昼の部2 あれ? 1は?
そして、クレアの作ってくれた弁当を突きつつ、クレア達と喋る。
「あ、そういや、『アレ』録ってくれた?」
「はい。シッカリ『ふるるん海葡萄』を録りましたよ」
「ちげえよ! 俺が録って欲しかったのは『ふるるん滞在記』だっつーの! どう間違ったんだよ! つかそのタイトル何?」
「そうだったんですかッ!? すみませんでした!!」
「まあ、いいけ――」
「今の会話、何?」
「あん? 綾瀬?」
「どう考えても今のは一緒に住んでるって事なんじゃ?」
「……ふ、フレア……さん? 何も、そんな……」
墓穴ったーーーーー!! と壱は心の中で叫ぶ。
クレアと居るのがもう日常と化してきた壱にとっては今の会話は特筆すべきことではなく――故に秘密にしていたことを忘れ去っていた。
それはクレアも同じらしく、両手を可愛らしく小さい口に当てて固まっている。
どうする? 壱の脳内では凄まじい計算が行われていた。
もう隠し切れないのではないか。
「あーあのーアレだよ。近所に住んでるから……ほら世話焼き婆さん的な?」
「……ふーん?」
綾瀬は眼を細め。
「そうなんだ?」
死罪を断定する裁判官のような冷え切った声を出す。
クレアと壱は互いに眼を合わせながら、怖いです、と意思疎通。
「私たち、友達だよね? 何を隠してる訳?」
フレアは何故か、ヒクヒクと頬を痙攣させながら尋問してくる。
その声は何故か壱を糾弾するような響きがあった。
頬が痙攣って病院に行った方がいいんじゃないか? と壱は思う。
つい、と視線を遊星とクリスの方にやるが二人は弁当のオカズ交換に勤しんでいる。
ように見せかけて、意識は壱の方に向けているのがヒシヒシと感じられた。
だって、普通はトマトとウインナーを交換したりはしない。
「……あーその……一緒に、ね? ホラ……何つーか」
「うん私達は……その、えーと……あ、そういえば二人とも壱さんの事がお好きなんでしたっけ?」
にっこり、と。
糖分六十パーセント。
鈍感度三十七パーセント。
色気三パーセントの笑みを浮かべながらそう言った。
クラスメート達はクレアのその笑顔に頬が緩まり、そして何人かが恋に堕ちた。
魅力はあるが、色気がない――子供のような笑顔だった。
「女としては致命傷だよなー」
「ん? 何か、言いましたか? 壱さん?」
にぃ、っごり、と。
毒々しい笑みを浮かべながらそう言うクレアは自分が千年生きていてモテたことがないのを気にしているのかも知れない。
「はうわっ!? 私は、別に、幼馴染だし!? お姉ちゃん代わり的な!?」
と、今更クレアの言葉に反応した綾瀬は真っ赤な顔でそう言う。
「(うん。私は壱が大好きなんだから関係性を教えなさいよ!)」
フレアは何か小声で呟いていたがチャイムの音で掻き消された。
「あ、チャイム鳴った……」
クレアは「じゃあ私帰りますね」と言って帰っていった。