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クレアと壱の情事

「で。何で俺がテメエを泊めなくちゃなんねんだよおおおおお!!?」

「と、言いつつご飯を出してくれるのが優しいですよね」

 ニッコリと甘さで毒殺できるような笑みでそう言うクレア。

 それに大した反論内容も思い浮かばず、嘆息し、野菜炒め(独り暮らしの男の必需料理の一つ)をかきこんでいく。

「お前、ここは一部屋しかねえし、布団も一組なんだけど……寝る時どうすんの?」

 特に何があるわけでもない部屋で壱は訊いた。

「床で寝ます」

 …………………………。

 沈黙。

 重苦しい沈黙のカーテンが下りるが、鈍感を装い白米を食べながら更に訊く。

「一部屋しかねえんだけど……寝る時は?」

「……え、っと……私は床で……」

 そういう問題じゃあないんだクレアさん。

 俺達男子高校生は八畳間一部屋の空間に女の子(それも飛びっきり可愛い)と一緒に居るとどうなるか……。

 壱は自らの想像内でバッドエンドを迎えそうな気がしないでもない。

 爆死ルート。

 あ、いや、何で自分のが使い物になると思ってんだ? と、少々自虐的かつエロティックに思考を進める。

「つか、大天使は何考えてんだよ。一緒に住ませようとするなんて」

「す、すみません」

 うう、と小さく座りながら頭を下げるクレア。

「まあ、お前が悪いんじゃあないしなあ……」

 クレアによると大天使はこう言ったらしい。

 壱と一緒に住まして貰いなさい、と。

「ふっざけやがって。つかお前は嫌じゃねえのか!?」

 壱はグビっと麦茶を飲み、訊く。

 まるで自棄酒を呷って文句を言うサラリーマンである。

「私は壱さんが嫌な人ならこんなこと言わずに野宿してましたよ」

 ニッコリと糖度百パーセントの笑顔を向けてくる。

 人は疑うことを覚えろよ、という言葉を麦茶で押し戻した。

 これからは最悪な毎日になりそうだ。

「はあ……」


ЖЖЖЖЖЖ


 何だかんだでコタツ専用布団を持ち出して、包まり眠る壱。

 クレアはスピースピーすうすうと、気持ちよさ気に眠っている。

 因みに服装は壱のTシャツにハーフパンツだ。

 パンツは一緒に(相手は壱よりも地理に詳しくないので)買ってきた。

「うう……俺ってばなんでこんな……」

 しかも明日は悪魔を探しに街まで進出するらしい。

 悪魔は壱の都合など考えてくれないので仕方がない。

 寝返りで布が擦れる音で、心臓がやけに早く動いた。

 あっれ? いやいや相手は得体の知れない天司ですよ? 欲情なんて絶対無いって。

 負けるもんかよちくしょう、と寝返りを打つ。

 何に負けるのかは全く分からない。

 そこに、クレアが居た。

 正確に言うとクレアの真っ直ぐな背中。

「……あれ? クレアの羽は?」

「翼です」

 少し強めの訂正文。

「あ。うん。悪かった。翼は?」

「硬度を調節できるんですよこの翼は。布から石まで様々な感じにですねー色々と」

 壱はクレアが自分の話をするときは割と上機嫌なことを今発見した。

 声が少し弾んでる。

「へー」

 興味本位でクレアの背中――もっとしっかり言うのならTシャツ越しに翼に触れた。

「ひゃう!?」

 クレアは何か変な声を出した。

 嬌声、というのが一番しっくりくる声だった。

 沈黙が降りる。

 壱は驚いて瞬きもできない。

 クレアは夜目でも分かるくらいに顔を真っ赤にして、神速の動きで布団に丸まった。

 天司のくせに神速だ。

(面白くなかったね!!)

 壱は頭の中に蛆虫が湧いたような、熱い紅茶をぶっ掛けられたような感覚に戸惑いつつ、今までの人生経験を駆使してその感情を完全無視。

 しかし、沈黙からは逃れれない。

 どんどん溝ができていくような嫌な沈黙に耐えられない。

 そこで頭上においてあったケータイが光を起こした。

「あ、メールだー」

 芝居がかった口調でケータイを開ける。

 クレアは無視。

 もしかしたら寝ているのかもしれない。

 寝てたらいいな、と壱は思う。

 メールの送り主の名前を見る。

『綾瀬』

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