参戦
倉敷壱は包帯型の魔具を全身に巻かれ、ベッドで寝ていた。
助かるかどうかはわからない。
あとは壱の自然治癒力に任せるしかないと言って医師は去っていった。
病室には周りには幼馴染や友達五人、壱に片思い中の西勉(男の子)、そして、かつての敵が居る。
誰しもが、壱の回復を待っていた。
友達である、鞍馬遊星は思う。
敷が負けるなんて思わなかったと。
目を醒まして、あの少女の元へ行こうと、行くまいと全力で敷の応援をしようと心に決める。
クリスは思う。
壱と理事長、そしてこの病室に居る全員でかかれば勝てるのではないか、と。
フレアは思う。
目を醒ませばあの少女の下へ行ってしまうのだろうか、と。
なら、もう少し眠っていて欲しいと。
壱が死んで、少女も死ぬのなら――嫌な気分だが、少女だけ死ねばいい。
あの少女だってそれを望んでいる筈だ。
あの少女も。
壱を――。
かつての敵対者――海田京はただ、現実の厳しさと痛感する。
壱の有象無象のハーレム要員たち(神風麗那、文、ジョリー、フライン、キセヤ・フラット、西勉)は思う。
ただ、壱が生きて欲しい。
生きて、笑って学生生活を送って欲しいと。
もう、事件には関わって欲しくない。
幼馴染――綾瀬は思う。
目を醒ませば、あの少女の下へ行ってしまうのだろうか、と。
何が、私に出来る事は?
壱のために。
あの少女の命のために。
私が、出来る事――。
「クレア……」
壱の唇から、声が漏れた。
その一言で室内が無言のどよめきが起こった。
ハーレム要員たちは咄嗟に壱の元へと駆け寄り、手を握ったり、話しかけたりする。
「クレア、か……」
海田はただ、一言そう呟く。
海田と壱はおそらく同じ人種だ。
望まなくても争いに巻き込まれる。
ただし壱と海田は凄まじく違う。
海田は絶対に負けられない戦いで――本当の敵にここまでの負け方はしなかった。
「俺が行っても、殺されるよな……」
悪魔と戦った時に覚醒したことがあるが、あの時の力を使っても勝てるかどうか……。
ふと海田は気付いた。
綾瀬と木村が居ない。
冷や汗が流れる。
(今さっき俺は何て考えた? 『俺と壱は争いに巻き込まれる人種』って考えた、んだよな……?)
ぽりぽりと後頭部を掻く。
「仕方ねえな。木村も居ってるんじゃあ、俺が行かねえ訳にはいかねえじゃねえか」
はあ、やっぱり不幸だと溜息を吐きながらドアを開けた。