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 8日目④:賑やかな日々が始まるかもしれない

 後日少々修正します。

『あっれ~? おっかしいなぁ。隣は留守かぁ』


 そんな声が、家の玄関ドアの外から聞こえてきた。

 アタシが居留守を使ってるせい……アタシが、アタシが好きになった人……一樹くんにやんわりと、告白を断られて、それで落ち込んでいるせい。


 なんで、一樹くんはあんな事を言ったんだろう。

 浅黒い肌に、天然パーマ、額のホクロ……さらには雰囲気とか、そのどれもが、アタシが好きになったあの人なのに。


 なのに、アタシの事を知らないかのように断るだなんて…………アタシはそんなに、一樹くんに嫌われるような事をしたんだろうか。


 ピロンッ♪


 そんな風に、アタシが制服姿のまま。

 誰にも何も告げずに高校から家に逃げて、そのまま自室のベッドの上で、私服に着替えず泣いていた時だった。


 着信音がした。

 メールの着信音だ。


 でもそれに、出れるような気分じゃ――。


 ピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロッ♪


 ――今度は鬼電がかかってきた。


「~~~~ッッッッ!! もうッ!! なにッ!!?」


 ウザかったからすぐに出た。

 誰からかかってきたのか確認していないけど、とにかく今は誰とも話したくないから、文句を言ってから切ろうとした、けど……。


『下手人が見つかった』


 穂乃果の声がした。

 なんだか聞いただけで底冷えするような……一発で頭が冷静になるような、友人の一人の声が。


『なんていうか、碧海もいなきゃ話がまとまんないから……すぐに戻ってこい』


 そう言うと、穂乃果は電話を切った。

 と同時にアタシは、自分がやらかしてしまった事――結果的にサボってしまった事を思い出し、そんなアタシのフォローを、穂乃果達がしたであろう事を、今さらながら想像して……学校に戻る事にした。


 今すぐ戻って、みんなに謝らないとどうなるか分からないッッッッ!!


     ※


「やあ、来たね碧海さん」


 放課後の、茜色の夕日が差し込む教室。

 そこで拓海くんは、碧海さんに対して笑顔でそう言った。


 ちなみにこの場には、マイフォンを手にした拓海くんと、今やってきた碧海さんの他にも、碧海さんの友人である穂乃果さんに、この件の中心人物こと、現在マイフォンを使っている俺もいる。


 関係者だけで、事を収めるために。


「…………」


 碧海さんが疑いの目を俺達に向けてくる。

 当たり前だ。フラれた直後に、あの場にいた全員が集められているんだ。何か変な事が起きるんじゃと警戒してしまうのも無理はない。


「まあそんなに警戒しないで」


 拓海くんは笑顔のまま言った。

 なんだか胡散臭い笑顔に見えた。


 そういえば、拓海くんは碧海さんの存在を知ってはいても、あまり彼女に興味を持っていなかった気がする。だから普通に話しかけられるのか。オタクである俺を始めとする男子にはできない事だ。


「あの後、いろいろ話し合って全て分かったんですよ。あなたが好きになった人は誰なのか」


「ッ!」


 碧海さんの目が見開かれた。

 と同時に俺に、その目は向けられた……彼女はたぶん、俺が彼女との記憶を取り戻したとか思っているんだろう。だけど、











「ごめんなさい。先ほども言いましたけど、俺じゃありません。こいつです」











 またややこしくなる前に俺は、目の前の机の上にマイフォンを置き、スピーカー機能をオンにした。











 ただし、しているのはただの電話じゃない。











『よぉ、きょうだい。珍しいなこんな時間に?』


 かつて夜中に電話をかけてきた下手人の顔が画面に表示される。

 浅黒い肌で、天然パーマという、()()()()()()()()()()()相手の姿が。

 そう、今回俺が使ったのはテレビ電話機能。全てを明らかにして碧海さんに納得してもらえる、唯一の機能だ。


『ん? 他にも誰かいるのか? まさか合コンでもするつもりか? さすがは我がきょうだい! モテるヤツは違うn「 オ マ エ がッ、ややこしい事件を起こしたせいでこうなったんだろうがッ」


 いつもの調子で、余計な事を言いそうだったので、強引に話を中断する。

 すると、相手はさすがに俺の怒りに気づいたのか『ど、どうしたきょうだい? なんだか怖いぞ??』と怯えた顔を見せた。











()()()()()()()()()()……()()()()()()()()()()()()?」











 正直、声を聞くだけで、夜中に電話をかけてきた事への、そして、今回の事件に繋がる事件を起こした事への怒りを覚えるが……なんとか冷静になり話を始める。


「えっ!?」


 碧海さんが驚きの声を上げる。

 そして続けて、俺と、電話の中の相手を見比べつつ、






「ちょ、ちょっと待って一樹くん!? まさか、この人が……アタシが出会った人なの!? ()()()()()()!? 違うよね!? だって……浅黒い肌や天然パーマはともかくホクロはないよ!?」






 と言った。

 そりゃあ確かに、相手の女性が碧海さんの初恋相手だと言われても納得できないだろう。






『?? ……………………あっ、まさか君、地元のガキ共にイジメられてた!?』






 しかし、次の瞬間。

 その相手の女性がそんな事を言って…………碧海さんは無言のまま驚愕した。


「改めてご紹介します」

 聞こえているかどうか分からないけど、碧海さんに俺は言った。


()()()()()()()()(つき)です。現在は、母の故郷でもあるアフリカのエチオピアの、かつてグンマ王国があった地域……の某所で働いてます」


 グンマ。

 それを聞いてまず初めに連想するのは群馬県――グンマー帝国、だなんて異称をつけられたりしている、日本に存在する県かもしれない。


 だがしかし。

 グンマという王国はかつて地球上に実在していた。


 いろいろあって、現在その場所はアフリカのエチオピアになってるけど。

 とにかく俺と美月はそんな国の出身の母と、日本人の父の間に生まれたハーフであり、碧海さんが、初恋の相手が俺だと確信していた理由はおそらくそれだろう。


 俺にはよく分からないけど。

 拓海くんや穂乃果さんが言うには、俺には天然パーマと額のホクロ、という特徴がある上に、ハーフだからか……周囲の人達とは纏っている雰囲気が違うらしい。


 いや、確かに冷静になってよく考えると。

 天然パーマと額のホクロ、までならまだいいけれど……そこにアフリカ系を少々感じさせる容姿……ここまで来ればもはや俺はレアな属性持ちなのかもしれない。


 そしてもし、そんな特徴を持っている人間が他にいたとしたら。

 そしてその相手が俺の肉親で、美月と碧海さんがそれぞれ世界を飛び回り、その末に碧海さんが俺を見つけたとしたら……俺が初恋の相手だと碧海さんが勘違いをしてもしょうがない。


『え、まさかきょうだい……お前、進学先であの子に会ったのか!? うわっ! これはもう運命じゃね!?』


「お前がややこしい事をしてくれたおかげだよ、美月」

 俺は圧と皮肉を込めて美月に言った。


 というか、双子だからか名前の響きも似ている。

 当時、美月が碧海さんに名前を告げたかどうかは分からないけど、もしも本名を告げていたとしたら……長い年月の中で、碧海さんが名前を間違えて覚えていても仕方ない。






 なにせ当時は、小学生だったんだから。






「で、でもっ! 双子とはいえ男女でしょ!? 二卵生でしょ!? 全然似てないよ!?」


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 碧海さんの質問に俺は……ちょっと暗くなりながら答えた。


「そしてそれを利用して、美月は俺にしょっちゅう化けて、いろんな事をして……おかげで俺のせいにされかける事件が起きたりしました」


「え゛ッ!?」


 碧海さんの顔が少し引きつった。

 そりゃあ、兄妹とはいえ自分ではない別の誰かが、自分のフリをしてたらと思うと……ゾッとするだろう。


 まぁでも、子供の時の話なんだから。

 しかも双子なんだから、両親を始めとする、双子である事を知っている人に対し『ど~っちだ?』なんてクイズを仕掛ける事だってある。


 その辺は、おいおい理解してくれるだろうからそれは置いといて。


「俺と美月の場合は、美月が小さい頃にホクロを、額にマジックとかで描けばすぐ俺に化けられる。そしてもしも、美月がその時のノリで額にホクロを描いていて、その時に碧海さんに会っていたとしたら……そう思って美月と碧海さんを呼び出したんですけど、どうやら正解だったみたいですね」


 しかし……俺は、いろいろと謎が解けてスッキリしたけれど、より重要な問題が残っている。碧海さんの心だ。


 見ると案の定、碧海さんは衝撃を受けていた。

 もしかすると、碧海さんが百合属性も持っていたら立ち直れていたかもしれないけれど……この様子じゃそれは望み薄だ。


「美月、碧海さんに何か 言 う こ と は?」


 俺は再び美月に圧をかけた。

 というかほんの少しドスが利いた声もかけた。


 今回ばかりは。

 無責任すぎるが故に、こんなややこしい事件を起こした妹を簡単には許せない。ていうか碧海さんが許さん限り許せない。


『ゔ……ご、ごめんなさい』


 すると美月はすぐに謝ってくれた。

 昔からわんぱくで、やりたい放題だったけど、それでも悪い事をした時は素直に謝れる……それが美月の美点だと思う。


「それから、碧海さん。俺の方もごめんなさい」


 しかしそれはそれとして。

 俺も碧海さんに素直に謝る。


「えっ!?」


 碧海さんが驚きの声を上げる。

 しかし俺はケジメとして話を続ける。


「とっくの昔に美月とは『似てはいるけど瓜二つじゃない』状態だったから、美月がまた何かしたんだとすぐに気づけなくて。俺の監督不行き届きです。責められても文句は言いません」


     ※


 まさか、こんな真実だとは思わなかった。

 いや、一樹くんの妹さんの美月さんが、一樹くんになりすましていたのも悪いと思うけど……この可能性に思い至れなかったアタシも悪い。思い至って、一樹くんに直接確認しようとしなかったアタシも悪い。


 いや、小さかったからしょうがない部分もあるけど。


 どっちにしても……アタシは失恋したんだ。

 どう言い訳しようとも、見当違いの人を追いかけていて……しかも二卵生の双子だって事にも気づかずに、それで一樹くんや、みんなに迷惑をかけてしまった。


 どうしよう。

 もう、恥ずかしすぎて…………みんなに合わせる顔が――。


「それから、碧海さん。俺の方もごめんなさい」


 ――そんなアタシに、一樹くんはなぜか謝ってきた。


 ワケが分からなかった。

 双子という可能性を考えず、迷惑をかけたのはこっちなのに……なんでその被害者の一樹くんが……?


「とっくの昔に美月とは『似てはいるけど瓜二つじゃない』状態だったから、美月がまた何かしたんだとすぐに気づけなくて。俺の監督不行き届きです。責められても文句は言いません」


 衝撃だった。

 まさか、こんなにも潔く……しかも、一樹くん自身は何も悪くないというのに、謝ってくれるだなんて。


「だからどうか、学校を辞めたりはしないでくださいッ。俺は、碧海さんもいる、そんな日常をこれからも送りたいからッ」


「ッッッッ!?!?!?」


 そ、そそそそそれって!?

 ま、まままままさかアタシにそれなりの好意を抱いてたり…………ん? なんか無視できない言葉が混ざっていたような?


 チラリと、穂乃果に視線を送る。


「え、あー……碧海てさ、ヘタレな部分あるじゃん? 自分の勘違いもあって誰かを追いかけて告白して、失恋なんかしたら不登校とかありえると思ってさ」


「さすがにそこまでしないよ!?」


 いやショックだったのは事実だけどそれはそれとして!!

 一樹くんが、まさかアタシの事をそこまで想ってくれていたなんて……!!?


 そう思うと、今までの鬱な気分が吹っ飛んだ!!

 いやそれどころか、なんか顔が熱くなってるような!!?


 え、まさかアタシ――。











「よぉ! 一樹ィ!!」











 ――しかしそんな高揚感は一瞬で引っ込んだ。


 一樹くんの事を知っているらしき、私服姿の見知らぬ女生徒が、いきなり教室の中に入ってきて……ん? なんというか……一樹くんと同じ、いやちょっと違う。一樹くんとは違って、ガチのアフリカ系の人のような見た目の、短髪で天然パーマの女生徒? え、というかこの声をどっかで聞いたような……?


「ッ!? まさかアイーダか!?」


 ッッッッ!?!?!?

 え、やっぱり知り合いなの!?!?!?


「えっと、知り合い?」

 一樹くんの友人らしき男子が、目を丸くしてアタシの疑問を代弁してくれた。


「あ、うん。俺の母さんの故郷出身の、幼馴染のアイーダです」


「あ、もしかして、一樹の友達か!? なら自己紹介しなきゃな! オレの名前はアイーダ! 一樹の幼馴染で、近い内にこの高校に転校をするから、高校の近所に引っ越してきたエチオピア人で、あと、()()()()()()()!」


「「「「ッッッッ!?!?!?!?!?」」」」


 一瞬、時間が止まったような気がした。

 というか、彼女がいったい何を言ったのか理解できなかった…………は? 未来の嫁? え、なに……ま、まさか!?


 というか声……思い出した。

 アタシが引き籠もっていた時に聞こえた声だ!!


 まさか、アタシの家の近所に引っ越してきたの!?


「おい、お前と結婚するとは言ってないだろ」


 ッ!? え、いったいどういう事?

 一樹くんは彼女の言葉を否定しているけど?


「いやでも一樹、お前は近い将来、ウチの国に本社を持っている民間軍事会社(PMC)――母ちゃんと父ちゃんと妹ちゃんが勤めている会社に勤めるんだろ? 医者として。そのために医大を目指してるってお前の家族から聞いたぞ? そんでそうなると、結婚するとしたら現地の人になる可能性があるだろ? それならさ、お互いをよく知ってるオレと結婚した方が幸せだろうって事で、オレが立候補するって子供の時に言ってるじゃねぇか」


「「ッッッッ!?!?!?!?!?!?」」


 え、ちょっと待ってちょっと待って?

 頭が追いつかない……えっと、一樹くんの家族が民間軍事会社(PMC)に勤めてる??


 その時点からキャパオーバー寸前なんだけど!?

 ていうか、一樹くんの友人だと思われる男子に驚いた様子がない!? まさか、彼だけは一樹くんの家庭事情とかを知ってたの!?


「医大を目指しているのは事実だけど、それは別に民間軍事会社(PMC)専属の医者になるためじゃないよ。というか俺は、小学生だった頃の俺を治してくれたフリーランスのあの人みたいな、国とか貧富とか年齢とか立場とか関係なく手を差し伸べられる医者になるつもりで医大を目指してるんだよ。オタクになったのも、あの時に俺を助けてくれたフリーランスのあの人みたいに、子供の話に付いていけるようになるために、アニメとか見て勉強した影響だし」


 ッッッッ!!


 そうだったんだ。

 医者になりたいとはかつて聞いていたけど、動機については、全然話さなかったから分からなかったけど……そんな素敵な出会いがあったから医者を目指しているだなんて、なんか素敵かも♪


「だからね、常にエチオピアにいるワケじゃないんだよ。たとえ、アイーダと結婚したとしても、お前を不幸にしかしないよ」


『おいおい、アイーダの気持ちを考えたらどうなんだよきょうだい』

 いきなり美月さんが割り込んだ。


『お前の事が好きで好きで、お前が住んでいるその場所をウチの父ちゃん母ちゃんに訊いてまで追いかけてきたんだぜ? きょうだいの主張も分かるけどさあ、その気持ちに応えようとするくらいはしてやってもいいんじゃねぇの?』


「ッッッッ!?!? ま、まさか美月か!? 電話の先にいたのかよ、っていうか余計な事を言うな!!」


「えッ!?」


 顔を赤くするアイーダさん? を見て、今度は一樹くんが驚きの声を上げる。

 というか私も驚きの声を上げたいけど……まさか一樹くんは、アイーダさん? が親切心で結婚すると言ったと思ってたの!?






「~~~~ッッッッ!!!! ああそうだよ、オレは昔から一樹が、」






「ちょっと待ったぁ~~!!」






 そして、アイーダさん……は、続けて何か重要な事を言おうとした、けど。

 またしても、この教室に一人の…………なんと、小学生くらいの女の子が入ってきた!? ちょ、警備ザルじゃないかなこの高校!?!?!?


「ッ!? あ、明日香ちゃん!?」


 え、またしても一樹くんの知り合い!?

 ていうかどういう関係なのこの小学生と!?


「一樹先生は私と結婚するんだから!!」


「いや何を言ってるの明日香ちゃん!?」


 いやホント何言ってるのこの子というか何この展開!?

 あまりにもジェットコースターというか変則的な高速移動をするUFOみたいな予測不能な展開なんですけど!?


「オイ待て、誰だ小娘!? というか一樹と結婚するのはこのオレだ!」


「アイーダも何言ってるの!?」


「ちょっと待ってよ!?」


 でもこのままジッとしているワケにはいかない!

 ワケが分かんないけど……一樹くんへといろんな女子が、アタシのように好意を向けている事だけは分かった! そしてだからこそここは同じ女として負けられるものですか!


「一樹くんと結婚するのはアタシよ!!」


「碧海さん!?!?!?」


 一樹くんはすんごい混乱していた。

 でもごめんね、こればっかりはアタシも譲れないの。






 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()






『あ、あー。まぁ頑張れきょうだい』


「おい美月!? お前のせいでもあるだろ逃げるなー!?」


 確かにまだ、失恋のショックはあるけれど。

 でも、そんなアタシを一樹くんが想っていてくれた。


 そしてそれが、とても嬉しかったから。











 妹さんには、向こうが電話を切る事で逃げられてしまったとしても、あなただけは絶対に逃がさないからね……一樹くん♡











     ※


「え、えー? なんだよこの状況」


 カオスだった。

 碧海の誤解とかを解いて、すぐに終わるつもりが……なぜか一樹ってヤツの異国の幼馴染や、どこの誰かもしれないロリも来やがった。


 ていうか、一樹先生?

 まさかだけど、家庭教師でもやってるのか?


「プフッ」


 するとその時だった。

 隣から笑いを堪える声が……え、まさか?


 一応、隣を見た。

 そこには一樹ってヤツの友人がいた。






 口元を押さえ笑いを堪える彼が。






「こんな修羅場が見たかったッ」


 ついでに言えば『アスカ』という……さっき聞いた名前と、かけてからの時間が画面に表示されてるマイフォンを手にしてそんな事を言う彼が……ってまさかお前の仕業かこの状況は!?


「…………お前、イイ性格してるな」


 私は思わずドン引きし。

 ついでにそんな言葉を彼にかけていた。


     ※


「ダメだねぇ。重要な何かを話していなかったよ」

「こちらも、()()()()()()()()()()()()本社にウイルスを送り込めなかった。あの民間軍事会社(PMC)のホワイトハッカーは優秀みたいだ」


 喫茶店のテラス席に座っていた男女――碧海の両親が不穏な言葉を口にしながら席を立った。


「我が国でいったい何を起こそうとしていたのか、あの時は突き止められなかったから、今回こそはと思ったんだけど」

「仕方ない。今度は別の方法で調べよう。ウチの近所に引っ越してきたという子と仲良くなる……とかでな」


 二人はトートレイド公国の諜報機関に所属していた。

 そして今回二人は、かつてトートレイド公国に姿を現した、一樹の家族の目的を探るために活動していた。


 だがしかし、その様子からして、それは失敗に終わったようだった。

 いったい、どんな手段で重要な情報の入手やウイルスの送り込みをしようとしたかは不明ではあるが……エゲつない方法である事は間違いない。











 大人の世界なのだから。

 グンマ王国についてはようつべでも紹介されています。


 それから、ただ双子と答えたそこのあなた。

 そんな答えでは……永遠の五才のおかっぱ少女に叱られますよ(ォィ

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― 新着の感想 ―
そういうことだったのか!! これは一本取られました!w お見事です( ˘ω˘ )
 サカキショーゴさんのことだから、整形とかクローンによる一樹の影武者、もしくはSF(すこしふしぎ)によるコピーアンドロイドとか、あるいは主人公一樹こそが実はクローンで、オリジナルの一樹はどこかの秘密基…
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