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存在確率

 クレアを教室に置いきた。

 クレアの呼び止めようとする唇の動きは見なかった事にした。

 壱は死闘を演じる室内へと躍り出て、時雨の顔面を蹴り飛ばす。

「が……!?」

 時雨はたたらを踏んで、数歩退った。

「何で戻ってきたんですか!?」

 悲鳴のような声で言う愛利。

「何でって? 愛利さんが時雨に勝てるとは到底思えないからだよ」

「な!? 勝てます! こんな人なんかに負ける筈がありません!!」

 声を荒げて主張するが、その表情から実力差は分かっているようだった。

「愛利さんは余波を防御しててください。まだ、俺の方が闘えます」

 説明だけすると、壱は瞬時で時雨の懐へ飛び込んだ。

 時雨の表情が満足気に歪む。

 拳を一気に五千発撃ち出す。

 空気が歪み、膨張する感覚が拳に伝わり、時雨の腕の感触で上塗りされていく。

 全て、防御された。

「やっぱりかあ……」

 衝撃波は部屋中を駆け抜けるが、愛利の魔術のお陰で崩壊は免れた。

(よし、シッカリ出来るみたいだな)

 試しているみたいで嫌だが、試さない事には周りに気を遣って攻撃できない。

「……確実に強くなってるなお前……」

 時雨は薄く笑い、顎に手を付けた。

「やっぱりアレか。普段実力をださねえ分、潜在能力がえげつない事になってるって事か……」

「そうみたいだな。お前の部下なんだろうけど、陣内だったっけ? 忘れたけど、とりあえず、ソイツに勝った時、能力が上がってたし」

「俺にも勝てるって?」

 時雨は獰猛な笑みを浮かべる。

「誰もそんな事言ってねえよ。けどさ。お前がクレアを天司って理由だけで狙うんなら負けるわけにはいかねえな」

 そのセリフを聞いた時雨は思わずと言った調子で笑った。

「あ? 何かおかしいのかよ?」

「お前さあ、兵器開発してる会社が天司って理由だけで狙うと思うか?」

「どういうことだよ?」

 訝しげに壱は訊いた。

 時雨は質問に答えるだけという意識が含まれる声音が空気を叩く。

「アイツには兵器としての素質があるってことだ」

「兵器……? アイツの能力のことをいってんのか?」

「違う。あの能力も魅力的だけどな。インパクトに欠ける」

 時雨は首を横に振る。

 壱は意識せず、心臓が高鳴っているのを感じていた。

 アイツが俺に話していない能力でもあるのか?

「それ以外の能力なんてあんのかよ……?」

「力は天司の身体の中に隠れてる。俺だってどんな能力なのかはしんねえけど、途轍もないって話だ」

「誰から聞いた?」

 その質問に時雨は首を振るだけだった。

 知らないのだ。

「じゃ、質問タイムは終わったし、どいてくんねえかな? それとも、半殺し決定でいいか?」

「お前がかよ?」

 壱は精一杯挑発をかける。

 成功はしていないだろうが、時雨が飛び込んできた。

 緊張が走る。

 一秒。

 長い長い時間。

 手数で言えば百万手。

 壱は九百六十八発もの攻撃を喰らった。

 敵に喰らわした攻撃はたった一回。

 それも頬を切り裂いただけの弱々しい攻撃だ。

「が、は……?」

 防御の意味がなかった。

 圧倒的な攻撃力は壱の粒子を突き抜け、本体を容赦なく貫いてきた。

 強い。

「強くなったとは言えこの程度か」

「突き抜けた……?」

 確かにこの男は強いが、防御をしたのに無効化されるどころか突き抜けるなどありえない。

 魔術だ。

「愛利の『移動魔術』と同じ原理だ。天使を使役して、身体を半分なくしてんのさ」

 何だよそれ、そう言いながらも、粒子を使い、傷を癒していく。

「『存在確率』みたいなもんだ。コインの裏と表を当てるゲームをする時『表である』のと『表でない』のがあるよな? 俺の存在はソレだ。自分の都合のいいように攻撃を擦り抜けさせたり、当てさせたり出来る」

「は……ふざけやがって」

 勝てる見込みがなくなってきた事に絶望感を感じ、視界が暗くなって来た。

ひっさっしぶっりの更っ新!

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