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激戦――または勘違い

 海田が病室を抜け出すと、思う。

(あれー? いつも俺って注目されてたんだけどなー)

 と。

「で? 海田くんも飛ばして欲しいの?」

 理事長兼Sクラスの先生の沙耶の声だ。

 病室側の壁に背中を預けていた。

「沙耶があの二人を飛ばしたのか?」

「まあねー」

 事も無げに言う沙耶に海田は苛立つ。

「俺たちが勝てる相手じゃないくらいわかんだろ! 何で飛ばした!?」

「海田くんってさー確か相手が誰であろうと、戦う熱血キャラじゃなかったっけ? もしかして、圧倒的な差でびびっちゃったのかな?」

「……っ!?」

「まあびびるのも分かるよ。あんなに強かった壱がやられちゃったんだし」

「俺も、飛ばせ」

 海田は言う。

 びびっているのではない。

 死ぬのは怖くない。

 ただ、犬死はゴメンだ。

 海田の姿が掻き消えた。


◆◆◆◆◆◆◆


「ったく。次から次へとなんだよ……」

 雨宮時雨は溜息を吐く。

 壱好きな女子達、よくわからない女子一名、そして、いきなり現れた海田京。

 実力がなさ過ぎて相手にする気さえ起らない。

 かったる過ぎる。

 相手にするのを止めようか?

「よくも壱を――!」

 綾瀬が激昂する。

「壱なんて関係ない。貴様は殺す」

 海田をボコボコにされたからなのか、殺意剥き出しで睨みつけてくるが、時雨はその視線を軽くいなす。

 海田は歯噛みし、時雨を睨む。

「やるしかねえのか……」

 海田が音速の五倍の速さで詰め寄った。

 しかし、時雨にとってそれはカタツムリが頑張って進んでいるようなものにしか見えない。

 同時に真下から時雨の周りから剣が幾本も現れ、喉元へ突き進む。

 綾瀬が炎を両手に集める。

 海田は時雨をかく乱するための作戦なのか、残像で幾人もの分身を作っていた。

 あまりのピエロぶりに時雨は鼻で笑ってしまう。

 まるで、わざと負けてあげたお父さんに対して粋がる子供のよう。

 しかし、海田はそんな歳の子供ではない。

 可愛さもなければ、暖かな笑みが漏れる訳でもない。

 ただただ、滑稽だ。

 剣は時雨の喉元へと当たり、床へ転がった。

 海田が生んだ雷が時雨へ駆ける。

 相当な強度の床が弾け飛びながら、時雨へと当たった。

「おおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 更に吼えながら、拳を時雨の腹部へと当てようとするが、身を少し捻り避ける。

 完璧なカウンター。海田の額に掌底を当てようとする。

 見えてはいても、反応出来ない筈だ。

 それほどに完璧なカウンターだったのだから。

 しかし、それは思わぬ方法で破られた。

「海田あああああああああああああ!!」

 綾瀬が叫び、海田と時雨の間に土の壁を生成した。

 掌底は土の壁を突き抜けるが、いくらか威力は軽減され、海田は掌で拳を受け止める事に成功した。

「何……?」

 時雨が、この戦いで初めて驚く。

「ありがとな綾瀬!」

 海田が叫び返し、時雨の拳を捻って傷みを与えようとするが壁から拳を抜かれ、失敗に終わる。

「綾瀬っつったか? お前、見えてたのか? 今の攻撃が?」

 時雨は魔術を発動し、土の壁を消す。

 綾瀬が驚き、時雨を見る。

「ええ。まあ……」

「俺の拳にタイミングを合わせて防御……ふっ。この中じゃあ一番強いかもしれねえな」

 時雨は薄く笑む。

 時雨の読みが外れた。

 海田京が一番強い者だと思ったが、それは間違いかもしれない。

 時雨は全員の魔力、天使の総量、強さを測る。

 読み違いはない。

 海田は皆より、格が違ほどに強い。

 ただ、時雨とどちらがよく戦え、反応できるかという点に置いては綾瀬が一枚上手かもしれない。

 今の拳の速度はおよそ、秒速五キロだ。

 音速の一八倍。

 海田であれば反応し、防御魔術を使うことも可能だろうが、今さっきので海田より弱いことは分かっている。

 それに、海田より強いうんぬんの前に身体能力向上の魔術を使っている気配すら見えない。

(深く見させてもらうか……)

 綾瀬が投げつけてきた炎、海田がドーピングの自己魔術――紫電を全てを強化し、飛ばす雷撃、木村が剣の切っ先から噴出す水流。

(そういえば、さっき海田が綾瀬と――木村はじめ……だっけ? を集めて作戦会議を開いてたな)

 時雨は興味なさげに魔術を見つめ、掻き消した。

「な……っ!?」「へ!?」「何だと!?」

 三者三様の驚きを示し、時雨は綾瀬に意識を集中させる。

 天使を移動させ、綾瀬が使っている天使と接続させてもらう。

 その人の物となった天使――ケイトスなら簡単には接続できないが、空間を漂うフリーの天使相手なら接続させ、どのような魔術を遣っているのか閲覧するのも、魔術を乗っ取るのも可能なのだ。

 七大魔術師なら、大体が出来る小技・・であり、海田の大技・・だ。

 ちなみに、さっきから魔術を消し去っているが、皆この小技を使っている。

 たった、百分の一ミリ秒後に意識を散らせた。

「なるほど、空間把握魔術か……」

「何で分かるの……!?」

 綾瀬の驚愕した声が響く。

「にしても、精度は抜群。分子レベルでの把握が可能とは……修練を積めば、七大魔術師も夢じゃねえぜ?」

 綾瀬の表情にほんの少しの怪訝さが浮かんでいた。

 因みに時雨が魔術又は経験で読み取った戦闘力はこうなります。


 愛利 三千二百

 沙耶 三千

 海田京(通常) 二千五百

 神風麗那 二千

 木村早瀬 千八十

 綾瀬 五百二〇


 因みに一般人(魔術なし)は「戦闘能力五か……ゴミめ」です。


 壱たちは次で発表です!

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