終わり
「天使と悪魔に避けられているのに壱自身は気づいていないの?」
と、海が闘技場を覗いて言う。
なぜ闘技場に居るかというとまあ、壱を尾行してきたのだ。
いや! 礼を言う為に声をかけようとしたのだ。
いや、声をかけられずここまで来てしまったのだが……。
「あれ? これはストーカー行為というモノなのでは?」
いやいやいやいや! コレは違う! ……と、思う。
「……うっわあああああああっ!!?」
何か自分がとんでもない間違いをしたのではないかと思い、恥ずかしさで爆発しそうになる。
グネグネと身悶えし、周りの人がじろじろと見ているのにも気づかない。
ЖЖЖЖЖЖЖ
「わッ!? わわわわわっ!?」
説明途中にいきなり早瀬が殴りかかってきたので横に身を捻って避ける。
「危ないだろ馬鹿!」
「戦闘中に説明し始めるから悪いうえ!?」
早瀬は音速で地面に伏せられた。
「大丈夫か?」
「……」
顔をぷいっと横に向けた。
大丈夫みたいだな、と壱は安心する。
脳震盪とか起こされたら洒落にならない(罪悪感的な意味などで)。
「あーもう! 止めようぜ! もうこんなの意味ねえじゃん」
「……意味がない、だあ?」
「そうだよ。海田、アレが全力だったんだろ? それで俺に負けた。もうお前らが勝てる要素なんてねえよ……わりいけど」
「テ、メエ……!! ふざけんなよおおおおおお!!!」
ドウン! と土が爆発するように散った。
Sクラスの仲間が土を被って倒れる。
ああ、可哀想に。
「あー」
ボリボリと頭を掻く。
負けてやろうかなあと思うが、それはそれで頭にくるかもしれない。
だからと言って一瞬で勝つのも可哀想だ。
だってナンバーワンだった訳だし。
あーいやーでもなーと優柔不断に悩みまくる。
思いっきり頬を殴られるその前に光の粒子が拳を止めた。
「……っくそ……自動防御がやっかいだな」
「まあ、な。自動防御って割といい性能だよな」
海田の右掌に闇が生成される。
「闇?」
そう呟いた瞬間に闇が腹に放たれた。
「防御以上の攻撃すればいいんだろうが!!!」
更に腹を目掛けて何度も殴る。連発。
壱は気まずそうに攻撃から眼を背ける。
(ヤバイ……学園最強の人間がこんなのって凄い可哀想だなあ……)
「あー、ん……少し、痛い? かも?」
気まずい。ヤバイ。
「……テメエ! マジで舐めてるだろ!」
「そんなにお兄様を馬鹿にしたいの!?」
「いや……もうそういうんじゃないんだけど……つか、ギブアップをしたいです……」
ああ! 偉大なる神様よ! なぜ勝ち負けを決めたりする人間を増やしたのでしょう!
マジでしんどいです。
いや、悪いのは僕ですけどね!
「真面目にやりやがれ! ぶっ飛ばす!」
「わーったよ」
本人の希望通りにしてやろうと、思う。
海田以外は地面に柔らかく置いてやった。
海田はギリギリの所で避けたのだ。
「お前ら大丈夫か?」
「……まあ大丈夫よ」
「ふふっ。大丈夫よ」
疎らな返事が聞こえる。
周りを見る限り、大丈夫そうだった。
『い、今の一瞬で壱は十名ほどの選手を一気に押し倒しました!!』
「す、すげえ……」
と。
会場内が歓声で揺らいだ。
壱は少し笑んだ。
まあ、勝ち負け何てだいっ嫌いだが声援自体は嬉しいものだ。
「ッ!!」
闇の攻撃で壱が包まれる。
「……」
「侵食されろ!」
グッと、拳を握り締める。
それと連動したかのように闇が壱の粒子を締め付ける。
まあ、締め付けただけで何ともない。
「よっ」
音速の三倍の速度で海田の元へ向かう。
粒子を使い地面も空気にも影響を極力与えないようにする。
周りには人が沢山居るのだ。
「もっと力を……ッ!!」
更に闇を海田の周りの空間に一瞬で生成。
六十個ほど飛んできた。
「あ……ッ!!?」
海田が何か失敗したのかそう言った。
壱は妹さんと生徒会長に流れ弾として誤爆しかけた闇を綺麗に打ち落とす。
それ以外は無視して壱は海田の膝の裏に人差し指をつける。
女の子達にやったように膝を落とさせ、粒子を相手の周りに展開。
身体を護るようにする為の策だ。
瞬時に額に指を移動させる。
しかし、流石は学園最強。
反応して指を払おうとして腕を振るう。
壱はそれを見てから指の速度を更に五倍ほど引き上げる。
とん、と額に指を立て、押し倒した。
「……ん。大丈夫か?」
「くっそがあッ!!」
そう言って地面を叩いた。
(めんどくせー性格してんなあ……)
「あー。ま、俺の負けってことで」
そう言って、壊滅したSクラスを汗一つ流さずに背を向ける。
「UNOの続きしようぜー」
遊星が壱に言う。
「……まあ、いいけどよ。俺が勝つぜ?」
連敗続きの壱が扉を開く。
「えートランプがいいです!」
と、クレア。
「大富豪! 大富豪!」
クリスが大声で喚く。
フレアが更に言った。
「神経衰弱が……私、いつも一人でやってたんだ……」
『さあ! 神経衰弱しようか!』
そう言って会場内を後にする。
『……あー何? アイツら……』
会場内が何か微妙な空気になった。




