第5話 超大型レイドボス・デザートドラゴン
砂漠に入ると、すでに人が多かった。
デザートドラゴンの出現位置。
その周囲に、先に陣取っている集団がいる。
装備が違う。
立ち位置も、動きも慣れている。
「もう来てるね」
まもりが言う。
「トップ層だね」
「一番ダメージ出した人、特別な宝箱だっけ」
「うん。レア出やすいやつ」
「夢あるよねー」
まもりは楽しそうだ。
勝ちに行く、というより、
この空気そのものを楽しんでいる。
まもりは戦闘ではかなり上のほうだ。
でも、トップ層と比べると一段落ちる。
それでも、
戦うこと自体が楽しいらしい。
「私は前行ってくるね」
「無理しないで」
「はーい」
軽い返事。
しばらくして、
世界全体に分かる反応が走る。
デザートドラゴンが出現しました
という情報が、意識に届く。
同時に、砂漠の奥から影がせり上がる。
でかい。
とにかく、でかい。
空まで届きそうな巨体。
翼が動くだけで、砂が舞う。
「うわー」
「でかいね」
「何回見てもでかい」
戦闘が始まる。
トップ層が一斉に動く。
役割分担がはっきりしている。
前に出る人。
後ろから削る人。
状態異常を入れる人。
まもりも、自然にその流れに混ざっていく。
「行ってきます!」
「いってらっしゃい」
いくとは、短剣を構える。
近づいて、
一度だけ、切り付ける。
それで参加判定は取れる。
「よし」
あとは、少し離れて見るだけだ。
戦闘は速い。
トップ層の火力が、とにかく高い。
ドラゴンの体力が、目に見えて減っていく。
まもりは前線で動いている。
攻撃を避けて、
隙を見て踏み込んで、
また離れる。
「楽しそうだな……」
いくとは、そう思いながら見ている。
砂が舞う。
攻撃が重なる。
やがて、ドラゴンが大きく倒れる。
終わった。
その瞬間、
手元に宝箱が現れる。
「来た」
「おつかれー」
まもりが戻ってくる。
「一緒に開けよ」
「うん」
それが、いつもの流れだ。
「いっせーのーで」
「はい」
同時に、宝箱を開ける。
いくとの中身。
小さい体力回復ポーション。
「……外れ」
「あるある」
次。
まもりの宝箱。
一瞬、間があく。
「……え?」
中にあったのは、
大きな眼球。
ドラゴンのものだ。
デザートドラゴンの眼球を まもり が入手しました
その情報が、ワールド全体に流れる。
「ええええええええ!」
まもりが叫ぶ。
「ええええええええ!」
いくとも叫ぶ。
「ちょっと待って」
「待って待って」
「これ……」
「これ、やばいやつだよね」
デザートドラゴンの眼球。
超レア素材。
誰もが知っている。
「うそでしょ」
「また引いたの?」
「なんで?」
まもりは、完全に興奮している。
「エリクサー」
「デスドラゴンの心臓」
「で、これ」
「なんか、こういう引きあるよね」
「あるね……」
いくとも、落ち着かない。
でも、すぐに冷静になる。
RMTの画面を開く。
相場を見る。
「……179万円」
「179万円!?」
「179万円」
「やば」
まもりは目を輝かせる。
「装備更新に使っちゃおうかな」
「たしかに」
「手数料10%取られるし」
「ありではある」
少し考えてから、
まもりがにやっとする。
「……って思った?」
「うん」
「RMTに流すに決まってるでしょ!!」
即答だった。
「現金大好きだから!」
「知ってる」
「ねえ」
まもりが聞く。
「これさ」
「うん」
「家のローン、払うのに使う?」
いくとは、少し考えてから言う。
「まもりの使いたいように使っていいよ」
一瞬、間が空く。
「なにその、夢の膨らむ回答」
「そう?」
「そう!」
まもりは笑う。
結果として、
今日このレイドに来たのは正解だった。
それは間違いない。
でも、
まさか本当に、
このタイミングで、
また超レアが出るとは思っていなかった。
いくとは、
まだ少し、驚いたままだった。




