脚がもつれて」
そう言いつつ更に絡み合う二人に男二人――壱と遊星――はビルの方へと視線をやる。
「いや、俺らマジ見てねえから。逆に軽蔑してっから」みたいな中学生のような反応だ。
「変態……」
「エッチ!」
女たちは冷たい視線で海田を見やり、怒る。
「はあ」「……」「これだから」
「男三人うるせえぞ!」
◆◆◆◆◆◆◆
ビルへと入り、二つの入口が壱たち――もとい、分母で行けば海田たちの前に立ち塞がっていた。
「じゃあ、俺ら三人コッチから行くから。お前らそっちから行けよ」
「そーだそーだ炭酸ソーダ」
と、遊星とそれに乗っかる壱。
「何で俺らが右なんだよ?」
「うぜえから」「うるせえから」「鬱陶しいからじゃないですか?」
「いつの間に仲良くなってんだよテメエら三人は!!?」
海田は叫ぶ。
「いやークレアは無事みたいだし、仲良くやってもいいからなーって」
「そうそう俺らがココに居る限りは絶対安全みたいだし。今一番鬱陶しいのはギャーギャー騒ぐお前らだからな」
「そうそう。オレらは男二人でストイックに助け出すからお前らはハーレム築きつつ、助ければいいよ。馬鹿騒ぎしつつ「ちょっ、お前ら止めろよー(笑)」とか言いつつビルさ迷ってろよ」
「私もいい加減アナタ達を案内するの嫌なんですよね。鬱陶しくて」
「案内役に鬱陶しがられるって……海田、お前……」
「ちょっと待て壱! 俺のせいじゃないからな!? 明らかに夜見と凛が不機嫌なせいだからね!?」
男三人は海田の鈍感さにイラっとしかたかのように剣呑な雰囲気を出しつつ、壱が言う。
「あ、そう。じゃあいいや」
テメエが夜見を押し倒したからこうなったんだろうが……つーか、凛が嫉妬してるのが目に見えてるっつーの、さっさと二人にゴマすりしてろと言いたいのだが言ったら言ったでハーレムグループに八つ裂きにされそうで怖い。
何か、あんなあからさまな態度でちょっと隠してるみたいだし。
「うわー、すげえ呆れられてるような」
「実際呆れてんだよクソが」
「何で助けに行ってるのに、こうなるんだよ……ッ!!」
「心中お察しします」
ちょっとーあの三人ー海田のこと甘く見てない? ていうか、私たち完全に要らない子扱いされてない? 何て言う雰囲気がハーレムメンバーの中から漂ってきているが、三人はガン無視である。
壱は無駄に味方が居るせいで、ビルごとぶっぱなし、クレアを助けること叶わずにいるところに邪魔が邪魔といちゃつき。
遊星は幼馴染を誘拐された挙句、目の前で「俺はまあこんだけ女が居るんだけどね」的態度で無自覚にいちゃつかれ。
フロイトは海田に敵対し、惜しくも敗れた敵として再戦し、打ち勝つというサクセスストーリーを描いているにも関わらず、海田には一瞬敵として認知されたが、あとは女といちゃつかれ二人には甘く見られ。
三人共イライラが限界値まで溜まっているのであった。
かくいう海田やハーレムメンバーも少しはイライラしているのだが、三人に比べれば天と地の差であろう。
「さっさと行こうぜ。速く千絵を助けなくちゃな」
海田は言いつつ、左の通路を抜ける。
「じゃあ俺たち右行こうぜ」
「右は残念ながら、物置部屋なんかしかありません。左が正解です」
「くっそ! 何でどっちも行けるようにセッティングしてねえんだよ!」
「もう嫌だ。イライラがマックスなんだよ! リア充爆発しろ……って言えるくらいの余力はあるから大丈夫だきっと大丈夫だ」
「ちょっと遊星、マジでお前大丈夫か? 何か催眠かけてねえ?」
「あ、俺行ける気がするわ」
「マジかよ!? あ、目が逝ってるぞ! あ、でも羨ましい! くっそ、俺にもかけてくれ!」
「うふふふふふー海田くーん! 一緒に行こうよー!」
スキップで海田へと近づく遊星。
何かもう駄目な方向へと行っている気しかしない。
その瞬間、海田の目の前に巨大な体躯の男が静かに現れた。
岩のように重そうな口を開き、衝撃の事実を語る。
「ウチのボスからの伝言だ。『誘拐したの千絵じゃなくて綾瀬だったわ。名前間違った』らしい」
全員が一斉にズッコケた。
「「流石ハーレム王子だよ!!」」
遊星と壱のツッコミが廊下内で虚しく響いた。




