表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/116

最終決戦(仮)

 クレアは壱のことを一心不乱に祈っていた。

 雨宮時雨はただ、無言でクレアの前を歩く。

 クレアの決意を、壱への好意をどういう意味にしろ信じていたのだ。

 自動ドアを潜り、無人の室内を歩く。

 シン、とした静寂に靴音が紛れ込む。

「ココには誰も居ない。今からお前を連れて、極秘の実験をするからだ」

 エレベーターを待ちながら、時雨はそう言う。

 クレアは特に返事も返さず、瞳を瞑る。

 ただ、神様へと祈る。

 大天使様の助けを信じて、ただ、壱の為に祈った。

 それが雨宮時雨を苛立たせる。

 昔、あの少女もこういう気持ちだったのかと思わされる――。

 あの少年――倉敷壱とクレアは全く同じだった。

「天界ってのはどんな所だ?」

「……」

「無視かよ……」

 突如、後ろに何かが現れた。

 それは、黒い影のような物を伸ばし、クレアを連れ去ろうとする。

 しかし。

 時雨にはソレは止まって見えた。

 片手で軽く振り払う。

 ただ、それだけの所作で影は引き千切れ、後ろに現れた人物――愛利――は吹き飛んだ。

「……ッ!?」

 更に時雨はそのまま片手で空気を切り裂いた。

 腕力ではなく、魔術を使う。

 クレアの瞼がほんの少し持ち上がるのを尻目に見る。

 愛利が現れてからおよそ、一ミリ秒というところだ。

 裂けた空気が衝撃波へと変わり、波状に圧力を掛ける。

 倉敷壱戦で愛利の魔術の限界は知れた。

 防御膜を裂き、身体全体に思い衝撃が掛かるはずだ。

 時雨の読みどおり、衝撃波は愛利を襲い、青色に輝く防御膜を震わし、破壊した。

「なっ!?」

 信じられないという顔をしたまま、衝撃波を受け、未だ宙に浮いている愛利を更に吹き飛ばす結果となった。

 クレアの瞳が完全に開く。

「第一式――」

 ――幕、と心の中で無意識に唱えてしまう。

 愛利を除いた周りの景色を映し出す薄い幕が、クレアの周りを包み込む。

 幼い女の子に世界の辛辣さを、邪悪さを見せない為の幕。

(俺が最初に習得した初めての魔術――)

 七大魔術師の一人――愛利はいとも容易く時雨に敗れ去った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ