帰り
とん、荒事を終えた壱は一階へ降りてクレアと帰ろうときびすを返す。
「あー悪魔じゃなかったなあ」
「そうですね。まあ人を助けれましたから私は満足でしたけど」
「……それより今日は焼き肉にするか」
「え!? 本当ですか!?」
「ああ、今日はお前も頑張ったし」
二人は談笑しながら扉から帰ろうとした瞬間。
「待て! 私の話は終わってない!」
少女は二階から顔を出し呼び止めた。
あの会話の中で海と、呼ばれていたので海という名前なのだろう。
「あに? ああ、別にアイツの負の感情を増大させてた悪魔は俺の能力で崩壊させたからもうアイツに脅威はないと思うぞ」
ビビらないように優しく微笑みながら言う。
「何であの時逃げた訳!? お前は悪魔憑きじゃないの!?」
壱の気遣い爆散。まあいいけど、と壱。
「俺は悪魔憑きじゃない」
「何でお前は私を倒さなかった訳?」
「いや、倒す意味がないし……」
「くっ……!? やっぱりお前は訳がわからない! 何でそんな強いのに……」
「何でお前そんなに興奮してんだよ。浮いてるぞ。ま、どうでもいいけどさ。んじゃあ行くかクレア」
「あ、はい」
クレアは海の方を見て、それから廃ビルの出口へと足を進める。
早くしないと警察がきてしまう。
日本の警察官と舐めてはいけない。
「名前は?」
海がそう小声で聞いてきたので、答えてやる。
「俺の名前は倉敷壱」
「私はまだこの街に居るから!」
「んじゃあまた会えたら会おうな海」
海の頬が少し赤らんだのを壱は見逃さなかった。
まあ、意味合いはわからなかったのだけれど。




