遊星VS大和Ⅲ
「はぁっ、はぁっ!」
遊星は敵の前でゆっくりと呼吸を整えていく。
まるでリラックスしきった様子で。
「さーて、後は……スクラップショーでも見せてもらおうか」
遊星は意地悪く笑う。
「なに……? なぜ、ゴーレムの脚が壊れた!?」
大和の悲鳴にますます笑みを濃くする遊星。
「はっ、やっぱりそういう事かよ。ゴーレムは温度で俺たちのことを狙っていた。だから、温度変化を嫌ったし、糸の存在も気づかなかった」
「ま、さか……貴様……ッ!! 見破ってたというのか!」
大和の激昂の声が部屋に響く。
「俺を舐めんなよ」
遊星はゴーレムを睨みながら言い放つ。
遊星自身の温度を魔術により、下げる。
レインコートには蒸気を操る魔術でもある。
ならば、自身の身体を蒸気で冷やせばいい。
そして、ゴーレムの脚に魔術により作り出した熱を貼り付ける。
これにより、ゴーレムは最も遊星が存在しているであろうと思われる右脚を自分の拳で叩きつけたのだ。
大和の笑い声が部屋に響く。
「はっはっは。流石星陵学園というところか……ならば、この部屋ごと爆破するッ!」
なっ!? 遊星の顔色が一気に変わる。
ぐしゃり、と土石流のような勢いで崩れる巨人に遊星はバリアを張り、少女へと走る!
流れ来る土を跳ね除け少女を抱き抱える。
「爆破まで、五秒! 逃げ場なんてない! 直径二キロは吹き飛ぶんだからなあ!」
二キロ……ッ!? 遊星の身体が縛られるかのように動かなくなる。
「古より存在する大地よ……未来へと続く盾となれ!」
ウォール!! 遊星の全魔力を使い、大地へと魔力を放つ。
周りの天使たちが答えるのが分かる。
今までに無いとても大きな力が。
(な、んだ……この力は!?)
危機に瀕したから、未知なる力を生み出した? 否。
抱き抱えている少女の自分専用の天使――ケイトス――が遊星に力を貸しているのだ。
少女に死なれては困るから。
「は、はは……いけるッ!」
大和の宣言通り、二キロ周辺が吹き飛んだ。