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『フレア・カルフェについての情報』

 そして件名はこう書いてあった。

 そう、壱は綾瀬にフレアについての情報を入手しようとしていたのだ。

 と、言ってもそれを言ってきたのは綾瀬からで壱から何も言っていない。

「アイツ、すげえ張り切ってたからなあ……」

 本文を映し出すとそこには……見るに耐えない長文が映し出されていた。

 総文字数七千。殺す気か。

 ともあれ、知りたい情報は魔術のアレコレではない。

 そんなもの壱が知ったところで何の役にも立たない。

 壱が知りたいのはフレアがどういった立ち位置に居て、どのような生活を送っているか、なのである。

 しかし、壱の期待に反して魔術、運動神経、成績ともに抜群でSクラスにギリギリなれなかったという情報しか書いていなかった。

「まあ、小説とかなら、プライド云々なんだろうけどなあー」

 果たしてコレが当たっているのかいないのか。


ЖЖЖЖЖЖЖ


 何だかんだ言ってもあと十分で決闘である。

「いっちさーん」

 と、クレアが手を振って教室に突入してきたのが十五秒前。

「ああもうやだ……」

 机に突っ伏してそう漏らす壱。

「ていうか、何でお前が居るんだよ……」

 じろり、と横目でクレアを見る壱。

「家で待ってろって言ったじゃねえかよ」

「えーだって夕ご飯の時に私に決闘の話してくれましたし行かなきゃ! と思って……。悪魔も居なかったですし……」

 二人の不用意な発言がいけなかったのか、綾瀬と鞍馬が凄く不機嫌な顔で壱に詰め寄ってくる。

 しまった、コイツら悪魔のことをしらなかったんだっけと、壱は思わず頭を抱える。

「おーい何その問題発言。まさか寮で女の子と泊まり? 警備の甘さにつけ込みやがってえええええええ!!!」

「どういうこと? 事と次第によっては……」

「よっては何だよ!? その先を言ってくれ!! つか悪魔の方に関心持てやテメエら!」

 喚く壱に綾瀬はふふっと不適な笑みを浮かべる。

 鞍馬遊星はカッターの刃を無言で出す。

 冷や汗が背中を伝う。

「何で不機嫌なんだよ……ていうか、殺気と武器をしまってくれ」

「で? どういうこと?」

 クリスがしっかりと大人な態度(二人に比べて)、そして、好奇心満載な口調で訊いてくる。

「一緒に住んでるんだけどいったあ!!??」

 馬鹿なことを言い出すクレアの頭を平手で打つが、しかし、もう遅かった。遅すぎた。

「殺す!」

 と、鞍馬遊星がカッターを振り回す。

「まあまあ。どうせフレアさんに嬲られるだけだから」

 悪魔のような微笑みでそう言う綾瀬に遊星は嬉しそうに頷く。

「だよねー」

「オイ、テメエら冗談を間に受けてっとぶっ飛ばすぞ? まあそれはともかく、フレアって友達いねえのか?」

「居ないよ?」

「何で?」

 綾瀬はその問いに少し口ごもる。

 それと同時に綾瀬の柔らかな雰囲気からクレアとの同居から話題を逸らせたのを悟り、壱は安堵した。

「アイツがムカつく態度ばっか取るからだろやっぱり」

「まあSクラスのなり損ないだしねー。プライドが高いんじゃない?」

 と、遊星とクリス。

 決戦まであと八分。

 決意まであと三秒――。


ЖЖЖЖЖЖ


 決闘場所、というよりまるで競技場のようだった。

 芝生が敷き詰められており、広さは体育館の一.五倍ほど。

 競技場……ということは勿論、観覧席がついてあり、遊星と綾瀬とクレア(クリームパンを食べている)が席についていた。

「逃げずにこれたことは褒めてあげるわ」

 フレアが長い銀髪を揺らして傲慢の塊のように言う。

(……ああーありがとうございます。つかやっぱり、プライド高いから独りなのか?)

 一応心の中で礼をしておく。

「えーではルール説明を」

 先生は防御ガラスを盾にしながらファイル片手にルール説明を行う。

 防御ガラスとは、魔術をある程度なら無力化してくれるというモノだ。

 実戦では役に立たないということが実戦で証明されている。

「時間は無制限一本勝負! ダウンして十カウントしても負け! ギブアップしても負けです!」

「一体どういう武道大会だよ」

 壱はげんなりしつつ言う。

 そして思い出したように手を上げて発言した。

「あ! そうだ。提案が一個」

「えーと。何でしょう?」

「俺だけ勝負の決着方法変えてくれませんか?」

 会場内に居る皆が壱に注目する。

 何言ってんだ? コイツ。と視線で言われている気がする。

「怖気づいたの?」

 とフレアが微妙に頬を歪ませて言う。

 何の表情を作っているのかはおそらくフレア自身わかっていないに違いない。

「別に少しのハンデはつけてもいいけど」

「んじゃあさ。俺はお前の頭を撫でたら勝ちってことでいい?」

 は? と会場の温度が五度は下がった。

「な、何をさらっと言ってるの? 壱?」

「うわーそれはねえよお前……すげえな」

「何で褒めてんの?」

「ああー壱さん……それはないです」

「違う! 違う! 断じて違うぞ! 俺はただコイツを殴るのが嫌なだけで……」

「えーこのルール変更でOKですか? フレアさん」

 驚愕のルール変更に戸惑っていた先生とフレアは何とか体裁を保ち、言う。

「まあいいですけど」

 フレアは何とか頷き、壱に向き直る。

 会場内の壱の味方(鞍馬と綾瀬)が一斉にフレアを応援し始めた。

「あともう一つ!」

「ん?」

 とフレアが首を傾げる。

「フレアが勝ったら俺に大会に出るなって言うけど俺が勝ったときのメリットがねえだろ?」

「まあ」

「なら、勝ったら俺のお願いを聞いてくんねえかな? ま、嫌なら拒否してくれればいいし」

 壱の言葉にフレアは軽く頷いてみせる。

「いいけど別に」

 先生は壱とフレアを交互に見つめて、腕を振り上げた。

「試合開始!」

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