壱と美少女
「ねえ、アイツの女が気遣って「世界平和」を望んだなんて言ったけど、どうしてそう思うの?」
「世界が平和になればアイツは暴力を振るわずに、ずっと一緒に居ることだって出来たんだ……」
壱は少女の問いにぼそりと答える。
クレアの顔が浮かんでくる。
きっと、闘わなければクレアとは居られない。
世界平和どころか周辺平和すら得られないだろう。
けれど、時雨のようにはならない。
目的と手段を間違えるな。
闘うために敵を殺すんじゃない。
敵を無力化して平和に暮らすために嫌々闘うんだ。
……って。
「ここ、どこだ?」
周りの景色は変わらず、ただの廊下だ。
但し、行き止まり。
「アンタが先行くからでしょ!? 行き止まりじゃない」
「知らねえよ! 俺だってさっさとクレアのところまで行きてえよ!」
「私だってさっさと京のところに行きたいわよ馬鹿!」
「あー分かった分かった。じゃあ……こうしてやるよ」
「ひゃいっ!?」
壱は少女を抱き抱え、脚に力を入れ――ガン! 殴られた。
もちろん、粒子が防御をしたので実際に殴られては無いのだが。
「いきなりなにすんのよ!?」
「お前が文句言うからだろ!? それに俺もさっさと行きたいんだよ! 我慢しろって」
「くうう……」
少女は羞恥と怒りでか、顔を真っ赤に染めて壱をにらむ。
「行くぞ」
壱はそういうと声を置き去りにして走り出した。