闖入者
倉敷壱が雨宮時雨と闘い始めて三〇秒後の事だった。
クレアは懸命に走り、運の悪い事に理事長の沙耶と神風麗那たち、そして京たちに見つかってしまう――二〇秒前の出来事。
「壱さんはどうしたら私の方に振り向いてくれるのかしら?」
キセヤ・フラットが言う。
「告白すればいいんじゃないかな?」
助言を送る憂鬱な表情をした神風にキセヤとフライン・カネット、綾風文、ジョリーは首を振る。
『絶対にヤダ』
そこで、沙耶が後ろから声をかけてきた。
「壱に乗る為の相談?」
「……ひ、卑猥な冗談は止めて下さい!!」
とフラインは顔を真っ赤にして怒鳴る。
「あーはいはい。にしても京が可哀想だね~。いきなり友だちゴッソリ減っちゃってさ。今だから言うけど、すっごく落ち込んでたよ京は」
沙耶の言葉に皆うっ、と喉に何かが詰まったような顔をする。
「あれ? お前ら久しぶりだな!」
と海田京が元気よく声をかける。
皆は一斉に振り返り、今までならあり得ない愛想笑いを向けた。
木村早瀬と長瀬、そして一ファンに過ぎなかったレインが海田の取り巻きへとなっていた。
「(私達ってあんな感じだったのかな?)」
「(うん。そうだったんだろーなー。何か嫌だな、あの時の自分をぶっ飛ばしたい)」
「ていうか、今はそれ以下だと思うんだけど……」
神風麗那とジョリーとのセリフに沙耶が冷静な呟きを残す。
と。
クレアが三つ巴の集団を横切った。
「あ……」
と、神風。
「アイツ……」
と京
「あの子は……?」
沙耶。
そして、クレアは焦燥感に狩られたような顔で走り去っていく。
二つの集団と一人は顔を見合わせ、追いかけた。
また、壱の事だと分かったのだ。
◆◆◆◆◆◆◆
壱は攻撃を避け続けるしか方法がなかった。
壁に張り付き、拳を身体を捻り、避ける。
「くッ!?」
粒子を槍に五〇本生成し、飛ばした。
秒速五万キロメートルの速さで飛ぶ槍は逃げ場のない攻撃だ。
「行けえええええええええ!!」
能力を発動する間もなく重体にする。
「オイオイ」
時雨は踊るように五〇本もの槍を避けた。
槍と槍の極々小さな隙間に身体を滑り込ませ、避けたのだ。
「お前は、俺を殺す気がないだろ?」
壱は唇を噛み締める。
「急所の部分にだけ、槍が来なかった。殺す気がないってことだろ?」
「うっせーよクズ」
壱は地面に突き刺さり、盛り上げかかった床は滑らかに動き、元に戻った。
愛利の魔術だろう。
粒子を右腕に溜める。
「らあああああああああああああああッ!!」
近づき、拳を繰り出す。
顔面を狙った拳は突抜け、全く攻撃にならない。
壱の最高速度の攻撃が余裕で避けられた。
「ああああああああああッッ!!」
そのまま、拳を連続で繰り出す。
音速よりも光速に近い攻撃を一億発繰り出すが、無意味だった。
「意味ねえよ」
粒子の防御を擦り抜けた拳が壱の頬を貫いた。
「あ……!?」
衝撃で身体が吹き飛び、壁にに叩き付けられる。
そこで、クレアと海田たちが扉を開け放った。
「来るなああああああああ!!!」
壱の叫びは飛び込んできた時雨の強烈な蹴りで消え失せた。




