壱&クレアの夕方
基本的にクレアは朝に洗濯物や夕食の下拵えを済ませ、昼休みを壱と共に過ごしてから、悪魔を探しに出かけ、壱が帰ってくる四時くらいに帰ってくる。
で。
もう我慢の限界だったのか男子数名と綾瀬、フレア、クリス――更に海田ハーレム軍団(神風麗那も入ってるよ)に尋問され続けていた壱は五時三十分に林道を歩いていた。
「はあ……クレア心配してっかなあ……つーか悪魔捜索に二人で行けないって怒ってかも」
壱は溜息を吐きつつ、希望的観測が脳内を過ぎる。
もしかしたら、褒めてくれる可能性もあるかもしれない。
だって、あんだけ問い詰められたのに喋らなかったんだし(一度は義理の妹設定で逃げ切ろうとした)。
風が靡き、髪が揺れた。
無意識に揺れた前髪を追いかけ――前方二十メートルほど前にクレアが居たのを見つけた。
「あ、壱さん!」
クレアは笑顔で手を振ってくる。
「ああ……クレア。待たせたな」
無意識に歩く速度を少し上げる。
「心配しました。全くもう連絡くらい下さいよ! その為の〇円ケータイじゃないですか」
クレアは壱の元まで走ってきて横に並ぶ。
「悪いなホント……ごめんなさい!」
「今日はこのまま悪魔探しに向かいましょうね」
「いっ!? マジッすか?」
「マジっすよ」
「……でもさあ。この辺りにはもういねえんじゃねえの? 何の事件も起きてないし」
「……そうなんですよね~大天使様が嘘を吐くとは思えないんですけど……悪魔がどっかに行っちゃったのかな?」
「さあ? でも俺は居ると思えねえんだよな。悪魔憑きは居たけど」
「……ん~」
歩きながら形のいい顎に手を当てて小首を傾げる。
最近二人で見たドラマの探偵を意識しているのが丸分かりだ。
「にしても大天使も無茶言うよな~。出来損ない天司と俺を連れて悪魔を討てってんだろ?」
「出来損ないじゃないもん! 確かに私は飛ぶのが下手ですし……天術もそんなに使えないですけど……」
「お前……」
「で、でも大天使様が私を派遣したのには理由があると思うんです」
「世界の瞳ってヤツか?」
「そうです」
世界の瞳、という能力をクレアは有しているらしくその能力は世界中の人の視界をハッキングして覗き見することも、A君の視界をB君の視界へ転換することも可能というチートな能力だ。
海と悪魔憑きとの戦いに横槍を入れれたのもこの能力のお陰である。
「それでも、悪魔が見つかんねーんだろ?」
「悪魔は見ただけでは分からないこともありますから」
「で、直に見ればわかると……はあ先はなげえなー」
壱の溜息にクレアは少しむっとしたように壱を見る。
「早く悪魔を退治できればいいですよね……」
寂しげな表情を浮かべながら言うクレアに壱は横目で見やる。