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 壱の激昂に陣は軽く首を振っただけだった。

「風の塊を腹にぶつけただけだ。別に死傷はねえよ」

 死傷がなければいいと思ってんのか? と。

 壱は血液が沸騰したかのような錯覚に囚われた。

「ふ、ざけんなああ!!」

 粒子を片手に集めて一メートル前後の長さの『剣』を作り上げる。

 粒子を密集させて作り上げたこの剣はそこらの刀よりもよっぽど斬れる筈だ。

 土埃が舞った。

 否、地面が削り取られた。

 圧倒的な破壊力を秘めている風は地面を粉々にしながら壱の元に飛んでくる。

(風が来る……ッ!!)

「おおおおおおおおおおおおッ!!」

 剣を力の限り、振るう。

 秒速千キロで標的に向かう風の鈍器は真っ二つに斬れた。

 壱の周りに浮いていた粒子が千単位で弾け飛ぶ。

 恐らく、斬られた瞬間に別の『型』を生成したのだろう。

 頬が風の刃で薄く斬れた。

 しかし、まだ肌は斬れない。

 肌が斬れた、と感じ取っただけだ。

 そしてそんな些細な事に構っている暇もない。

 陣の懐に飛び込み、左足から右肩にかけて剣を振るう。

 それを察した陣が風の防御を施した足で柄を蹴り飛ばす。

「く……ッ!」

 蹴り飛ばされた勢いのまま声が空気を震わせるよりも早く、身体を捻り再度右肩を斬りかかる。

 絶えず攻撃をかます。

 もう『甘え』なんて一切見せない。

 クレアを助け出す。

 作戦だとか、相手の強さだとか自分の能力の特性なんていうものは全部頭から抜け落ちていた。

 粒子が一瞬強く光った。

 急速に手に馴染む。

「おせえ!!」

 陣は何やら口を動かして、閃光のように放った右拳を剣に叩きつける。重い衝撃が右手へと伝わる。

 剣を押し続け、右手を押さえ込む。

 まだ身体は捻ったままだ。

 瞬時、左手に合わせて剣を作り上げ、斜め上から斜め下――右肩から左足へと全体重をかけてスイングした。

 陣の防御は絶対に間に合わない。左手は剣に届く事もなく虚しく空を切る。

 膜のようにして作った風の防御に剣を叩き込んだ。

 風は剣の軌道を逸らそうとアメーバのように剣に纏わり付いたが、耐え切れなくなり制御を失って室内を縦横無尽に駆けた。

 天井はへこみ、扉は曲がり壁は一部崩壊した。

(クレア……っ!!)

 壱の思考を的確に読み取った粒子はクレアを完全に防備する。

 は? と呆気に取られている陣に壱は『剣』を振るいながら粒子を解放した。

 ムチのように剣は形を崩し、三日月型の閃光が走った。

「!!」

 陣の身体に粒子が叩きつけられ、音すら残さず吹き飛んだ。

「ま……ッ!?」

 陣は声を残し、壁ごと廊下に叩き出された。

 それを見届けた壱はクレアの方へと視線を飛ばし、視界が黒く、白く、塗り潰された。

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