魔力操作
「来てくれると思ってたよ」
綾瀬が、やつれた笑みを浮かべて言う。
「アンタは……っ!?」
海が驚愕の表情で引き攣った声を出す。
「一応、礼は言っておく」
と、憮然とした表情で早瀬。
「お前、マジで主人公染みた登場しやがって……」
顔を背けて、海田が恥ずかしそうに言う。
「来たんですか……?」
と、愛利。
「あー色々聞きたい事が満載だな。海が来てるし、綾瀬たちも何でか、ココに来てるって言うし……お前ら俺が来なきゃマジで死んでたぞ?」
「信じてたから」
寂しげに微笑んで綾瀬は言った。
壱はそれが妙に気になったが、今はそれどころではない。
「おい、クレアは無事なんだろうな?」
時雨は壱を観察するように見る。
「ああ、無事だ。まあ、命の方はな」
「命の方は……?」
眉を潜めて壱は問う。
「かかって来いよ。力づくで俺に喋らせてみな」
「ああ、どっちにしろテメエは、綾瀬たちを傷つけた罪とクレアの為にぶちのめすんだからな」
「はっ。ヒロインの為にってか? 自己犠牲も大概にしろよテメエは」
壱は笑って両腕を上げる。
「自己犠牲はもう止めだ。アイツを苦しめる美学なんざいらねえよ。だけど、今は救える力がある」
両腕を下げた。
途端、後ろの五人が消え去った。
「粒子でどこか遠くへ飛ばしたか」
「ああ、ココから一〇キロほど遠くに飛ばした。俺とお前の戦いで殺せねえ所までな。で、クレアはどこに居る?」
「ココの地下だ。まあS級魔術師一〇人で結界を築いてるから俺たちの戦いで壊れることはねえよ……半壊はするかもしんねえがな」
瞬時、壱と時雨は消えた。
と。
壱がいきなり、転んだ。
「ふべるべ!?」
壁を叩き割り、上空に出た。
時雨がは? と言った唖然としている表情が見える。
高速で回転し、時雨の居るビルが回って見えた。
超高層ビルで、高さは千八百二十八メートル。
流石は世界最高層のビルである。
「うわあああああああああああああああああ!!? 目が、目が回るううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!!?」
粒子を展開しようとするが、ガチリと何か異音がなった。
粒子が勝手に飛び出し、壱の尻を蹴り上げる。
一〇キロ先に居た綾瀬たちを叫びながら転がり、おばあちゃんおじいちゃんが暮らす一軒家に突撃、更に五キロ先にある山を崩してようやく壱は止まった。
「く、そおお……やっぱり全校生徒の魔力を俺の身体の中に入れるって作戦は失敗か……?」
口の中に入った砂をぺっと吐き出す。
海田の危険や、神風たち、海田ハーレム要員の親衛隊やファンの皆さんのお陰で全校生徒が一〇分もしない内に全て集まり沙耶の魔力操作で壱の体内に全ての元気を分けてもらったはいいものの――使い方がさっぱり分からない。
「俺、魔力なんて使わねえしなあ……」
粒子に魔力を練り込み、更なる強化で敵を打ち倒す。
結構いい案だと思ったんだが、いかんせん使い方がわからない。




