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大和製鉄

 壱は理事長室でクー利っ主(アイス)を食べながらふと、気づいた疑問を口にする。

「俺をよく短時間で見つけれたな。何か監視カメラとかでも? あと、理事長なんてやってるけど何歳なわけ?」

 クー利っ主が夏の日差しの中、沙耶の手にあるというのに水っぽくなっていないのだ。

 なら短時間で壱を見つけた、ということになる。

「んー。私の能力かな。天使の微細な振動なんかを肌で感じることが出来るから……あと、私の年齢は永遠の十六歳」

「……そういえば、海もそんなことを言ってたな……天使の揺らぎ、とか」

 独り言を展開した壱に沙耶はアイスを頬張りながら、友人と接するような感じで問う。

「ケイトス、って知ってる?」

「自分の天使、だよな?」

「そう。自分の天使。で、その自分の天使を持つ者が手に入れられる能力がソレ」

「天使を肌で感じれるってこと?」

「ま、人によって全然違うけどね。ある人は自分の半径二、三ミリの範囲でしか感じ取れなかったり。ある人はON、OFFの切り替えが出来なくて精神錯乱しちゃったり。慣れれば空気みたいなものなんだけど……因みに私の捜索範囲は半径百キロメートル」

 容器から漏れ出したミルク色の液体をねっとりと舌で舐めとる。

 壱が。

「そりゃ、あぶねえな……」

「その為の学園だから」

「そういえば……この学園を設立した人って大和和也だったっけ?」

 沙耶は容器をぱくっと口で咥えて上へ上げて中身を全て飲み干しながら頷く。

「ま、自衛力を上げるための学園でもある訳だしね。国が運営する筈だったんだけど……財政ガッタガタだったから。今もそうかな」

「ガキみてえな飲み方するな……」

「んー」

「で? 俺は呼んだ理由って何?」

 クー利っ主を理事長室の端にあるゴミ箱に二人して投擲とうてきする。

「「ストラーイク」」

 沙耶と壱(粒子で補正した)は二人して言う。

「呼んだ理由はね……あなたと同居してる天司さん……狙われてるわよ。ま、一つ忠告」

 まるで、羽毛のように軽い言葉だった。

「は? 狙われてる?」

 それゆえ、脳に上手く言葉が馴染まない。狙われてる?

「そうそう。天司、なんて最高にいい人材じゃない? 人間界での絶滅危惧種よ」

「絶滅危惧種……」

「そ。誰に狙われてるかって言えば今の日本を支えてる大和製鉄よ」

「嘘だろ?」

「嘘じゃないって。そもそも大和製鉄はほんの六年前までは武器を密売する会社だったんだから。だからすぐに日本に強力な武器を売れたし、それを元手に学園を設立も出来た。ようするに時代が来なきゃ、法律で裁かれるべき対象なのよ」

 淡々と。

 それが事実であるかのようにそれを語る。

 いや、声質で見る限り、それは事実なのだろう。

 そして。

 壱のすべきことは。

「……ちょっとクレアを見てくる」

 大和製鉄の歴史を聴くことでも。

 沙耶がなぜそれらを知っているのか問い詰めることでも。

 革張りのソファで悩んでいることでもない。

「大丈夫かアイツ……」

 壱は一瞬で部屋へと舞い戻った。

「流石ね……あれならクレアを無傷で助け出せるかもしれないわね……期待はしないけど」

シリアス突入です!

期待しないで見てやってください

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