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 8日目③:そして彼は思い当たる

「「…………は……?」」


 屋上へと続く階段の、屋上の手前からは見えない位置で事の成り行きを(うかが)ってると、まさかの返事が聞こえてきた。

 途中までとても、こっちまでもがドキドキするシチュエーションだったっていうのに、まさかの返事が返ってきやがった。


 ドキドキを返せッ。


 いや、正確には少し違うかな。

 よく聞くと私以外の誰かも私と同じ声を出していた。


 声のした方を振り返ってみる。

 するとそこには、ガリ勉キャラっぽい男子がいた。


 相手はいったい誰なのかと混乱した。

 しかし相手はそうではなかったようで、私を見つめ、右手の人差し指を自分の口の近くに無言で持っていった。


 どうやらこっちと同じく状況を()(あく)してるっぽい。

 もしかして、あの一樹とかいうヤツの知り合いなんだろうか。


「う、ウソよッ!!」


 そんな事を思っていると、碧海が声を上げた。

 私と、誰か分からん男子と同じく、返事の内容に納得がいっていないっぽい……いや当たり前だな。


 私だったら胸ぐら掴んでる。


「嘘じゃない。申し訳ないけど――」


「そんなハズない!! あなたみたいな顔の男子がそう何人もいるハズない!!」


 ……まぁ確かに。

 一樹とかいうヤツはいろいろ違うし。


 それに加えて浅黒い肌に天然パーマに(ひたい)のホクロ。

 そんな組み合わせの人間を、現在の世界人口からして見つけるのは至難の業かもしれない。


「記憶喪失(そうしつ)……? いや、ドッペルゲンガー……?」


 誰か知らない男子が、小声で(つぶや)く。

 前者はともかく後者は絶対ねーだろオカルトじゃん。


「いやでも、世界には自分に似た人が何人か――」


 一樹とかいうヤツはさらに言い訳じみた事を言う。

 しかしその途中で、碧海はその場から逃げ出した。


 目元を()らしながら。

 私と謎の男子の存在に気づかないままに。


「ッ!? ま、待って碧海さ……ッ!?」


 一樹とかいうヤツが慌てて駆け下りてくる。

 すると私は、思わず、一樹とかいうヤツの腕を強く掴んだ。


「いやホント、もうちょっと言い方が――」


 そして自己紹介もしないまま。

 彼に対して凄みを()かせて説教をしようとした。


「まぁ、待って待って」

 しかしそれは、誰かも知らない男子が止めた。


「一樹、本当に覚えがないのか?」


「ッ!? 拓海くんもいたのか!?」


 一樹とかいうヤツは驚きの声を上げた。

 やっぱり彼にとってもイレギュラーな人物らしい。


「お前が女子に……それも碧海さんに連れていかれたのを見かけたから気になってな。それよりも、ないの?」


「ああ、本当に覚えがないんだ。確かに海外に何度か引っ越したけど……碧海さんがいう国には一度も行った事がないんだ」


「は?」

 今度は私だけが変な声を上げた。


「パスポートは? ある?」


「ある。だから断言できる」


 いやいやいや、そんなまさか。

 じゃあ、碧海が小学生の頃に会ったっていう、一樹とかいうヤツにメチャクチャ似ている誰かはいったい誰だよ?


「ていうか俺は……人に暴力を振るうのは嫌いなんだよ」


 だけど、そんな私の疑問はその言葉を聞いて吹き飛んだ。

 そうだ。確か碧海が盗み聞きしたオタクグループの話の内容によれば……こいつは将来、医者を目指しているんじゃなかったか?


 そんなヤツが、イジメッ子相手とはいえ暴力なんて……ああ、そうか。

 改めて碧海が言っていた事を思い返せば……何度も何度も聞かされていたから、途中から四割くらいスルーをしてたそれをよく思い返せば、確かに碧海の言う通り『キャラが変わった』としか思えない。


 いやでも、途中で改心とかして医者を目指したってセンも……?


「暴力はどっちかと言うと、母さんの故郷で出会った俺の幼馴染とか…………いや待てよ?」


 するとその時だった。

 一樹とかいうヤツは、何かが引っかかったのか両腕を組んで頭を(ひね)って――。


「…………まさか」


 ――何かを、思い出した。


     ※


 一樹達が(かよ)う高校の近くの喫茶店。

 そこのテラス席に一組の男女が座っていた。


 パソコンと向き合う日本人男性。

 そしてイヤホンを耳につけたヨーロッパ系の女性だ。


「…………ようやく、繋がるかもしれないねぇ」


 女性は、イヤホンに手を当てながら(つぶや)く。

 すると対面に座る男性は、より早くタイピングをしつつ(うなず)いた。

【読者への挑戦状】


 さてみなさん。

 いよいよこの時がやってきました。


 次回からはいよいよ解決編です。


 最初は古本屋で見かけたテーマで、そして公式企画のテーマに沿った感じで物語を書こうと思いいろいろ考えたんですが、なんやかんやあって『これ、ミステリとしても通用しないか』とふと思い立ちまして、このままタグにつけてる通り【読者への挑戦状】を出させていただきます。


 本作にていろいろと謎が出ましたけど。

 みなさんに考えていただきたい謎は以下の二つです。


・なぜ碧海は一樹が恩人だと思ったのか


・なぜ一樹は違うと言ったのか


 個人的には『これ以上出したらバレる』くらい情報を出しました。

 もしかすると、勘の良い読者様ならすぐにお解りになるかもしれません。


 とにかくみなさん。

 どうぞこの謎解きをお楽しみくださいませ。


 ちなみに次回は来月に投稿しようと思いますので。

 それまで、みなさんの解答をお待ちしております。


 そうそう。

 他の謎……職業(意味深)などについては、物語を面白くするために考えた設定ですので考えなくても大丈夫なんですけど、もしも余力があるのであればこちらもぜひ挑戦してみてください。

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― 新着の感想 ―
これはやはり、深夜に電話してきたきょうだいが恩人のような気がしますね( ˘ω˘ ) 双子なのかな?( ˘ω˘ )
他人の空似ではないとすると、やはり安直ですが血縁者と考えるのが妥当なところですが、そういえばなんか軍資金要求してきた家族の誰か?がいましたね………… それと、性格の部分以外全く根拠はないけどもう一人の…
 話の前後を安直に鑑みれば、碧海さんが好きになった浅黒い肌の天然バーマで額にほくろがある男の子は、深夜の時差電話で軍資金要求してたアイツっぽいところなんですが。  そう言えば、瞳の色については言及さ…
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