一撃
クレアとの激突まで〇・〇〇〇〇〇〇〇一秒。
空気が重い、音が遅い。化け物が鬱陶しい。
ただ、速く。クレアの元へ。
「おおおおおおおおッ!」
化け物を撃滅し、壁を破壊し、ようやく辿り着いたクレアの部屋。
粒子を部屋全体に飛ばしサーチする。
トラップに粒子が引っかかり、爆発炎上する。
部屋の広さはちょっとしたグラウンド並み。
形は正四角形。雑に並べられているコンピュータ。何らかの機械。チューブなどのせいで歪な部屋に見える。
チューブに接続されているのは人一人入れるくらいに試験管。その試験管にやはりと言うべきか、クレアが収まっていた。
羊水に浸っている赤ん坊のように無垢に眠っている。
しかし、その実彼女は世界に影響を及ぼすレベルの『兵器』として運用されるべくココに納められているのだ。
「待ってろ……助けてやる!」
簡単だ。試験管を右拳で殴る。それで解決だ。難しくない。拳を握る。
しかし、予想通りの迎撃が来た。
試験管のほんの前の空間が割れた。
「なっ!?」
びきり、と空間が割れるというありえない光景が展開される。
空間の割れた中――暗く、暗く。
その黒が、一瞬にして拡大する。檻を噛み千切り襲ってくるライオンのように獰猛に、全てを飲み込む暗黒が部屋全体を駆け抜ける。
部屋が消える。粒子をフルに防御へと転換。
ギシギシと粒子が痛む音がする。
「粒子が、押し潰されてんのか!?」
部屋が消えたのは黒の圧倒的な圧力。
粒子すらも押し潰し、飲み込もうとする圧力を耐え切る。
やがて黒は消え、部屋が丸々消えた。
試験管は足場を失い落下する。
試験管の前の空間から黄色や黒、赤の光線が射出された。
全て防ぎ、粒子を足元へと生成。粒子を蹴り、試験管へと一瞬の内に到達し、殴るが、空間がパカリと割れた。
割れた空間へと拳をねじ込む形になる。
そして、空間が閉じられた。
躊躇無く。
「ッ!!?」
本能が打ち鳴らす警報に従い、拳を引き戻す。
冷や汗がどっと身体中から溢れ出した。
今そのまま拳を入れたままなら拳がこの世から消えうせていただろう。
「なら、コレだ!」
粒子を使い、空中で後退。
魔力と粒子を混ぜ合わせる。
掌で光り輝く球体。
それを躊躇無く投げる、投げる、放つ!
コレが、壱が修行(と、いうほどしてはいないのだが)の成果だ。
毎秒数億発という凄まじい連射性能。一発で富士山程度ならば消し飛ばさせる威力だ。
しかし、コレでクレアを助け出せるとは思わない。
壱は迷わず特攻する。
魔力量。魔術の豊富さ。冷静な判断。全てに置いて壱はこのクレアには敵わない。
だから――
「全てをこの一撃にかける!」
壱がクレアへと粒子を纏い、特攻する。




