表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/116

強襲

「先生! 神風さんから聞いたんですけど壱が怪我したって本当なんですか!!?」

 と、綾瀬が血相変えて沙耶に詰め寄る。

 隣にはフレアと遊星、そしてクリスも居た。

「あーまあ、ね。ちょっとケンカしたみたい」

「ケンカ……?」

 信じられないというように綾瀬は呟く。

「何言ってんだ? 先生。アイツがただのケンカで傷つく訳ねーだろ! 何隠してやがる!?」

 掴みかかるように吼える遊星に沙耶は少し逡巡してから言う。

「はあ……別に隠してないけどまあ、そうだね。大和製鉄に狙われちゃってる女の子を助けるために立ち上がったから怪我したっていうのが真相だね」

 大和製鉄!? と四人全員が驚き叫ぶ。

「そんなの一国と戦争起こすレベルなんじゃ……」

 と、フレアが言う。

「でしょうね。七大魔術師も特別社員ってことで居るしね。多分日本の地図が書き換わるレベルで戦うんじゃないかな」

「……そんなの、壱でも勝てないんじゃ」

 綾瀬は心配そうに言う。

「さあどうだろね」

 沙耶はギャンブラーのように笑んだ。


ЖЖЖЖЖ


 カーテンに手をかけようとした瞬間、

「壱さん! 大丈夫ですか!!?」

 クレアがジャッとカーテンを開けて顔を突き出してきた。

「うわお!!?」

 壱は思わず上半身を逸らす。

「大丈夫だけど、お前は……?」

「私も大丈夫です」

 とクレアは心配を減らそうとするような笑みを浮かべた。

 直後。

 クレアの笑みはぐにゃりと崩壊し、クレアは慌てたように無理やりに笑顔をもう一度作り上げた。

 壱はそれが痛々しい。

 もっと感情を出せばいいのに、とさえ思う。

「すみません。私のせいで、壱さんを巻き込んで……護るって初めて会った時から決めてたのに」

 初めて会ったとき? と壱は思い返してみる。

 確かにクレアは「危ないときは私が護りますから!」と言っていた。

 そして、あの時は壱を自分の身も省みず助けてくれた。

「お前は俺のことを助けてくれたよ」

「え……?」

 クレアは呆然とした表情で壱を見る。

「あの俺が腹を掻っ捌かれたとき、助けてくれただろ? だから俺は戦えたんだぞ?」

 だから、恥じることなんて全然ないって、と壱は続ける。

「ありがとう壱さん」

 そう言って微笑んだ後、クレアは唇をもう一度開いた。

「でも、もう迷惑はかけられません」

「何で!?」

 思わず壱は大声で聞き返していた。

「だって、大和製鉄って会社は兵器なんかを開発してるらしいですし七大魔術師だって居るって……」

 七大魔術師……壱はその言葉を聞いた瞬間、身が竦むような感覚に陥った。

 だけど、言った。

「大丈夫だって。俺が絶対に救い出すから」

 護り通すから、と。

 なぜここまでの覚悟が出てくるのか、何て壱にはわからないし、わかる必要もないと思う。

 どれだけ強い敵が居ようと護り通す。

 その意思さえあれば、クレアと一緒に居れるのだ。

 天界に帰るまでは。

「って、ほとぼりが冷めるまでは天界に帰ればいいんじゃねえか?」

 壱は天界に帰る、という名案を出す。

 ほとぼりが冷める頃にまたここに来ればいい。

 それまでは寂しいけど、いつかまた会えるのだ。

「……え、と……私はまだ飛ぶのがヘタで……」

 気まずそうに、恥ずかしそうにクレアは言う。

「天界までは自力で帰れないんです」

「……」

 壱は呆れが心中に渦巻く。

 そんな壱の内心を悟ったのかクレアは慌てたように付け加える。

「あ、でもいい案ですよ! それ! 私、大天使様にお願いしてみます。迎えを出して欲しいって!」

 二時間くらいで着く筈ですよ! とクレアは言う。

「……二時間護ればいいわけだ」

 楽勝だな、と壱はクレアに微笑むと。

「何が楽勝だって?」

 男の声が聞こえた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ