風水
巨大な人一人は入れそうな試験管に管が取り付けられていた。
その横には七大魔術師の一人――『精神操作』の魔術を持った風水恋歌が居る。
胸は盛り上がり、くびれもある。
スタイル抜群の女性だ。
クレアはそれを無視して、管が接続されている機械を見る。
一メートル四方の立方体で出来た機械だった。
よく分からないボタンやレバーが幾つか付いている。
コレを壊せば、助かるだろうか?
壱さんは私を渡した事を気に病むことなどないのだろうか?
壱さんの元に返れるだろうか?
「やっほー時雨。ホントに天司なんだその子?」
軽いノリで声を掛けてきた恋歌にクレアはふと冷静さを取り戻す。
(壱さんを倒した時雨さ……の手を逃れて機械なんて壊せない)
「ああ、とっととコイツの中の力を取り出してくれ」
とん、とクレアの背中を押すと恋歌の魔術が発動した。
クレアの瞳の彩度が自然な速度で落ちていく。
「また漫画チックだなコレ……」
「ふふっ。私の趣味だけどね」
クレアはふらふらと試験管の中へと埋め込まれるように入って行った。
魔力で満たされた試験管は恋歌の精神操作を力強くする為の装置だ。
「ふわーもう無理。結構、精神力強いわこの子」
恋歌は肩で息をするように言う。
「それじゃあ俺は防波堤でもしてくる」
魔力で硬度を増した鉱石――マテリアル――で作られたドアを開け、室内から出て行った。
恋歌は笑う。
「そんなに私と居るのが、嫌なのかなー? それとも――」
クレアは試験管の効果でグッタリとしていた。
「この子のところに居るのが嫌なのかな?」
どちらにせよクレアの記憶を探れば力の在り処が分かるはずだ。
クレアの瞳が一瞬、真紅に輝いた。
◆◆◆◆◆◆◆
そして、海もまた大和製鉄へと進んでいた。
海の索敵範囲は五十キロという魔術師としては最高ランクの広範囲だ。
倉敷壱と名乗る高校生ほどの男が悪魔憑きを倒した。
それから悪魔を毎日捜し続けた結果、さっきとうとう悪魔を見つけた。
海の力でも恐らく消せるほどの力である。
「待ってなさい! 悪魔!」
海は音速を超える速度で突き進んでいく。
海さんまさかの参戦――ッ!!
あの説明で思い出せなかった読者の皆様は第十七部辺りへ(別に思い出さなくても支障はないです)。