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  7日目:たまには友達に会うのも良い

 あれからいろいろと考えたものの。

 碧海さんへの対応はとりあえず出たとこ勝負で、そしてもしもの時のために録音をしておく事にして。


 今日は、高校生になってからは絡まなくなった中学生の頃の友人との約束のために外出した。


「一樹、よく来たな」


 友人の家のインターフォンを押すと、その友人がドアを()ける。

 俺の所属するクラスの隣のクラスにおいて、ガリ勉達のグループに所属している(たく)()くんである。


「毎回すまない。どうしても明日香(あすか)がお前を指名するから」


「気にしないで。友達でしょ」


 俺は別に気にしていないのでいつも通りの会話をする。

 ちなみに明日香とは拓海くんの妹であり、なぜ俺が彼女に呼ばれているかというと、俺が多国語を話せるからだ。


 一時期、いろんな所に引っ越していたのもあって。


 それも家族の都合で。

 こっちとしては、いろんな地域の文化に触れられるのはいいけれど、引っ越しの時はいつも大変……というか命がけなので、引っ越しはいつも嫌な印象しか覚えていなかったけどね。


 まぁそれもあって、中学生になってからは親戚を頼って登校して、それで高校生になってからは一人暮らしをしているけど。


「そういえば、ご両親が今いるっていうグンマはどうだ? いろいろと大変な事になってるってニュースで聞いたけど」


「いつの時代の話だよ」


 とにかく俺は、そんな他愛のない話をしながら友人宅にお邪魔する。

 一人暮らしとは違って、家に誰かがいるというのは良いな、と今回も思いながら廊下を進む。


 まあでも自分で選んだ道だけど。

 主に、うるさい地域ばかりを引っ越した反動のせいだけど。


「あ、いらっしゃい一樹先生!」


 廊下を進むと明日香ちゃんが自室から顔を出した。

 彼女はまだ小学生ではあるが、兄である拓海くんと同じく頭が良い。


 そんな彼女は、偏差値よりも通学の際の距離を選び、俺も(かよ)っている地元の高校に(かよ)っている拓海くんとは違い、より偏差値が高い中学校を受験する予定であるのだが、どうも外国語が苦手であるらしく、それで多国語を話せる俺が時々家庭教師として来訪しているのだ。


 ちなみにちゃんとバイト代も出る。

 一人暮らしの身としては貴重な生命線な仕事である。


「えっと、今日はどこからだっけ?」


 碧海さんの事を考えすぎたせいか。

 どこまで教えたのかを忘れてしまった。


「んもぅ、ここからですよ一樹先生ぇ~」


 いつものように俺の腕に抱きつきそのまま俺を自室に引きずり込み、甘えた声を出す明日香ちゃん。

 なんというか、毎度毎度距離感がバグっているとしか思えないんだが……それをただ見てる拓海くんには、これでいいのかと毎度思う。


 兄として思う事がないのか。

 いや俺だから信頼しているのか。


 それとも面白がっているのか。


 とにかくそんな拓海くんは「それじゃお茶とお茶菓子を持ってくる」そう言ってから部屋を出ていってしまった。


 明日香ちゃんに変な事をする気はないけどさ。

 それでも家族として、少しは気にしてほしいところだ。


 いや俺の家族も同じようなものだけど。


     ※


 ストーカーと思われないためにはどうすればいいのか。

 アタシはすぐに同じギャルグループの友人達に相談した。


 ちなみにメッセージングアプリとかは使わない。

 絶対にいろいろと猛スピードで流れて肝心の答えが読めないと思うから。


 なので隣の校区にある食堂喫茶『ナンパル』に集合。

 ちなみにナンパする的な意味合いの店というワケじゃない。


 インドの言語の一つであるタミル語で『友達』という意味らしい。


 ママが外国人なためかいろんな国に引っ越した事があるけど、タミル語については、インドに行った事はないから「へぇ~」って感じの店だ。


 ちなみに、なぜここまで来たかというと。

 万が一にも一樹くんに見つからないようにした上で作戦会議をしたいからだ。


 ギャルという存在は、人によっては忌避(きひ)する対象だし。

 そのせいで『悪だくみ』をしてると誤解されるワケにはいかないし。


「…………絶望的やん」

 ギャル友の一人の(なぎ)()にまずそう言われ、みんなうんうん(うなず)いた。


「マイナスにもほどがある」

「というかなぜ毎度家の近くを通るし」

「それさえなければスマートに付き合うまでイケたんじゃね?」

「どう挽回(ばんかい)せいっちゅうんじゃ」

「ムリゲーだろ」


 次々と聞きたくない意見が出る。


「いやそれは分かってるから! これからどうすればいいかを一緒に考えてほしいから呼んだんだし!」


 思わずツッコむ。

 つうか誰だってツッコむ。


「それなら」


 するとその時だった。

 この店の看板娘……的なポジションにいるらしい、と(うわさ)の……えーと名前なんて言ったっけ? この店に来るの二度目だからよく覚えてない。


 とにかくエプロン姿の小学生の女の子が話に割り込んできた。


「玉砕覚悟で接近するしかないんじゃないかな? そこまで絶望的なら、誤解解くためにも、もう自分の全てを知ってもらうつもりで行かないと。結婚まで考えてるなら、互いの手札は前もって知っておいた方がいい部分もあると思うし」


 そしてそれは、何気に良いアドバイスだった。

 途端にアタシも含めて「おぉ~」なんてみんなが反応するけど、まさかみんなに訊くよりもこの子に訊いた方がよかった!?

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― 新着の感想 ―
ふと疑問が湧いたのですが、最近、ギャルに対する風当たりが強くないですか? あれかな? NHKの前朝ドラ『おにぎり』。 私は見た事ありませんが、ロケ地は私の勤務先の周辺で、何人もの人がロケ隊を目撃したら…
 授業料のカタに、友人が妹を差し出して来たんだがどうすればいい?  三人寄れば文殊の知恵とはよく言うものの、三人以上いてもギャルはギャル、ギャルからの視点からすれば碧海さんはどう見てもストーカー。 …
明日香ちゃんきゃわわ( ˘ω˘ )
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