14年の約束
ご覧いただきありがとうございます!
今作は、老犬となったゴールデンレトリバーの視点と、飼い主の青年との14年間の絆を描いた短編小説です。
温かくて切ない、ふたりの思い出の軌跡を見守っていただけたら嬉しいです。
僕がこの家に来たのは君の一言がきっかけだったんだよね。
僕はゴールデンレトリバーのオス。今年で14歳になる。
「ハル!ご飯だよ!」
飼い主の湊は25歳。一人っ子の湊が11歳の時に、
『犬を飼いたい!』
って両親にねだって飼ってもらったんだったよね。
両親は、
『どうせすぐに面倒見なくなるでしょ!』
と、最初は反対していたけど、一人っ子ということもあり、渋々、ペットショップを回っていたんだっけ。
『ご飯と散歩、毎日するから!』
って、両親と約束をして、両親も期待していなかったけど、君が修学旅行に行って家を空けた日以外、本当に毎日、約束守ってくれたよね。ありがとう。
湊は本当は優秀でもっとレベルの高い学校に行けたのに僕の世話があるからって高校は家から近い学校に、大学も職場も実家から通えるところに行ってくれたってこと、僕は知っているよ。
社会人になって一人暮らしするのかなって思ったけど、僕とあと何年、一緒にいられるかって考えてくれて実家暮らしを選択したんだよね。本当に湊は優しい子だよ。
僕がまだ小さい時、いつも一緒のベッドで寝たよね。
シングルベッドで狭いはずなのに大きくなっても一緒に寝たっけ。
そして、毎日の散歩も欠かさず行ってくれていつもの道だと、ハルが飽きるからって違う道の散歩ルートも考えてくれたんだよね。本当は湊が同じ道に飽きただけなんじゃないの。でも、とても楽しかったよ。
僕が12歳を超えて寝ている時間が増えてきて湊はとても心配していたよね。
毎日、目覚めるかなって覗き込んでいるの知っていたよ。
「ハル、ゆっくり食べていいからね。美味しい?」
ご飯食べるのも段々、遅くなってきちゃったね。だって、もう老犬だもん。
今のうちにたくさん撫でておいてね。
もうすぐ別れがやってくるかもしれないから――――――――。
いよいよ、身体が動かなくなって来ちゃった。
湊は今日は会社休んでくれたのか。パパもママも。
湊、何で泣いているの。みんな、落ち込んでどうしたの。
みんな、元気出して、僕は湊やパパやママと一緒にこの家で過ごすことが出来て、嬉しかったよ。
「ハル、元気出して……。水飲んで、ご飯食べてよ。」
ごめん、ご飯食べられなくなっちゃった。
もうすぐお別れかもしれない。本当に幸せだったよ。ありがとう。
僕はこの世にはいなくなるかもしれないけど、湊のこともパパやママのことも、空からずっと見ているよ。約束。
これから湊が泣いていても近くにいてあげられないけど、僕のベッドにいつまでもいるから、会いたくなったらここに来ていいよ。
「ハル、まだお別れしたくないから!ダメだよ!目を閉じないで!ハルー!」
ハルはその晩、息を引き取った。
僕は一週間泣き続けた。こんなに泣いていたらハルに怒られちゃうかな。
ハルは僕が泣いているといつも近寄って慰めてくれた。
友達と喧嘩をした時も学校で先生に注意された時も好きな女の子に振られた時も―――。
ハルの世話をするのは大好きだった。面倒だなんて思ったことはなかった。
一回一回の世話が思い出になっていく。そんな感覚だった。
ハルがいなくなるなんて今でも実感が湧かない。
いつも部屋をうろついていたハル、僕のベッドで一緒に寝ていたハルはもういない。
でも、ハルが最後に寝ていたハルのベッドは今でもそこにある。
ハルは天国でも笑っているかな。僕のこと覚えているのかな。
ふと、そのようなことを思ったりする。
(『湊、僕が生まれ変わったらまたあのペットショップで出会ってね!』)
湊は一週間泣き続けていた。それを空から見ていた。
でも、僕は湊が強い子ってこと知っているよ。
まだ笑顔はぎこちないけど、元気になってくれて良かったよ。
また、会おうね。
(了)
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
愛するペットや家族と過ごした日々を思い出して、少しでも心に温かい余韻を残せたら幸いです。
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※本作はnoteにて公開した原稿をベースに投稿しております。
※本作は乃木坂46の楽曲『僕がいる場所』の世界観からインスピレーションを受けて執筆したフィクションです。
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