魔力
壱は爆撃地帯もかくやというほどの瓦礫の山を押しのけながら、必死で地下への入口を探す。
「どこだよちくしょ……」
全校生徒の魔力を体内に入れ込み、使う。
こんなことを出来るのは壱の魔力容量が異常に大きかったからだ。
しかし、魔力の質が全く違うのものを入り込む場合、扱う事事態に多大な副作用が出る。
戦争時代はそれを使って死んだ者も多数居たらしい。
壱の場合、『体力の大幅低下及び、能力の一時的消去』
息が荒くなり、焦りが身を焦がす。
「死んでりしてねえだろうなアイツ……!?」
手を切り、腰を痛めながらも瓦礫を退けて行く。
「記憶の方は死んでるかもなあ」
真後ろから、声が聞こえた。
思い出したくもない声だ。
「結構痛かったぜクソッタレが」
壱の心臓が焦ったように不規則な鼓動を刻む。
「オイオイ、アレ喰らって生きてるってやばくね?」
「舐めんなよ」
背中から、突き刺すような鋭い声が聞こえる。
時間稼ぎをするために、ゆっくりと振り向く。
能力を使用できないと分かった時点で、瞬殺される。
「は……?」
背中。
時雨の外見が一新されていた。
瞳の黒が、真紅のような赤に。
髪は白く、雪のような純白へと。
そして一番の変化は背中から突き抜けた空のような蒼の翼。
「何、だソレ……?」
「あ?」
時雨は何も分かっていないような口ぶりで、疑問の声を出す。
「わかってねえのか……?」
「何いってんのか理解できねえが、死んでもらうぜええええええええええええ!!!」
翼が振るわれる。
壱には視認できないどころか、意識すら出来ない速度で進む。
壱の上半身と下半身を真っ二つに割る一撃。
壱の視界が白に塗り潰される。
『あなたは何を望む?』
声しか聞こえない空間。
「何を、望む?」
何をって何を?
漠然としすぎて分からない。
世界平和?
金?
それとも……?
『あなたが一番望むものだよ』
「……笑顔?」
『笑顔って?』
「クレアの笑顔がもう一回見たいかな」
『……その程度、なわけ?』
何か一拍の間に様々な嘲笑が入った気がする。
「あーそうですそうです!! そうだけどとにかくそれを取り戻すくらいの――力が欲しい! つーか、アイツが一生無事に暮らせるくらいの力が欲しい!」
誰にも奪われないくらいに。
誰も手出しできないくらいに。
世界で一番強く。
「誰よりも強い力が欲しい!! もう泣かせないくらい、絶対的に強くなりたい!!!」
『いいね。その感じ。前とは違う』
にやりと笑った気がした。