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第8話 エターナルフロンティアだと元気

家に戻ると、生人いくとはすぐに台所に立った。


真守まもりはソファに腰を下ろしている。

さっきよりは顔色がいい。

それでも、無理はさせたくなかった。


「おかゆにしようかと思ったんだけど」


そう言うと、真守は首を横に振る。


「普通のご飯が食べたい」


「……大丈夫?」


「うん。いける」


少し迷ってから、生人は頷いた。


みそ汁を作って、魚を焼いて、白米をよそう。

いつも通りの献立だ。


「わ、焼き魚だ」


「消化いいやつにした」


「ありがと」


向かい合って食べる。


真守は、普通に箸を動かしている。

よく噛んで、よく食べる。


「どう?」


「うん。おいしい」


特に苦しそうな様子もない。


生人は、ほっとする。

同時に、頭の隅に別の数字が浮かぶ。


――月240万円。


医師の声が、まだ残っている。


大丈夫。

俺が、なんとかする。


心の中で、何度も言い聞かせる。


エターナルフロンティアオンライン。

あの世界なら、稼げる。


振っていないスキルポイントも、まだある。

全部、生活職に振る。

効率を、限界まで上げる。


考えるほど、胃の奥が少し重くなる。

でも、止まらない。


食事を終えると、生人は立ち上がった。


「ベッドまで行こうか」


「歩けるよ?」


「今日は、だめ」


返事を待たずに、抱き上げる。


「……お姫様だっこ久しぶり」


「文句言うなら降ろす」


「言ってない」


そのまま寝室へ運ぶ。


ベッドに下ろしてから、生人は言う。


「俺、エタフロ行ってくる」


「……いいの?」


「大丈夫。すぐ戻れるし」


真守は、少し考えてから言った。


「私も、やりたい」


生人は一瞬、迷う。


「身体に触らないか?」


「大丈夫」


即答だった。


「エタフロの中なら、平気だと思う」


それなら、と生人はヘッドギアを持ってくる。

ベッドの横で、真守に渡す。


「先、入ってて」


「うん」


真守がログインする。


少し遅れて、生人も自室に戻り、ログインした。


――――


世界が切り替わる。


「いやー、ごめんねー!」


聞き慣れた声。


目の前にいるのは、

いつも通りのまもりだった。


「いくと!心配かけちゃって!」


「……元気そうだね」


「なんか具合悪くてさー!」


そう言いながら、くるっと回る。


「ほら、走れるもん」


軽やかに走って見せる。


「あ……」


生人は、少し拍子抜けする。


「エタフロの中だと、平気なんだね」


「すごいよねー」


まもりは笑う。


「元気になる!」


「それなら……よかった」


胸の奥が、少しだけ軽くなる。


その横で、生人はメニューを開く。

余っていたスキルポイント。


迷わず、全部生活職に振る。


採取効率。

精錬効率。

加工成功率。


考えていられない。

月240万円。


生活しながら稼ぐには、

効率を極限まで上げるしかない。


「ねえねえ」


まもりが言う。


「デザートドラゴンの眼球さ」


「またその話?」


「だってさ!」


楽しそうだ。


「ほんと、あれすごかったよね」


「……うん」


笑いながら話すまもりを見て、

生人は少し安心する。


VRの中では、元気だ。

ちゃんと笑っている。


「ワハハ!」


その笑い声が、世界に混じる。


大丈夫。

絶対に、守る。


そう思いながら、生人は静かに立っていた。

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