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到着

 堕天。

 魔術師の中でもごく一部、自分専用の天使、ケイトスを持つ者の中でも極々一部の者しか出来ない究極の力量アップ法。

 ケイトスを自身の悪感情で染め上げ、悪魔化する諸刃の剣。

 京はこの悪魔化を数回しか行っていない。

 理由は至極簡単で、悪魔化すると自我を失う危険性があるからだ。

 ケイトスが犯され、暴走するのが肌で感じられる。

 それを自身がコントロールする!!

「う、おわあああああああああああああッッッ!!!」

 ケイトスが吹き荒れ、周りの天使が吹きすさぶ。その衝撃により化け物が数匹吹き飛んだ。

「さあ……処刑の時間だぜ」

 京が手首をくいくいと曲げて、挑発のポーズ。

「京……! また、悪魔化なんて!」

 レガシーが叫ぶ。

「こうでもしなきゃコイツらに勝てねえだろ?」

 京は片目を瞑りウィンク。

 その隙をつき、襲ってくる黒の化け物五匹を拳を振るい吹き飛ばす。

 首と思われる場所を掴み、思い切りぶん回した。

 魔術、発動。

「explosion」

 周りに存在する化け物が全て、爆発した。

 京の凄まじいチート性能を目にしたヒロイン勢は安堵の息を吐く。

 しかし、自我を失う危険な状態であることには変わりない。

「一瞬で終わらせてやるぜ」

 京の究極魔術。

 ディコール

 全てを無に帰すことのできる魔術。

 悪魔色の染まったケイトスを全ての化け物へと飛ばす。

 集中する。

 化け物どもの攻撃を避け、集中!

 化け物どもを消し炭にするほどの圧倒的な魔力量を全て――無へと還すために使う。

「ディコールッ!!」

 今、全てが無に還った。

「はあっ!」

「大丈夫?」

 レガシー達が京の元へと走ってくる。

「ああ、大丈夫だ」

 ただ、と一言言って。

「魔力を使いすぎちまった」

 無には欠点がある。

 集中する時間が必要なこと。

 多量の魔力を使うこと。

 なので、本当の強敵には使う暇などないし、大量のザコならば使う必要もない中途半端な術といえる。

 仲間が囮となってくれたおかげで強敵をぶちのめし、世界を救ったこともあるのだが、仲間が居なくては始まらない不完全な術なのは確かである。

 今のように強敵あるが一定期間捌けれ、大量に存在し、しかし『戦闘知能』があまりなかった場合、最高のパフォーマンスを発揮することが出来る。

 悪魔化を解こうと心静めようとした瞬間――絶望がやってきた。

 今までとは段違いの魔力量。

 魔力量だけで言うならば七大魔術師並み。

「がが、ぎごごガアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 黒の化け物。

 全長はおそらくニメートルほど。

 手はムチのように長く、股下は百五十センチほどの正真正銘の化け物だ。

「京は私が、守るっ!」

 レガシーが咄嗟に京の前へと立ち塞がる。

 夜見もほぼ同時に前で出る。

「私達、だろう?」

「お前らが敵う相手じゃねえ! 止めろ!」

 京は二人へと叫ぶ。

 しかし、夜見は冷静に言う。

「京が私達ならここで逃げる? 逃げないでしょ。だったら……私も逃げ――」

 言い終わる前に――京が心動かされる前に京の前に立ち塞がる壁は一瞬で取り除かれた。まるで紙くずのように。

「テメエ!」

 弾けるように京は飛び出し、魔術を展開。

「explosion、bind、full、coll、compress!!」

 合わせ技だ。

 しかし――

「ギガアアアアアアッ!!!!!」

 咆哮のみで吹き飛ばされる。

「な……ッ!!?」

 ほぼ空の魔力とは言え、咆哮だけで蹴散らされる威力ではない。

 ムチのような腕が風切り音を立てて振り回される。

 多大な遠心力を生んでいるムチは轟々と風を起こし、壁を崩壊させ、床を剥ぐ。

「く、あああああああああああッ!!?」

 悪魔化を制御する力と台風のような風を耐える。

 力を溜め込み、殴ってみるが、化け物は同じ分だけの魔力量を口から出し、相殺させる。

 腕がやがて振り下ろされた。

 京の前にかけつけたのは、レガシーと夜見。

 京は目の前の出来事を冷静に見つめてしまう。

 強敵と戦っていった経験値が全てを告げる。

 二人の力では京を守ることもできない。

 三人纏めて死ぬ、と。

 俺のせいで、二人が犬死にする。

 俺の――。

「京は!」「殺させない!」

 二人は京を守るために身体を差し出す。

 死を運ぶムチが無情にも振り下ろされる!

 ふっ、と。

 レガシーは瞳を瞑り、迫り来る死を享受しようとする。

 しかし。

 レガシーはいつまで経っても振り下ろされない腕に疑問を感じる。

 目を、そろそろと開けた。

 目の前には背中がある。

 男の背中だ。

「よく生き残ったな。あとは俺に任せろ」

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