第十二章 ヴォルナの春
ヴォルナに着いたのは、グリアを出て十二日後だった。
最初に来たときは冬の入り口だった。今は早春だった。
廃墟のままだったが、何かが違った。
街の入り口の瓦礫が、少し片付いていた。道の端に積み上げられていた。整然とはしていないが、誰かが動かした跡があった。広場の噴水台の周りに、雑草が生えていた。緑だった。
「人の気配があります」とシスが言った。「複数の熱源。広場の方向」
広場に向かった。
人がいた。
十人ほど。男女混じって、何かを運んでいた。木材と、石と、古い建材。建物の一部を修繕しようとしているようだった。
その中に、見覚えのある大きな体があった。
「ダン」と私は呼んだ。
男が振り返った。
ダンだった。
あの廃墟の地下室で病に伏せていた男が、今は作業着に泥をつけて、木材を担いでいた。顔色がよかった。頬の肉が戻っていた。
「アン」とダンは言った。驚いた顔をした。「本当に来たのか」
「来ると言いました」
「……ああ」ダンは木材を下ろして、こちらに歩いてきた。「ヴァスタからの通信で聞いていた。南へ戻ると言っていたから、来るかとは思っていたが」
「街が、動いていますね」
「少しずつな」ダンは街を見渡した。「二十三人になった。冬の間にさらに六人来た。まだここに残っている人間がいたんだ」
「まだここにいる、という文字を見た人が来たんですね」
「そうなる」ダンは少し笑った。「あの文字を書いたのは衝動だったが、役に立った」
「すごく、役に立ちました」
「お前も見たのか」
「最初にこの街に来たとき、広場で見ました。あれを見なかったら、この街に留まらなかった。コルに会えなかった」
ダンは少し目を細めた。
「……コルは元気か」
「元気です。地図の読み方を勉強しています」
「そうか」
「ミア先生に習っています。ダンさんが来るのを待っています」
ダンは何も言わなかった。ただ、目が少し赤くなった。
「もうすぐ行く」とダンは言った。「ここが少し片付いたら。次に来る誰かのために、入口だけでも整えてから」
「次に来る誰か」
「この街に来る人間が、まだいるかもしれない。そのとき、少しでも人が住んでいた痕跡があれば、怖くない。誰かがいたとわかれば、立ち寄れる」
私はダンを見た。
「ダンさんは、そういう人ですね」
「どういう意味だ」
「残っている人のために、次に来る人のために、動ける人が動く。それがダンさんのやり方だ」
ダンは照れたように頭を掻いた。
「大げさだ」
「そんなことはないと思います」
ダンは少しの間、私を見ていた。
「お前は、本当に人間か」と言った。最初に会ったときに、コルも同じことを聞いた。
「人間だった記憶が、このチップに入っています」と私は言った。「だから人間だと思っています」
「……父親が作った研究で、お前はここにいる」
「はい」
「いい父親だったんだな」
「はい」
「俺の親父も、似たような人間だった」とダンは言った。「不器用で、あまり喋らなくて、でも行動する人間だった。お前の話を聞いて、思い出した」
私は何も言えなかった。
「……茶を飲んでいけ。大したものはないが」とダンは言った。「コルの話を聞かせてくれ。あいつが地図を読んでいる姿、想像できないんだが」
「上手になっていましたよ」
「本当か」
「地面に指で書いてくれました。ヴォルナの場所も、ちゃんと入っていました」
ダンが、声を出して笑った。
大きな笑い声だった。
廃墟の街に、その声が響いた。
◇
ヴォルナに、四日間いた。
ダンたちの作業を手伝った。シスが重い建材を運び、私が修繕の設計を考えた。どの建物を先に直すべきか、水をどう確保するか、冬に備えた備蓄はどこに置くか。
ダンは私の話をよく聞いた。
採用することもあれば、首を振ることもあった。「この街のことは俺の方が知っている」と言って、自分のやり方を通すこともあった。でもそれが正しかった。私よりも、ダンの方がこの街を知っていた。
四日目の夜、街の人間たちが集まった。
小さな火を囲んで、食事をした。大したものはなかった。缶詰と、乾パンと、誰かが育てていた玉ねぎのスープ。でも温かかった。
私は食事を必要としないが、火の周りに座っていた。
人々が話していた。
戦争の話、家族の話、失った場所の話、それからグリアの話。私が話したグリアのことを、みんながよく聞いていた。質問が来た。
「どうやって行くのか」
「子供を連れていけるか」
「食料はあるか」
「言葉が違っても受け入れてもらえるか」
私は全部答えた。知っていることを全部話した。
最後に、ダンが言った。
「春が終わったら、移動する。ここの片付けが終わったら、ヴァスタ経由でグリアへ向かう。行きたい人間は一緒に来い」
全員が、うなずいた。
二十三人が、うなずいた。
火が、夜風に揺れていた。




