三国志演義・餓狼討滅戦【前編】~当代一の健啖家~
声劇台本:三国志演義・餓狼討滅戦【前編】~当代一の健啖家~
作者:霧夜シオン
所要時間:約35分
必要演者数:最低8~9人
8:0
8:1
9:0
キャスト例:(他に良い組み合わせがあったら教えてください。)
曹操・カク萠:
許チョ・劉備軍部将:
夏侯惇・劉備軍兵士1:
荀攸・陳宮・劉備軍兵士2:
呂布:
張遼・関羽:
高順・張飛:
曹性・劉備:
ナレ:
※ナレをどれかの役と兼ねさせる場合、兼ねられない役は、
呂布、陳宮、高順、関羽、張飛、劉備、曹操、許チョ、荀攸、夏侯惇
なので、上手く兼ね役を変えるなどして調整してください。
はじめに:この一連の三国志台本は、
故・横山光輝先生
故・吉川英治先生
北方健三先生
蒼天航路
の三国志や各種ゲーム等に加え、
作者の想像
を加えた台本となっています。また、台本のバランス調整のた
め本来別の人物が喋っていたセリフを喋らせている、という事
も多々あります。
その点を許容できる方は是非演じてみていただければ幸いです
。
なお、人名・地名に漢字がない(UNIコード関連に引っかかっ
て打てない)場合、遺憾ながらカタカナ表記とさせていただい
ております。何卒ご了承ください<m(__)m>
なお、上演の際は漢字チェックをしっかりとお願いします。
また上演の際は決してお金の絡まない上演方法でお願いします
。
ある程度はルビを振っていますが、一度振ったルビは同じ、
または他のキャラのセリフに同じのが登場しても打ってない場
合がありますので、注意してください。
なお、性別逆転は基本的に不可とします。
●登場人物
曹操・♂:字は孟徳。
漢王朝の宰相、曹参の末裔を称する。現王朝の司空の位につい
て、自らの理想とする世を築くべく、皇帝をも大義名分として
利用する。人材収集癖があり、有能な人材を愛する事、女性を
愛するかの如くである。
政治、軍事、文化等のあらゆる分野で後世に名を残す、
”破格の英雄”。
夏侯惇・♂:字は元譲。
曹操の従兄弟にあたり、旗揚げ当初から彼に付き従う。
曹操も彼を他の者とは一線を画して特別待遇を与え、晩年に
は自分の寝所に取次を待たず、剣を佩いたまま入ってよいと
まで言われた、文字通り曹操軍の副将。
許チョ・♂:字は仲康。
猛る牛の尾を引いて引きもどしたという逸話を持つ怪力の将
。曹操から厚い信頼を得ており、後に彼の親衛隊である虎衛
軍の指揮官を務める。
荀攸・♂:字は公達。
曹操に仕えている荀彧の甥で謀略に優れ、軍師として活躍。
人柄を曹操に絶賛されるほど終始良好な関係だったという。
軍の機密を厳守し、その生涯で献策した奇策は12あるとされ
るが、本人は決して語る事はなく、後に編纂しようとした人物
も半ばで死去。その為ほとんどが後世に伝わらなかった。
劉備・♂:字は玄徳。
漢の中山靖王・劉勝の末孫を自称。
乱れた世を正す為、義兄弟の関羽、張飛と共に乱世を駆ける。
関羽・♂:字は雲長。
劉備、張飛と共に義兄弟の契りを桃園に結び、乱世を正さんと
戦い続ける。見事な顎鬚と酒に酔ったような赤ら顔をしている
。重さ八十二斤の青龍偃月刀を自在に操る。
張飛・♂:字は翼徳。
劉備、関羽と義兄弟の契りを結び、世を正すために戦う。
一丈八尺の蛇矛を振り回し、酒を愛する虎髭にどんぐり眼の
豪傑。
呂布・♂:字は奉先。
五原郡出身。武芸百般に秀で、方天画戟を枯れ枝の如く振るい
、日に千里駆ける稀代の名馬・赤兎馬に跨って戦場を駆ける。
餓狼の様な性質を持ち、背信と裏切りに塗れた生を歩む。
現在は劉備から徐州を奪い、領主の座に座っている。
三国志最強と言われ、飛将軍の異名や「人中の呂布、馬中の
赤兎」と謳われる。
陳宮・♂:字は公台。
かつては曹操に仕えていたが、次第にその人間性について行け
なくなり、流浪の身だった呂布に接触、推戴して曹操から離反
。
以来、呂布に献策し続け、現在は徐州の実質的支配者とさせて
いる。
張遼・♂:字は文遠。
後に泣く子も黙ると恐れられた武勇を持つ人物。この時は呂布
配下で高順と二枚看板をなす猛将。己の意思とは裏腹に、丁原
、董卓、呂布と次々に仕える主君を変えざるを得なかった。
高順・♂:字は伝わっていない。
呂布配下で張遼と双璧をなす猛将。攻撃した敵部隊を必ず壊滅
した事から【陥陣営】の異名で恐れられる。寡黙で酒は飲まず
、贈り物も一切受け取らない清廉潔白な人物であったという。
カク萠・♂:字は伝わっていない。
呂布配下の武将。正史と演義では最後が異なる。
正史では呂布に反乱を起こして高順に討ち取られ、演義では
使者として淮南へ行った帰りに張飛に捕まり、拷問の末使い
の目的を自白。曹操の命令で斬首される。
曹性・♂:字は伝わっていない。
呂布配下、八健将の一人(序列第四位)。
正史だとカク萠配下の将で、彼の反乱を止めようとして聞き入
れられず、戦って負傷して以降の記述はない。
演義では夏侯惇の目を射抜いたが直後に顔面を槍で突かれて討
たれた将として有名。
劉備軍部将1・♂♀不問:劉備配下の部将。
劉備軍兵士1・♂♀不問:劉備軍の兵士その1。
劉備軍兵士2・♂♀不問:劉備軍の兵士その2。
ナレ・♂♀不問:雰囲気を大事に。
※演者が少ない状態で上演の際は、被らないように兼役でお願いします。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
ナレ:曹操が四方の状況を打破するべく動きだした頃、彼が手始めに目を
向けた東の徐州でも、動乱の種が芽吹いていた。
劉備が曹操に出した返書が呂布の軍師・陳宮に捕えられ、内通が
露見してしまう。
事の重大さに陳宮は驚愕、すぐに城へ向かうと呂布へ目通りを願い
出た。
陳宮:将軍、将軍はおいでですか!?
呂布:なんだ陳宮、騒々しいぞ。
陳宮:一大事でございます!
まずはこれを。
呂布:書簡だと?
……。
劉備:河北の袁紹は北平の公孫瓚と争い、こちらを顧みている暇はありま
せん。
呂布と袁術の間も険悪な状態のままです。
これはまたとない好機かと存じますゆえ、そのつもりで準備を進め
ておきます。
呂布:な、なんだこれは!
劉備から曹操へあてた内容ではないか!
陳宮:はい。
彼奴らは手を組んで将軍を討とうと裏で画策していたのでございま
す。
呂布:おのれェ、俺を滅ぼそうとしめし合わせていたな!
許さん!!!
陳宮ッ! 臧覇と共に小沛へ攻め寄せ、劉備を生け捕って来いッ!
陳宮:ははっ。
それに伴い、泰山にいる盗賊の領袖、孫観や尹礼らをけしかけてお
きましょう。
呂布:おう、良いようにやれ!
陳宮:宋憲殿、魏続殿は汝潁地方から小沛の背後を抑え、
将軍は本隊を率いて、後から堂々と正面より攻め寄せて下され。
呂布:うむ。
本隊の先鋒は張遼! 高順!
汝らが両翼となって進めィ!
張遼:はっ、お任せを!
高順:心得ました…!
陳宮:それともうひとつ、袁術の息子との縁談はまだ破談とはなっており
ません。
使者を出し、この件を早急に進めておいてくださいますよう。
呂布:分かった。
使者には、カク萠! お前が行け!
カク萠:ははっ、ただちに淮南へ向かいます!
呂布:俺の出陣はカク萠が戻り次第とする!
者ども、行けィ!!
呂布・ナレ以外全員:おうッ!!【SE代用可】
ナレ:呂布は激怒すると、すぐに大軍を小沛の劉備へ差し向ける。
突然の呂布軍の来襲に劉備は驚愕し、すぐに諸将を集めた。
関羽:兄者! 呂布軍が三方からこの城へ向けて攻め寄せて来ています!
張飛:もしかして、曹操への返事を持った使いが捕まっちまったんじゃな
いのか!?
劉備:おそらくそうであろう。
まずい事になった。
今はともかく、曹操殿へ援軍を求める使者を出すのだ!
西門は関羽、東門は張飛、北門は孫乾が当たれ!
私は南門を防ぐ!
何としても曹操殿の援軍が到着するまで耐えるのだ!
関羽:承知! 我らは西門を死守するぞ!
張飛:わかったぜ兄貴!
野郎ども、東門は突破させるんじゃねえぞ!
劉備:よし、私達も行くぞ!
…援軍よ、間に合ってくれ…!
ナレ:いっぽう、呂布は袁術へ使者を出すと、頓挫したままになっていた
縁談の再打診を行う。
使者は淮南を往来し、袁術の返答を得ると急ぎ戻ってきた。
呂布:…くそっ、劉備と曹操が手を組んでいたとはうかつだった!
劉備だけなら恐れるに足らんが、曹操もとなると少々 厄介だ…
ん?
カク萠:将軍、ただ今戻りました。
呂布:おう、戻ったか。
それで、袁術の反応はどうであった?
カク萠:それが…婚姻の事は考えるが、まず先に姫を淮南へ送ってくるの
であれば、十分な好意を持って返答しよう…との返事でした。
呂布:娘を先に淮南へ…それでは人質ではないか!
カク萠:それがしもそう思います。
ここは将軍のお気持ち次第かと…。
呂布:ううむ…。
【二拍】
まだ十四の娘を花嫁としてならともかく、人質として淮南までやる
などできん。
袁術め、俺の足元を見おったな…!
奴がそう高くとまっているのなら、この問題はまだ先の事にする。
カク萠、使者の役目ご苦労だった。下がって休息するがいい。
カク萠:はっ、では、失礼いたします。
呂布:うむ。
……俺にもメンツがある。あんな屈辱的な条件など飲めるか。
こうなれば俺一人の力で状況を打破してみせる!
鎧を、俺の戟を持てィ!
赤兎馬を引け! 出陣だ!
小沛へ後詰し、劉備を討つ!
その後、曹操に備えるのだ!!
ナレ:呂布は袁術との婚姻同盟が望み薄と知ると、かえって腹がすわった
のか、自身大軍を率いて味方の後詰におもむく。
いっぽう、劉備が城を包囲される前に出した使者は、許昌にて曹操
へ面会すると救援を要請していた。
曹操:ふうむ…。
夏侯惇:我が君、劉備から使者が参ったとのことですが…?
曹操:まずいことになった。
余と劉備が手を組んでいる事が、呂布に露見したらしい。
夏侯惇:なんと…!
曹操:呂布軍が小沛に侵攻し、すでに包囲されているとのことだ。
夏侯惇:劉備は兵の数も少なく、小沛の城は規模も小さい。
そう長くはもちませんぞ。
曹操:わかっておる。
劉備を見殺しにしては、余の信義に傷がつく。
だが、許昌を留守にする事に一抹の不安を感じるのだ。
荀攸:我が君、今ならば大丈夫です。
袁紹は北平の公孫瓚と争い、こちらを顧みる暇はありませぬ。
曹操:で、あろうか。
荊州方面はどう見る?
荀攸:南陽の張繍、荊州の劉表も、先の戦で我が軍に手痛い打撃を受けて
おります。
それゆえ、簡単には動けますまい。
曹操:ふうむ…なるほどな。
荀攸:今この機会を逃せば、悪くすると劉備は呂布に滅ぼされ、袁術と
呂布が再び結ぶ可能性は十分に出てまいります。
曹操:それは避けねばならん。
そうなれば手がつけられなくなるぞ。
荀攸:おおせの通り、将来の大きな災いとなる前に、
呂布の勢力がまだ小さいうちにこれを討つべきでしょう。
曹操:むむ…確かに。
よくぞ申した、荀攸!
劉備を助け、この機会に呂布を滅ぼす!
夏侯惇!!
夏侯惇:ははっ!
曹操:そちを救援軍の第一陣とし、兵五万を与える!
副将として李典、呂虔をつける!
夏侯惇:はっ、心得ました!
曹操:小沛の城はすでに攻められているだろう。
急がねば間に合わんぞ。
夏侯惇:昼夜問わず、急行軍で徐州へ向かいます!
では!
ナレ:曹操はついに呂布を滅ぼすことを決断、大軍を編成し、一路徐州へ
向けて進軍を開始する。
そのころ小沛の劉備は、自身で督戦に現れた呂布の猛攻を
必死にしのいでいた。
呂布:こんな小城ひとつに、いつまで手こずっている!
ひと揉みに揉み潰せ!!
劉備:く…呂布みずから城攻めに来られては…。
張飛:ちくしょう、曹操の援軍はまだかよ!
関羽:曹操は領土の四方を敵に囲まれている。
それゆえ、思うように動けないのかもしれぬ…。
呂布:怯むな! 突き進め!!
劉備! 城を出てきて勝負しろ!
それとも臆病風に吹かれたか!!
劉備:呂布め…城から引きずり出そうと挑発するとは…。
焦っているのか?
関羽:…もしや、曹操軍が近づいているのかもしれませぬ。
張飛:確かにな!
でなきゃ、あんなに挑発するわけがねえ!
呂布:腰抜けめ! 出てきて闘え!
劉備:よし、ならばいっそう守りを固め、援軍が来るまで耐え抜くのだ!
呂布:ちいっ、これほど挑発に乗らんとは…!
曹性:申し上げます!
曹操軍が国境に現れました!
その数、五万!
呂布:なにい!?
もう現れおったか!
五万という事は、おそらく第一陣だな。
それで戦況は!?
曹性:高順殿の軍が迎え撃ってはいますが、なにぶん背後を突かれたもの
で、このままでは突破されかねない勢いです!
呂布:くそっ、小沛を先に落とせておれば…!
やむをえん、侯成! カク萠! 高順を救援せよ!
カク萠:承知!
侯成殿、参ろう!
皆行くぞォ!!
【喚声:SE代用可】
曹性:将軍! それがしも参ります!
高順殿には借りがありますゆえ!
呂布:おおそうだったな!
よし行けッ!
曹性:ははっ!
者ども続けッ!
高順殿をお救いするのだ!
【喚声:SE代用可】
呂布:小沛の城などいつでも落とせる。
まずは曹操軍を蹴散らす!
全軍、城から三十里下がれ!
ナレ:呂布は曹操軍到来の報に幾分うろたえながらも、すぐに軍の配置を
変更。徐州の境へ急行させた。
だが、この動きを劉備達は見逃さなかった。
関羽:兄者、呂布軍が急に陣を下げた…、
と言う事は、援軍が到着したのでは…!
張飛:やっと来やがったか! 待ちくたびれたぜ!
劉備:よし、今こそ呂布軍を挟撃する時だ!
全軍、魚鱗の陣をしけ!
いつでも突撃できるように備えておくのだ!
関羽:承知!
みな、反撃の好機だ!
急ぎ隊列を整えよ!
張飛:へっへ、腕が鳴るぜ!
呂布には今までのツケを払ってもらわねえとなァ!
お前ら、準備を急げ!
ナレ:援軍の到来を感じ取り、劉備軍は俄然活気づいた。
一方、徐州の境では曹操軍の強襲を受けた高順が、
態勢挽回の為、敵軍の将・夏侯惇と直接ぶつかろうとしていた。
夏侯惇:雑魚共どけィ!
この俺の前に立ち塞がって馬に蹴殺されるな!!
高順:待て! これ以上は進ませんッ!
それがしは呂布将軍の配下、中郎将の高順なり!
夏侯惇:おう、あの有名な陥陣営か!!
我こそは夏侯元譲、相手にとって不足なし、来いッッ!
高順:参る、はあッ!!
夏侯惇:ほう、なかなか鋭い打ち込みだな!
だが、これならどうだ! おおうッ!
高順:ぬううッ! さすがは夏侯惇…だが! おおぁッ!
夏侯惇:どうした、陣を破るのは得意だが、一騎討ちはそれほどでもないと見える
な! つあッ!!
高順:くっ…これはいかん…距離を取るか…!
カク萠:むうっ、あれは…!
者どもかかれ! 高順殿に加勢するのだ!
曹性:!! 高順殿! 敵将に追われているのか!
あの時の借りを返さねば…助太刀いたす!
この矢でも、喰らえッ!!
夏侯惇:!!! うっ、ぐおおおッ!!
高順:な、矢が夏侯惇の眼に!? どこから……、! 曹性殿か!?
曹性:くうっ、外したか!
次の矢を…!
夏侯惇:ぬぅぐうううう………ぬあッ!
曹性:なっ、ば、バカな!?
高順:刺さった矢を…目玉ごと引き抜いただと…!?
夏侯惇:これは父の精、母の血、どこにも捨てる場所がない!
あぁもったいなや!!
ッッ!
高順:た…食べた…自分の眼を…何という男だ……!
夏侯惇:ぬううう…。
! おのれ下郎、貴様かッ!
そこを動くなァァ!!!
曹性:ひいいッ! ば、化け物め!
夏侯惇:【↑に被せて】
ぬぅおおおおあああああ!!!
曹性:ぐぎゃッ!!!
高順:曹性殿ッ!! …それがしを救うために…くッ…!
だが敵は深手を負った。
包囲して討ち取れ!!
カク萠:囲め囲め! 夏侯惇を逃がすな!
夏侯惇:く…血が…!
いかん、さすがに分が悪い…退けッ!
高順:ぬうっ、待て夏侯惇!!
ナレ:重傷を負った夏侯惇は弟の夏侯淵に救われ撤退。
だがそれとは知らぬ劉備は、夏侯惇が撤退する前に戻ってきた偵察
の報告を受けていた。
劉備:そうか! 夏侯惇殿が来られたのか!
よし、城門を開け!
呂布軍の後方へ突撃するのだ!
関羽:皆、遅れるな!
それがしに続け!!
張飛:おらおらおらァ!!
呂布め、首を洗って待ってろ!!
【喚声:SE代用可】
カク萠:申し上げます!
曹性殿が敵将夏侯惇に矢傷を負わせ、曹操軍は撤退!
しかし曹性殿は…夏侯惇に討たれました…!
呂布:! そうか…。
曹性、よくやったぞ!
む? 後方が騒がしいな…。
まさか…。
高順:【馬のいななくSEあれば】
どぉうっ!
将軍!どうやら劉備が城を出て、本隊の後方から突撃している模様
です!
呂布:なにィ!?
ははは、今ごろ城を出たか、腰抜け劉備め!
頼みの綱の夏侯惇はすでに撤退したわ!
高順:一時的にとはいえ曹操軍に突破されかけた不名誉、
劉備軍を討つ事でそそぎたいと存じます!
呂布:よしッ、ならば張遼! 高順と共に張飛に当たれ!
張遼:心得ました!
高順殿、いざ参ろう!
呂布:俺は関羽の備えを破る!
勝機は今だ!
者ども続けェーーッ!!!
【喚声:SE代用可】
劉備:うっ、これは!?
関羽:呂布軍が向きを変えてこちらに突撃してくる…!
張飛:まさか夏侯惇のやつ、敗れちまったのか…!?
チッ、だらしねえ!
劉備:いかん、全軍が向かってきたとなれば相手は大軍、勝ち目は無い!
退けっ、退けっ!!
城へ戻るのだ!
呂布:矢の雨を浴びせろ!
あの程度の小勢、残らず射殺してやれ!!
【矢の雨が降り注ぐSEあれば】
関羽:くっ、これでは城に戻れん!
やむをえん、海州へ血路を開く!
兄者、ご無事で…!
張飛:ちくしょう! 数にものを言わせた矢の雨を降らしやがって!
これじゃ城に入れねえ!
ボウ蕩山へ逃げるぞ! お前ら、ついて来い!
兄貴、逃げのびていてくれよ…!
劉備:くっ…退け退け! 何としても城に――
呂布:【↑の語尾に被せて】
見つけたぞ! 待て劉備ッッ!!
劉備:い、いかん! 呂布に見つかってしまったか!
呂布:今日こそ耳の長いその首をもらうぞ!!
駆けろ赤兎馬ッ!!
【馬のいなないて駆けだすSEあれば】
劉備:あ、あれに追いつかれては…!
劉備軍部将:いかん、劉備様が呂布に狙われている!
弓兵、何をしている!
早く矢を射ろ!
劉備軍兵士1:だ、駄目です!
あれでは劉備様にも当たってしまいます!
劉備軍部将:関羽様や張飛様はどうした!
呂布と互角に渡り合えるのはあのお二人だけだ!
劉備軍兵士2:関羽様は右翼、張飛様は左翼の指揮を取られていました。
おそらく間に合わなかったのでは…。
劉備軍部将:まずい、もう城門を越えようとしている!
やむをえん、皆で力を合わせて阻止するのだ!
かかれ!
【喚声:SE代用可】
呂布:ええい雑魚共め!!
貴様ら雑兵ごとき、束になったところでこの俺を討てるとでも思っ
ているのか!
劉備軍兵士1:劉備様をお守りしろ!
行かせねえぞ、呂布!
呂布:雑兵がァ!なめるな!!
でぇい!!
劉備軍兵士1:ギャッ!!
劉備軍兵士2:呂布を止めろぉ!
劉備様に近づけるなぁ!
呂布:ええい劉備劉備とうっとうしい!
あんな弱い奴のどこがいい!
ぬぅあッ!
劉備軍兵士2:ぐへぇッ!
劉備軍部将:貴様のような餓狼には分かるまい…!
この徐州を劉備様から奪った盗人風情にはな!
呂布:だっ、黙れェェい!!
うおおおおッッ!!
劉備軍部将:ぐうッ!ぅ…りゅ、うび、さま…。
呂布:はぁ、はぁ……。
おのれ、忌々しい…!
高順:将軍! 城の制圧は終わりました!
張遼:生き残った敵は全て城外へ逃れたようです。
呂布:…よし、お前達二人はこの小沛を守れ。
俺は山東、エン州の境まで進んで、残党を狩りつくす!
張遼:お任せあれ!
高順:必ずや守り通してごらんにいれます!
ナレ:呂布は小沛を攻め落とすと、全軍の士気を大いに高めて次の作戦に
移る。
一方、夏侯惇は小沛城の陥落を自軍本陣から眺め、劉備は曹操軍と
合流するべく落ちのびる途中で目にしていた。
夏侯惇:ぬうう、小沛が呂布の手に落ちたか…!
この目の負傷さえなければ、あべこべに劉備と挟撃して
呂布を討てたものを…!
やむをえん、今は劉備が無事であることを信じ、本隊の到着を
待つほかあるまい…。
劉備:く…妻子や老いた母が…。
城へ戻るべきか…いや、今は呂布に完全な勝利を与えておいて、
彼に情がわくのを祈った方が良いかもしれぬ。
ともかく今は、曹操軍本隊に合流しなければ…!
ナレ:その後、呂布は追撃の手を伸ばすが、劉備達は深く山林の奥に隠れ
た為、ついに網の目にかからなかった。
夏侯惇はそのまま小沛の張遼、高順と睨みあいの形に入り、劉備は
彼を追い慕ってきた孫乾と合流すると数日後、急ぎ許昌から進軍し
てきた曹操軍本隊と合流する事に成功する。
劉備:! あれは…どこの軍だ…?
もし呂布軍なら…ッいや、違う! 曹操軍だ!
助かった…天はまだこの玄徳を見捨ててはいなかった…!
おーい! おーうぃッ!
許チョ:!? 何者だ!!
劉備:私は劉備玄徳、どうか曹司空殿にお取次ぎ願いたい!
許チョ:!? なに、劉備…!おお、本物だ!
いったいこんな所でどうされたのだ!?
劉備:実は…呂布に城を落とされ、義弟達ともはぐれてしまったのです。
それゆえ、なんとかして曹司空殿の軍に合流しようと、こうして
落ちのびて参りました。
許チョ:なるほど…そういうことでしたか。
まずはこちらへ。
【二拍】
我が君、申し上げます!
劉備玄徳殿が参られました!
曹操:なに、劉備殿が?
【二拍】
おお、単身参られたという事は…救援は間に合わなかったか。
すまぬ。
劉備:いえ、すべては私の采配の未熟さゆえです。
せっかく夏侯惇殿の援軍をいただきながら…。
曹操:いやいや、ともあれ無事で何よりだった。
もはや心配はいらぬゆえ、まずは休まれるがよい。
許チョ、劉備殿を寝所へお連れせよ。
許チョ:はっ。
劉備殿、こちらへ。
劉備:では、失礼いたします。
【二拍】
許チョ:こちらでござる。
ここでゆっくりと休まれるとよいでしょう。
劉備:感謝します。
……。
許チョ:? どうなされた、空を見上げられて。
劉備:いや、義弟の関羽や張飛は今どうしているのであろうと、
気になりましてな。
許チョ:ごもっとも…。
さすがは噂に高い桃園の誓いを結ばれた義兄弟、
うらやましゅうござる。
劉備:…いたみいります。
ナレ:劉備と合流した曹操は、やがて徐州の境へ到達する。
夏侯惇は報告を受けると急いで床の上に起き直った。
夏侯惇:なに、本隊が到着したか!
よし、鎧を持て!
我が君に着陣の挨拶をせねばならぬ。
【二拍】
夏侯元譲、我が君にお目通り致すべくまかり越しました!
許チョ:! 夏侯惇殿…その眼は…!?
夏侯惇:我が君の前で話す。
今は取次ぎを頼む。
許チョ:心得ました。
こちらへ。
【二拍】
夏侯惇:我が君、無事のご着陣、お祝い申し上げます。
曹操:おう夏侯惇か。
して、その眼はどうしたのだ?
夏侯惇:戦場にて不覚を取りました。
敵将に矢を射られた為、そのまま食べてしまいました。
曹操:なに、食べた?
はははは、我が眼を喰らった男はおそらく過去に例があるまい。
そちは類いまれなき孝行者だ。
とにかく無事でよかった。
暇をつかわすゆえ、許昌に戻って本格的な治療を受けるがよい。
夏侯惇:ははっ。
では、これにて…。
曹操:…して、呂布の様子はどうなっておる?
荀攸:は、呂布はだいぶ焦っているようです。
自軍の勢力を拡大するべく、味方となる者なら賊であろうと選ばず
味方に加え、いたずらにその数を誇示しています。
勢いだけはあるようですな。
曹操:ふふふ、そんなものはいくら増えようと所詮は雑魚に過ぎん。
小沛の城はどうなっている?
荀攸:今のところ呂布配下の張遼、高順の二将が立てこもっているようです。
曹操:よし、攻略の手始めにまず、劉備殿の為に小沛を取り戻す。
それと同時に簫関へも軍を向け攻略する。
全軍、進軍だ!
曹操役以外全員:おうッ!!【SE代用可】
ナレ:曹操は劉備と共に山東方面へ軍を向ける。
その知らせは徐州城へ戻っていた呂布のもとへすぐに届いていた。
呂布:なにい!?
曹操が到着し、簫関へ進撃しただと!
簫関へ行くには途中、泰山を越えねばならん。
泰山の山賊どもに伝令を出せ!
得意の山岳戦で曹操軍に目にものを見せてやれとな!
カク萠:将軍、山賊などに任せておいて大丈夫でしょうか?
呂布:案ずるな。
彼奴らは命知らずな上に、山岳戦はお手の物だ。
必ず曹操軍に一泡吹かせてくれるだろう。
カク萠:は…。
ナレ:その頃、早くも泰山を目の前にした曹操軍は物見を放ち、
敵の様子を探らせていた。
荀攸:我が君、この先の泰山には孫観、呉敦、尹礼ら率いる山賊三万が
待ち構えているとの事です。
曹操:ほう、三万か。
数はなかなか多いな。
荀攸:いかがなされます?
必ず罠を張っているかと思われますが。
曹操:ははは、賊の考える罠など取るにも足らん。
一気に蹴破ってしまえばよい。
許チョ!!
許チョ:お呼びでございますか、我が君!
曹操:泰山の賊どもの討伐、そちに任せる。
善良な民百姓を相手にしている賊どもに、常に命を張って修羅場を
くぐり続けている我が精鋭の力を、とくと見せてやれ!
許チョ:ははっ、仰せ、待っていました!
必ずや我が君のご期待に添います!
曹操:よしッ、行けィ!!
許チョ:我に続け!!
賊どもを蹴散らし、我が軍の道を切り開くのだ!!
かかれーーーーーッッッ!!!
【喚声:SE代用可】
ナレ:許チョ率いる精鋭部隊は、疾風の如く泰山の狭い山道を駆け抜ける
。
そして呂布の思惑に反し、孫観、呉敦、尹礼ら率いる賊軍三万を
あっけなく壊滅させてしまった。
賊兵の死骸は谷を埋め、峰を紅く染めたという。
一方、徐州城では曹操軍の侵攻を受け、いよいよ呂布軍の内部に
仕込まれた内応の火種が、炎を上げようとしていた。
【三国志演義・餓狼討滅戦【中編】~虎狩りの謀略家~に続く】