彼女の日常
毎日のように雨が降り続き、、地面に跳ねる水の音が響き渡っている。今年の梅雨は、よく降るらしい。
朝のニュース番組で、天気予報士が言っていた。
雨に身を任せていると、余計なことを考えなくて済む。周りの音が霞んで、言葉を忘れられる。
新卒2年目、あんなに辛かった仕事に慣れてきて気を抜けるようになってきた。
でも、それと同時に周りの声が耳によく入るようになってきた。
「あいつの企画、何がいいの俺わかんねえよ」
「いや、あいつ部長に媚び売ってるらしいんだよ」
「はぁ、、マジかよww結局、、女の武器かwwww」
先輩が口にしている言葉が無性に耳に入ってくる。聞きたくない、、、聞きたくない、、、
耳を塞いでイヤホンで音を閉じこめる。少しでも心を持っていかれないために。
「かなで。かなでっ!!はぁ、、また、雨音?外も雨なのに、室内でも雨降らせないでよ」
同期の高見幸が呆れている。
「いや、、ランダムにしてたから、たまたまだよ」
そう言って笑顔を作る。何事も無かったように。思ってもないことを、、、
「それよりどうした、、」
ゆきとは、研修中に出会って仲良くなった。部署は違うけど、会議で会うことも多く、互いの業務内容とか愚痴をよく言い合ったっけ。。
今も、昔と変わらない熱量で百面相しているゆきを羨ましく思う。
あの時は、ただ楽しかったのにな。どこで変わっちゃったんだろ。
自分だけどこか遠くに行ったような気分だった。