小ハーレム(まだまだ拡大中)
「フラれてるー」
綾瀬が壱に向かって指差し笑う。
その後、いくら話しかけてもあれ? とフレアは首を捻っていたのでスゴスゴと引き下がったのだ。
壱はどうしたんだろう? と首を捻り、
「鞍馬。テメエのせいだ。一緒に食べたいとか言うからー」
何となく責任転嫁。
「意味わかんねーよ。どう曲解したらそうなるんだよ。つか俺の傷つきようを見ろ」
遊星は机に額を押し付け、声は幾分か沈んでいた。
クリスは遊星の机の真後ろの机に行儀悪く座り、ズカズカ遊星を蹴っている。
どうも、変なヤキモチを焼いているらしい。
「あの、何か勘違いしてない?」
遠慮がちな声に反応して一斉に後ろを振り向く壱、綾瀬、クリス、遊星。
後ろに三個のカレーパンを持って佇んでいたのはフレアだった。
フレアは顔を真っ赤にしながら壱のもとへ歩み寄ると、恥ずかしげな声で、決意を込めて言う。
「私が言いたいのはね……友達以上の関係になりたい……」
綾瀬は血の気が引いたように真っ青になる。
ノーマークの選手にゴールを奪われたサッカーの監督のような顔だ。
「え?」
そう驚く壱にクラス中の全ての視線が集まる。
そして、恥ずかしそうにハニカミつつ、
「いやーそれは時間をかけないと……ホラ。信頼関係とかまだ築けてないし」
フレアは寂しげにこんなもんだよね、と儚げな笑みを浮かべて頷く。
綾瀬は嬉しがればいいのか、フレアに同情すればいいのかわからないと、表情を二転三転させ、遊星は悔しそうに歯噛みし、クラスの連中とクリスは興味津々な感じで見守る。
そして、壱はフォローするように言った。
「あ、でも! 俺はお前とそういう関係になりたいと思ってるぞ!?」
クラスの雰囲気が一気に期待に高まり、綾瀬はもはや、生きる屍と化し、身動き一つ取れないでいる。ホントに指一本動かさずに茫然自失。
フレアは高まる感情を抑え付けられず蕩けた笑みを出るばかりである。
「本当に? 本当になりたいの? 私と?」
しかし、そこで壱は全てを無に返した。
「当たり前だろ? だって多いにこしたことはないんだから」
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静寂がクラスを包み込む。
『今なんて言いました?』そんな突っ込むにツッコミきれない雰囲気。
「お前。ハーレムルート建造計画でも立ててんのかゴラアアアアアア!!」
静寂をぶち破り、壱に掴みかかる遊星。
「は!? 何で親友云々の話でハーレムが出てくんだよ!? 頭沸いてんじゃねえの!?」
この日、クラスメート全員が忘れられない衝撃を受けましたとさ。
『死に、死にやがれえええ!!』
「何でクラス中から怒声が!!?」
「壱、死んで?」
「あれ? フレアさん? 手に持ってる炎は何?」
「おらああああ!! 空気砲おおおおお!!」
「鞍馬まで何!!?」
「私は嬉しかったけどね? フレアの仇よ!」
「仇って何!!?」




