歳の差。種族の差会話
「悪魔の件ですが……」
クレアは米粒を頬に引っ付かせてシリアス口調でそう言った。
「何?」
さっきまで「今日、クラス中に追い掛け回されて、更に見知らぬ女の子が……」と愚痴っていた壱が聞き返す。
「明日探しに行きませんか? その謎女の子も気になりますし」
「い――」
「――というか行きます! 決定しました!」
「まあいいけど。暴れられる可能性もあるし。でもさあ、二日前探しに行ったのに見つからなかったじゃん。何か天司の術で何とかなんねえの?」
「無理です。私、まだ歳も若いし……そんな高等天術は……」
「歳? 何歳なのよ?」
「……」
「何歳でしょうか?」
「……千」
「は? 千歳?」
「千二百八十歳です!」
「ば、ババアどころじゃねえよ! 化けモンじゃねえか!」
天司がそこまで長生きなんて教科書にも載ってなかったぞ! と壱は心の中で三順堂に文句をぶつける。
「で、でも天司でこの年齢はまだピチピチの十代というか……」
ぶつぶつと、俯きながら小声で反論するクレア。
壱は話題を修正してやることにする。
「で。悪魔を探すんだな?」
「……え? 何か言いました?」
「悪魔を探すのかっつったの」
「あーはいはいそうですね」
「お前、さっきまでのやる気はどこ行った?」
「やる気はありますよー。一杯です。それより壱さんは大会に出場するとか?」
「ん? まあな。因みに三日後」
「じゃあ応援旗を作らないと!」
「お前は子供に迷惑がられるお母さんになりそうだな」
「すあうあどあ!?」
「何?」
「壱さん、私との結婚を考えてたんですか!?」
「お前……自意識過剰な女だな」
「天司の間では女性と子供の話をするのがプロポーズの遠回りな言い方なんです!!」
「ああ……お前の味噌汁を毎日飲みたい的な?」
「そうですよ。別に私だって壱さんに好かれてるなんて思ってませんでしたから」
「まあ、一緒に暮らしてる時点で結婚と大差ないような気もするけどなー」
「……」
「あれ? 顔を真っ赤にしてどうしたの?」
「いえ。別に……どうぞ会話を続けてください」
「いやーそんなことで顔を赤くすんなよなー全くよ」
「べ、別にしてませんけど!? 私は告白とかされたことあるんですから! こんなことでは……」
「へーどんな奴に?」
まあ、告白されたのは本当なのだろう。顔はいい訳だし。
「……」
「どんな奴? 付き合ったりしたの?」
(付き合ったこともあんだろうなー何たって千年生きてる訳だし……)
壱は意味もなく物悲しくなった。
「いえ、十歳の子供から……結婚しよーって……もう百歳で奥さん貰ってるんですけどね」
「あれ? 矛盾が発生してるんだけど追及しないほうがいいのか?」
もしかしてクレアは完全に行き遅れているのでは……? と少々心配になる。
というか、凄い鈍感なのか? それとも本当にモテていないのか?
「違いますよ! ほら、人間でいう青年期が天司は凄く長いってことで……それまでは人間の五分の一の速度で成長するのが一般的なんです。ホントですよ」
「まあいいんだけどね別に」