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 クレアの瞳が紅く輝いた。

 血のように真っ赤に染まっている、赤。

 この世のものとは思えない感情が瞳に宿っているのにこの場に居る全員が気づいた。

 そう、例えるならば『悪』

 純粋なまでのマイナスがそこには存在していた。

 躊躇いなく全てを殺し、全てを奪い、全てを喰らう『純粋悪』

 普段の少女とは対極にある存在に、壱は動けなかった。

 その瞳から発せられる感情にこの場に居る全員が動けない。

「何、だよ、アレは……」

 壱は己の無力さを噛み締める。

 何もできない。

 時雨について行くクレアを、繋ぎ止めることも。

 そして、今。

 力を失い、少女は理性を失っている。

 何ができる?

「コイツを殺せええええええええええええええ!!!」

 大和の叫びに意識を取り戻したS級魔術師たちが唐突に壱の真上を飛び、クレアに向かった。

 その瞳は壱に嫌というほど、突き付けてくる。

『正悪関係なく人間であるならば排除すべき敵』

「クレア……」

 魔術師たちはクレアに触れることさえできずに、氷で串刺しにされた。

 いや、それは氷の槍が突然現れたように壱には見えた。

 事実、現れたのかもしれない。

 壱は力がなければ、理解することすらままならないのだ。

「クレア!」

 壱は無意識の内に走り出す。

 大和と、女はいつの間にか瓦礫に寝転がっていた。

 生きているのは、死んでいるのか。それすらも考えずに壱はクレアとの距離を縮める。

「元に、戻れよおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 その瞬間、当たりが光に満ちた。

 一瞬、壱は夢を見る。

 その夢は、即座に破られた。

「正気に戻し、与えられた平和を取り戻す光――ソル」

 唱えられた詠唱は人間らしさにどこか欠けていて。

 壱は一瞬だけ『奇跡』だの『思う気持ち』だので、光が満ちたんだという勘違いを正すための声にしか聞こえなかった。

 クレアを助けたのは、結局はこの光で、この詠唱の『持ち主』

 俺じゃ、ない。

 それだけが分かり、そしてクレアが助かったことに笑みを浮かべて意識を手放した。

 自虐と歓喜と、悔しさが混じった笑みは溶けるように消える。

 光の持ち主は悔しげにこの惨状を眺めた。

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